さて、今回はソノラマ文庫から出版された『巨神ゴーグ』全2巻を読んだ感想です。
アニメ「巨神ゴーグ」
『巨神ゴーグ』(ジャイアントゴーグ、GIANT GORG)は、日本サンライズ制作のSFアニメ(ロボットアニメ)。1984年4月5日から同年9月27日までテレビ東京系で毎週木曜日19:00 – 19:30の枠にて全26話が放送された。(wikipediaより)
あらすじ
亡き父の友人ウェイブを訪ねた悠宇は、“GAIL”という組織から命を狙われる。どうやら、父が研究していた南洋の孤島“オウストラル”の秘密が絡んでいるらしい。敵の追跡を逃れつつオウストラル島に向かった悠宇は、突如現れた青い巨人型ロボット“ゴーグ”と出逢う。島に隠された秘密を巡る悠宇の冒険が始まる…。
私が住んでいた和歌山県では放送はされなくて、いずれ機会があれば見てみたいと思っていた作品でした。それから随分たった2020年、イッキ見したときの感想はこちら(酷評注意)
私のこのアニメへの評価は低く、冒険物として面白くなかったという感想です。
小説「巨神ゴーグ」
巨神ゴーグ1
父の遺言でニューヨークのドクター・ウェイブを訪ねた田神悠宇は、その足ですぐさま南海の孤島・オウストラルへ向かうことになった。世界的な地質学者だった父が、生前、ドクター・ウェイブとともに憑かれたように研究にとりくみ、《あの島には人類の存在の根本を揺るがすような巨大な謎が隠されている》と口ぐせにしていた島である。数年前に地殻変動で隆起して以後、世界的な複合企業GAILの監視態勢下に置かれているオウストラルに近づくのは至難の業だった。ニューヨーク、ラスベガス、西サモアと数度にわたるGAILの妨害工作を“船長”と呼ばれる謎の男の助けで切り抜けた悠宇たちは、いよいよ嵐をついてオウストラル上陸を目指すことになった。
夢と冒険のロマンに満ちた人気アニメの小説版、全2巻!
原作:安彦 良和
文:辻 真先、塚本 裕美子
カバーイラスト:安彦 良和
本文イラスト:土器手司
文庫:ソノラマ文庫
出版社:朝日ソノラマ
発売日:1984/09/29
巨神ゴーグ2
ゴーグに導かれて、悠宇はグリーン・マットの泉の中に設けられた通路を進んでいた。悠宇はついに、3万年にわたって秘められ続けていたオウストラルの謎を明かす場所に入ったのだった。悠宇の父が、ドクター・ウェイブが情熱を注ぎ込んできた異星人の遺跡が眼前にあった。奇怪な空間を形成する迷宮の中に、薄いグリーンに着色された透明のカプセルが並ぶ部屋があった。異星人たちが長い眠りについている人工冬眠室だった。そして一人の異星人──マノンだけが目覚めており、悠宇を迎え、交流が開始された。だが、GAILが遺跡への侵入を開始したのも、ちょうどその時だった。二つの異星文明の接触は、不幸にも戦闘の形をとることになったのだ!
夢と冒険のロマンに満ちた人気アニメの原作小説、全2巻完結編!
原作:安彦 良和
文:塚本 裕美子
カバーイラスト:安彦 良和
本文イラスト:土器手司
文庫:ソノラマ文庫
出版社:朝日ソノラマ
発売日:1984/11/30
読んだ感想
まず、ノベライズとして、アニメに忠実なように感じました。アニメを見てからそれなりに時間が過ぎたので、細かいところは忘れていますが、ほぼアニメどおりの展開でした。最初の方に書いたように、私のアニメ「巨神ゴーグ」の評価は低いので、忠実なノベライズのこの作品も評価が低いです。
先に読んだダグラムやザブングルのノベライズが、アニメをベースとしながら小説なりの面白さを描いていたので、この作品も読む前は小説なりにアレンジを加えてアニメとはまた違った面白さを見せてくれるのでは?と期待していたのですが……
読んでいてアニメで感じた違和感を改めて確認する作業に近い読書になってしまいました。オウストラル島に渡るまでの追いかけっこは、アニメほど退屈には感じなかったのですが、オウストラル島にたどり着いてからが、なんだかなぁの始まり。
オウストラル島にたどり着いた主人公、ゴーグと出会いゴーグの頭に乗ることになるのですが、そこで出会ったGAILの連中はいきなり攻撃を仕掛けてきます。GAILの人たち、それまでゴーグと戦闘していたとしても、敵と認識もしていない少年がいるのに攻撃をするっておかしいと思うのです。何かしらのやり取りがあって、主人公がGAILの敵となるから攻撃する、という展開ならわかるのですが。こういうやり取りのない雑な展開が多いような気がします。
で、最初の攻撃を受けたあと、主人公は全くこの島の成り立ちなどに興味もなく、ゴーグに乗って進むだけです。そしてこの島の構造を理解しているゴーグが勝手に進んでいくので、この島の謎が明かされていくという驚きがありません。普通ならあるはずの、この島こういう構造になっていたんだ!という驚きの演出が感じられないのです。
物語としては、無敵のゴーグに乗っていれば主人公は安心だし、敵役のGAILも同じような攻撃を繰り返すだけで、何をしたいのか、と。主人公たちと協力して、島の謎を探ろうと考えるGAIL側の人間も現れず、よくわからない展開なのです。
物語後半、アニメと同じく、人類が解りあえるまで進化を待っていた異星人が、GAILに入口の扉を爆破されたことに怒り、逆上して殺しまくる展開もどれだけ狭量なのか。本当に人類の進化を待っていたのかな、と。異星人自らが人類に接触しようとしたのかもわからないし、島にたくさんいるクラゲみたいなメカで人類を襲っていたのなら、本当に人類と交流を持ちたのかったのかなと思うわけです。
異星人同士が接触して行き違いがあったうえで戦うことになる、ということならわかるのですが、この作品にはオウストラル島が浮上した最初の頃、どのような接触があったのか描かれておらず、物語のいちばん重要な部分がぼやけているように思います。
これ、同時期のアニメ、イデオンやマクロスと比べるとよくわかるのですが、「接触の過程やその後のやり取り」があったうえでの「戦い」が全くできていないのですよね。ただ異星人と戦うだけの、奥行きのない物語です。アニメは残念だったけど、小説なら別の見せ方があるかもと思ったのですが、小説も同じで残念でした。