さて、今回は4月6日に公開になったものの、4月7日深夜にサービスが一時休止になったラノベレビューサイトについて思うことを書き記します。なお、私はこのラノベサイトを肯定的にとらえています。また、BookBase社長に対しても、どちらかというと好感をもっておりますので、アンチの方には読むことをおすすめしません。
経緯について
現在はメンテナンス中となっております「ブックレビュー」という、ライトノベル専門のレビューサイト。
電子書籍専門の出版社BookBaseが運営しております。また、BookBaseは電子専門のラノベレーベル「ダンガン文庫」もあり、ライトノベルに対して熱い思いを持った社長が、ライトノベルを盛り上げるために立ち上げたレビューサイトです。
昨年12月にレビュワーが募集され、サイトは25年2月頃リリース予定とされていました。しかし、今年の3月になっても音沙汰がなく、期待していた私はtwitterで3/29に「まだだろうか」とつぶやいたのですが、4月中にオープン予定と引用ツイートがありました。
このレビューサイト、まだ始まらないのだろうか?
すごい期待してるんだけど。やっぱり難しいのかな。 https://t.co/3tPMNB9Y3z— けたじぃ@しいたけ堂 (@shiitake_do) March 29, 2025
お待たせしております!
単純にサイトの開発に時間をかけているだけになります!
4月中にはオープン予定ですので、お待ち頂ければ幸いです…! https://t.co/SuqdcAeCdC— BookBase(公式) (@BookBase1) March 29, 2025
で、4/6にβバージョンが公開されました。開けて4/7の昼頃?から炎上気味となり、4/7の深夜に一時休止が発表されました。
BookReview ver.β について、昨日のサービス開始以降、予想を上回る様々なご意見をいただいております。
本サービスのご利用でご不快な思いをされた方々に深くお詫び申し上げます。
皆様からのご意見を踏まえまして、誠に勝手ながら、サービスを一時休止させていただきます。
— BookReview(公式) (@BookReviewBB) April 7, 2025
このサービス休止について非常に残念な思いがあり、また、このレビューサイトにつけられた「クレーム」について色々と思うことがあり、今回この記事を書いております。
このレビューサイトに対しての私の感想
わたくしもこのレビューサイト、公開された日の夜に読んでみました。まず思ったのが、使いにくい。レビューされている作品を検索で探すことができず、レビューされた順番、作品リスト、レビュワーリストからたどるしかありませんでした。ジャンルタグ等もなく、タイトルをずっと探していくしかない仕様はちょっと問題だなと。この時点では全体的にユーザーフレンドリーではないサイトという印象。ただ、これはβバージョンなので、今後いくらでも変わるだろうと。
で、肝心のレビューはというと、まぁこんなものだろうなと。私はあまり新しいラノベを読まないので、レビューされている作品で読んだことがあるのは、1作品だけでした。そのレビューを読んでみたのですが、3件あった内の2件は、まぁ妥当かなと思える内容。残りの1件は全く関係のない話を頭に持ってきていて、なんじゃこれ的な内容でした。この作品に対する私の感想はあまり芳しくなくて、その感情を共有できるレビュワーがいたら、そのレビュワーをフォローしておすすめ作品を探そうと思ったのですが、そこまでには至らずでした。
そして、強く思ったのが、レビュワーに対する反応が出来ないのが不満だなと。共感を示す「いいね」くらいあっても良いのにと。また、なんじゃこれ的な感想をもったレビューには「バッド」をつけたいくらいでした。このサイトは「忖度なしのレビュー」を全面に押し出していたので、レビュワーが作品に対して厳しい姿勢を貫くなら、レビュワーに対してユーザーが厳しい姿勢を持つのも当然かと思います。
以上が、サイトオープン当初の私の感想です。レビュー自体は玉石混淆で良いのですが、システム自体に問題が多いかなと思いました。ただ、先程も書いたようにシステムはβバージョン、レビュワーもお金をもらって書くのは初めての人も多いだろうし、それならば今後システムは洗練、レビュワーも評価・批判されていけば質も高くなってくるだろうと思っていました。
炎上?と私の思うところ
炎上気味かなと思ったのは、4/7のお昼過ぎてくらい。私のtwitterのタイムラインにこのレビューサイトに対する批判コメントが見られるようになりました。キッカケがどこにあるのかわからないですが、私が気になったのは、とある作家の呟きでした。
こきおろすような内容
自著がレビューの対象になっていて、レビュワー個人の気に入らないところをただネガティブに書かれていると。あと、書影がコミカライズのカバーになっているとのことでした。
書影がコミカライズ版になっていることをキッカケにツイートしたみたいですが、その後、レビューに対する怒りが増幅してきたのでしょう、色々と呟いています。その中に「他出版社の作品をこきおろすとも受け取れるようなレビューに対し、内容をチェックしてないのではないか、を問題視している」といった旨のツイートがありました。そして、利用規約のスクリーンショットを貼ったツイートを引用したうえで「著者を不快にさせるのは利用規約に当たらないってことですか?」ともありました。
さて、ここで私は考えました。この作家は「こきおろすような内容」をチェックすべきと訴えています。この内容をチェックするというのは、「表現の自由」を侵害しないのか?たとえば、誤字脱字や用法の間違いにチェックを入れる校正なら問題はないと思うのですが、「こきおろすような内容」をチェックすべきというのはどうだろう、と。
で、まず「こきおろすような内容」とは如何ほどのものなのだろうかと、その作家の作品のレビューを読みにいきました。2件あるうちの1件は比較的好評価、もう1件が否定的なレビューで、冒頭に「楽しめなかった」ことを表明しています。その後にどのようなところが楽しめなかったのか、キャラや展開、描写に対して触れていました。ただ、最後には面白くなる要素が少しはある、これは現時点での評価であると。
私はこの作品を読んでいませんので、このレビューに書かれていることがどれくらい本当なのかどうかはわかりませんが、罵詈雑言はないし、作家を誹謗中傷している内容もありません。ただ楽しめなかった理由を冷静に書いているように思えました。そもそも私なんか、楽しめなかった作品を、ここまで分析して書けないなと感心しました。これを「こきおろすような内容」と私には思えません。逆にこれを「こきおろす内容」と捉えた作家は「痛いところを突かれた」のではないかと疑ってもしまいます。
作家は「これで不快になったし、このレビューを読んだ人はこの作品を買わなくなるかもしれない」、だからこのようなレビューを載せるなと言いたいのかもしれません。しかし、これはレビュワーが作品を読んだ感想をもとにして書かれているものです。他者の感情を変えることは出来ませんし、それを表明する自由はあると思います。もし内容についてサイト側があらかじめ独自の見解で削除・変更を求めるなら、それは「検閲」にも等しい行為ですし、あらかじめ作家の不評を買うような内容にしないなら、それは「忖度」ともいえるでしょう。なお、このチェックをしない理由は、「自社作品に対する批評が忖度されていない」ことを保証するためでもあるのだと思います。
そこで不思議に思うのは、あらかじめ「忖度なしのレビュー」を謳っているサイトに作家は何を期待して読みに来たのかということ。「忖度なしのレビュー」でも否定的な評価はないと確認しに来たのでしょうか。自作の評価が気になるのは当然だと思いますが、自作を悪く言う評価は載せるなというのは、「作家に忖度しろ」ということなので、サイトの方針に反します。そもそもサイトのトップページに「作家の方はお断り」くらいの文言があっても良かったのでは、と私は今になって思います。
では、この作家の怒りはどこに向かうべきなのでしょうか。私はレビュワーに向かうべきだと思います。ただ、件のサイトにはレビュワーに対する反応機能がありませんので、twitterで反応すればよいと思うのです。もちろん誹謗中傷や罵詈雑言があってはいけません。作家が想定していたように読み取られていないなら、作家の意図を説明すればいいと思うのです。レビューに瑕疵があるなら、それを述べればよいのです。それをせずにサイトに、こういったものを載せるなと言わんばかりに「チェックせよ」というのは、作家という表現を仕事としている人として、それでよいのですか?と問いたい。これは読者の言論の場を潰そうとしているとしか、私には思えませんでした。
また、罵詈雑言のようなレビューはamazonや読書メーターにもあったりしますが、それで不快になった、それを無くせという作家は聞いたことがありません。場をなくすのではなく、レビューはレビューを書いた人間が責任を持つべきという認識を持つべき思います。
レビューとは何なのだろう
この炎上を見ていると、「レビュー」というものに対して、色々な見方があるのがわかりました。私なんかは「感想のしっかりしたやつ」くらいのつもり(amazonでも「レビュー」と言っているけど、実際の内容はひとことコメントくらいが多い感じですし)なのですが、そうではない人も多いようです。
それで自分の理想とするレベルのレビューが無い、これなら批評でなく感想だ、などなど意見が出てくるわけですが、それならばこのサイトに求めるのはレビューの品質向上です。自身の考えるレベルのレビューがないから、こんなサイト認められない、やめてしまえというのは、あまりにも暴論でしょう(ちなみにそこまで言っている人はいない)。
また、レビュワーを認定しているのだから、サイト側がすべてのレビューの内容に責任を持てというのも、すべての作品の面白さをラノベレーベルが保証できない(結局は読む人の好みによる)のと同じで、これも厳しい。今回の場合だと、レビューの品質向上のために、どういう施策を取るのかが、件のサイトに求められるところでしょう。
なお、このレビュワーについては、BookBase社長が「運営審査をクリアーした歴戦のレビュワーたちが」なんて、煽っているのも悪いと思います。この社長、ちょっと盛りすぎ煽りすぎな傾向があるので、私からすれば「いつもの煽りか」くらいなのですが、歴戦のレビュワーなんていうと、大森望・三村美依・嵯峨景子・タニグチリウイチクラスのレビューを期待しちゃいますよね。
多分、運営審査をクリアーしたというのはどういうレベルかと考えると、ラノベをしっかりそれなりの量を読んでいる、それなりの文章をかけるくらいと考えると良いと思うのです。そのレベルならamazonや読書メーターで良いじゃないかと言う人もいると思いますが、それらはラノベをほとんど読まない人や、初めて読んだ人、届いた本の綺麗さのレビューをする人までいるので、レビューにおけるラノベ成分の純度が低いと思います。
だからラノベをそれなりの量を読み、ラノベの文脈を理解したうえで、それなりの文字数を書ける人が「運営審査をクリアーしたレビュワー」くらいに思っておくほうが良いでしょう。最初から多くを求めすぎないことです。ところで、どのような人がレビュワーなのか気になってしまいます。私としては、レビュワーはラノベを年間数百冊読む「このラノ」協力者クラスで、twitterアカウントでは本音を発信しにくいのでこちらで書こうと考えた、くらいのレベルの人だといいなと思うのでした。
で、最後にレビューかどうか、これらは感想でしょ、という意見についてです。その通りですが、でも誰がどのようにレビュー・批評・感想の線を引くのでしょう。なんか色々と「批評とは何々で」と書いている方もおられましたが、仮にそう定義したとしてもそれをしっかりと厳密にレビュワーに守らせるのは難しいと思います。なので私の提案は「レビューサイトではなくて、感想サイトに名称変更する」ことです。レビューなんていうから、権威的に感じられてしまうのであって、全部感想で良いのですよ。もっと気楽にラノベについて、良いも悪いもあれこれ書いてくれるサイトくらいを私は希望します。
ちなみに、ひとりのレビュワーがラノベ全体を俯瞰的に見たうえで客観的に、その一冊の価値を評価するなんてのは、1件3,000円(認定レビュワーはレビューが公開されるともらえるとのこと)の仕事ではないと思います。たくさんのレビュワーがいるので、主観的なレビューの寄せ集めであっても良いのではないかとも。
これはサイトのコンセプトの表現の仕方が悪かったのではないかとも思いまして、「忖度なしのレビュー」を全面に出すのではなくて、「良いも悪いも忌憚なく言える感想の場」としてのアピールをすべきだったのでは、と。
「面白くない」を共有したい
「忖度なしのレビューが悪口になっている」という書き込みも見たような気がします。サイト公開と同時にアップされたレビューが150件ほどとのことですが、この中でどれくらいが悪口だったのでしょうか。悪口に感じるかどうかも人によるので実際はわからないのですが、それほど悪口と受け取れるものが本当に多かったのかと。
ちなみに私の読んだ上記に書いた「楽しめなかった」レビューは悪口ではなく、レビュワーが楽しめなかった理由を言語化したもので、悪口とは受け取らなかったのですが、こういうのも悪口になるのでしょうか。否定=悪口ではないと思うのですが。
私は人の感想を読むときに、その人がどういったものを面白くないと言っているのかを気にしています。私が感じたのと同じ「面白くなさ」を書いている人を信頼するのです。あれも面白い、これも面白いというレビューをする人は、「何を読んでも面白いという人」なので、その人の言う面白さはあまり信用できません。同じ「面白くなさ」を共有している人の勧める作品は、面白くないと思うことは少ないと思ってます。
なお、私が面白いと感じたものを面白くないという人の感想は、スルーします。これはもう感覚が違うわけで、私の好きな作品をけなしている!ムキー!とはなりません。感想にしても批評にしても、人の感性は多様です。それを他人がどうのこうの言ったところでどうにもなりません。あぁそういう考え方もあるのだな、くらいでいいじゃないですか。ただ、例外があるとすれば、作家だと思います。自作を否定されるのは、辛いことだと思われます。でも、作品として有料で世に出たものですから、評価の対象になるのは仕方がありません。そこに否定の要素があったとして、それを認め受け入れるか、それは意図したものと違う受け取られ方だと跳ね除けるか、それは作家の自由です。
なお、このブログも世に出ているからには批判にさらされるわけで、この記事に対するどのような意見も、私は書くな、表明するな、とは言いません。罵詈雑言や誹謗中傷でない限り、それはそういう意見だと受けとめます。
他社作品を酷評するな
実は今回一番ビックリしたのが、「他社の出版物を、忖度無し(マイナス要素あり)でレビューするのは、よろしくないのでは?」というつぶやきがあったこと。それに賛同のリプがたくさんついていたのも驚きです。
新聞や雑誌に書評コーナーはあるし、そこで批判的なことが書かれることもままあります。多分、そういったものを読んだことがないのでしょう。出版社が他社の作品を取り上げることは何も問題はありません。本に限らず、映画でもゲームでも、皆さん普通に批判してますし、それでもそういうコーナーを無くせとは言わないでしょうに。
ちなみに私は以前、クルマ雑誌や自転車雑誌をよく読んでいました。そこで紹介される車や自転車の新製品レビューは良いことばかりが羅列されています。雑誌のスポンサーがメーカーなので、ライターは悪いところがあっても書けないわけです。こういうレビュー誰も信用しないよと思っていました。
「良いところもあれば、悪いところもある」のが普通かもしれませんが、「悪いところのないパーフェクトなもの」もありえれば、「良いところが一つもない」もありえます。これを書籍に置き換えたときに、ひとりのレビュワーのレビュー中で語るのは難しいですが、レビューの数が沢山あれば、それらは自ずからわかってくるわけです。
たくさんの「面白い」の声がある中で、1件2件の酷評があったところで、それは特殊な声、ただの少数意見であるわけです。ただ、その声があることで、そのレビューの場の信頼性は保たれます。多分作家にとって一番厳しいのは、酷評の嵐になることですが、否定することを憚る人が現在は多いので、そうなる可能性はかなり低いと思われます。逆に酷評を書く人は責任と覚悟が必要になってきます。
炎上と一時休止
ということで、長々と書いてきましたが、件のサイトは一時休止となりました。継続するかを含め検討するということですが、中の編集者の一人は「継続は困難と判断した」とまで書いてあるので、そのまま終了なのかもしれません。
一番気になるのが、告知のつぶやきに「本サービスのご利用でご不快な思いをされた方々に深くお詫び申し上げます」とあること。作家が「不快だ」と言った「作家のお気持ち」から始まっているのなら、この程度のクレームでやめないで欲しいというのが本当のところです。
誰かが「不快」と言ったからダメなんてことになると、何事もやってられないと思うのです。とある小説が不快だからという理由で、出版を差し止めることが出来るでしょうか?誹謗中傷や事実誤認があれば別ですが、そんな事はありえません。それこそエロなんて不快だという人も多いですが、公共の場で控えろというくらいで、出版するな、サイトを無くせなんて言われないですよね。
面白くないという感想をのせるサイトは、小説家が不快になるから、この世から無くなれというのはかなり怖いこわいこと思います。これを言葉でもって様々なことを表現する小説家がいっているのだとしたら、小説家が自らの首を絞めるのではないかと思います。
仮に罵詈雑言や誹謗中傷なしで、とある物事に酷評とも受け取られるかねない記述のある小説を書いたときに、その対象が「不快になった」を言い出したら、その小説家はその作品を自ら封印しなければならないということになりかねません。「不快になった」なんていくらでも言えますし、それをもって言論の自由を脅かすことに大変危機感を持っています。
ちなみに「お前には作家の気持ちがわからないだろう?」と言われるかもしれませんので、私がカクヨムに書いたエッセイのリンクを貼っておきます。

罵詈雑言や誹謗中傷なしで、奇譚のない感想をいただけると嬉しいです。
というわけで、私としては件のラノベレビューサイトの復活を願っております。