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学生時代に通った本屋さんの思い出

さて、今回は昔語り。

学生時代に通った本屋さんの思い出

キッカケは

ある時期はみんな使っていて、みんな知っていたはずなのに、身近すぎてわざわざウェブに記事を書くわけでもないから、どんな場所だったのかが個々人の記憶のなかにしか残っていない本屋ってけっこうあると思う。思い出して、書きのこしてほしい

飯田一史さんといえば、以前感想を書いた『「若者の読書離れ」というウソ』の著者、最近では『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか』を出版されています。

ということで、近年、本屋さんがどんどん閉店しています。私が学生の頃(70年代後半~80年代)に良く買いに行っていた本屋さんも、ご多分に漏れず閉店してしまっています。それらの本屋さんの思い出を少しばかり、書き記したいと思います。

私は1969年、和歌山県和歌山市生まれ、18才まで和歌山市内で暮らしていました。住んでいたのは市内の高松バス停を中心とした辺り(現在の西高松1丁目→東高松2丁目→東小二里町と引っ越ししてます)、中学校でいうと西浜中学校の校区です。高松には当時、和歌山大学経済学部がありましたので、それなりに賑わいのある街でした。

若林書店

Googleストリートビューより

高松の交差点から少し西に行ったところにあった本屋。当時は和歌山大学経済学部に一番近い本屋だったと思います。

多分、幼稚園から小学生の頃は、本を買ってもらう時はここだったと思います。昔ながらの本屋といった感じで、店先に週刊漫画雑誌が平積みに、学年誌はラックに入って並んでいた記憶です。「テレビマガジン」や「コロコロコミック」を、よく買ってもらってました。記憶に残っているのが小学校低学年の頃、「吉四六さん」という頓知話の本を買ってもらったことで、雑誌以外を買ってもらったのはこれが初めてじゃないかなと。学校の授業で頓知話の話題があって、当時はテレビでアニメの「一休さん」も放送されていて、頓知話に興味を持ったのだと思うのです。

小学校高学年の頃は、ポプラ社の「怪盗ルパン」シリーズを何冊か買ってもらいました。何度目かの購入時に母親にかけられた「同じような本ばっかり買う」という言葉がちょっとショックだった記憶もありますね。

中学生の頃は家から一番近い本屋ということで、雑誌を買うのは大抵ここで、少年ジャンプや少年サンデー、模型雑誌「模型とラジオ」、アニメ雑誌「アニメディア」「アニメック」などなど。ただ、不思議と若林書店でコミックスを買った記憶があまりありません。コミックスの並んでいるのが、はいって左側奥のレジの前でそれほど量がなくて、当時はあまりコミックスに力を入れていなかったのかもしれません。その分、雑誌はたくさん並んでいました。

で、若林書店最大の記憶といえば、お店の向かいが高松日劇というポルノ映画館で、小学校低学年の無邪気な頃ならいざ知らず、高学年にもなると親と一緒に前を通るのが恥ずかしかったことです。若林書店の店内から出ると、目の前にドーンと女の人の裸のポスターが貼ってあるのが見えるわけです。当時は3本立てウンタラカンタラとかあって、いろんなポスターが貼ってあるわけで、それはもう親と一緒に映画館の前を通るのが恥ずかしかったことよ。

Googleストリートビューを見ると、2012年の時点ですでに閉店されているようです。

宇治書店堀止店

Googleストリートビューより(2013年3月)

中学生になって行動範囲が広がり、よく訪れた本屋さんが宇治書店堀止店。

私が学生の頃は堀止の交差点のところにはイズミヤ(総合スーパー)があって、近くには黒門市場やミスタードーナツ、モスバーガー、おもちゃ屋も複数あり、イズミヤから東には商店が連なり、その先にイズミヤパンの工場がありました。堀止に行けば大抵の物が揃うところだったのです。

イズミヤから東に続く商店街、東西に続く長いビルの一階が商業施設になっているような形です。ここにあったのが宇治書店堀止店で、印象としては「きれいなお店」でした。当時の高松周辺にあった本屋はどこも年季の入ったお店だったので、ことさらきれいに見えたのでしょう。

ここは若林書店と違って、ジャンプやサンデーのコミックスが充実していました。記憶に残っているのが、寺沢武一「コブラ」、当時15巻くらいまで出ていたのですが、1巻から順に1回3巻くらいずつ購入して、2週間くらいで揃えたこと。大人買いとまではいきませんが、当時の私(中学生)の経済レベルではかなり贅沢なことをした記憶です。

ここではソノラマ文庫も結構買いましたし、高校生の頃になると、音楽雑誌、当時はPATI-PATIとかGBとかARENA37℃ とかをよく立ち読みしていました(買わなくてごめんなさい)。そして、この本屋での一番の出会いは、まだA5サイズだった頃のJICC出版局の雑誌「宝島」です。音楽雑誌と一緒に並んでいたのですが、音楽に限らずファッションや映画、演劇の情報が載っていて、いわゆるサブカルとの出会い。この「宝島」キッカケでマイナーな映画とかインディーズバンドとかにハマるようになったのでした。

こちらもGoogleストリートビューを見ると、2013年の時点ですでに閉店されているようです。なお、宇治書店県庁前店は現在も営業しているようです。

星林高校近くの書店

Googleストリートビューより(2012年12月)

高校は星林高校に通っていました。星林高校の校門を出て、矢宮神社の前を通って突き当りのちょっといびつな四つ辻にあった本屋。お店の名前は覚えていないのですが、高校生活3年間の長期休み以外、買うと決めていた漫画雑誌は発売日の学校帰りに、ここでだいたい買っていました。

それほど大きくない本屋で、発売日すぐのコミックスなら買えたけど、ちょっと古いコミックなんかはあまりなかったような。名前も覚えていないくらいなので、ほんと雑誌を買うだけだったと思います。ただ、高校生の時の利用率は間違いなくNO.1でした。

こちらもGoogleストリートビューを見ると、2012年12月の時点ですでに閉店されているようです。民家っぽくなっているけど、シャッターのところが入口でした。当時の面影はありますね。

宮井平安堂

Googleストリートビューより(2013年4月)

和歌山市で本屋といえば「宮井平安堂」で、当時の和歌山の繁華街本町にありました。丸正百貨店、紀陽銀行本店とならぶ、本町のランドマークだったと思います。ただ、昔の建物の写真が検索してもほとんど出てきません。こんなに有名だった本屋でも、ネット上では記録が残ってないのですね。

家からは自転車で片道30~40分くらいでしょうか。月に1回くらいのペースで通ってました。

ここでの思い出といえば、やっぱり中学から高校時代にハマっていたソノラマ文庫、近くの本屋と違ってたくさん並んでいました。当時は菊地秀行と夢枕獏全盛時で、エイリアンや吸血鬼ハンターD、キマイラシリーズが平積みでズラッと。棚差しで清水義範作品もたくさん揃っていた記憶があります。平積み作品の表紙絵を眺めているだけでも楽しかった記憶です。また、ハヤカワ文庫や創元推理文庫もたくさん並んでいて、ペリー・ローダン、グイン・サーガ、デュマレスト・サーガなどのシリーズものもしっかりと並んでいました。こちらも買いはしないですが、見ているだけで楽しかったです。

もうひとつ印象に残っているのが、SF特撮雑誌「宇宙船」との出会い。当時中学生で特撮ヒーロー物(宇宙刑事ギャバンが始まった頃です)を見ている人は幼稚と呼ばれていて、それらを扱っている雑誌もテレビマガジンとかの幼年向けしかないと思っていたのです。それが「宇宙船」という雑誌を店頭でたまたま見つけて、真面目に作品として「仮面ライダー」とか「仮面の忍者 赤影」を扱っているのに感動したわけです。そこから特撮ヒーローだけでなく、SFXが使われた最新映画、ハリーハウゼン作品や「禁断の惑星」「宇宙水爆戦」などのクラシックな特撮映画まで、興味を持つようになりました。宇治書店での「宝島」もそうだったのですが、本屋での出会いが趣味を広げてくれたということですね。「宇宙船」は当時季刊誌で、近所の本屋では扱っていなかったと思います。

宮井平安堂は本当に広くて、1階には雑誌小説実用書などに加えレコードなども販売していました。2階には漫画や参考書。あまりにも広いので、逆に買い物はしづらかったかも。ブラブラと見ているのは良いのですが、目的のものを買うにはちょっと広すぎて、趣味が固まってきた高校生のころは、宮井平安堂よりも次に紹介する津田書店で買うことが多くなりました。

本町の宮井平安堂、ネットで調べるだけでは、いつまで営業していたのかがよくわかりません。個人ブログに載っていた記載では、2010年6月13日に書籍部門が閉店となったとのことです。文房具店として続いていたようですが、2017年に建物は解体となっています。

津田書店

2024年1月撮影

中ブラクリ丁の東端にあった本屋で、2011年1月31日に閉店したとのことです。江戸時代から続く、創業約160年だったそう。写真は2024年の1月に和歌山をブラブラした時に撮った写真です。閉店から13年もそのまま残っているのは、アーケードと一体になっていてビルの解体が難しいのかも。

さて、津田書店といえば、2階の漫画コーナーです。ここはわりと当時の私にとってはマニアックと思える本が揃っていて、家の近くの本屋では見かけない物がたくさん並んでいました。多分、大友克洋とか御厨さと美とかの本はここで買ったはずです。朝日ソノラマのサンワイドコミックスとかも並んでいて、これもよく眺めていました。そういえば大友克洋の『童夢 豪華版』、原稿原寸大で5千円もする限定商品も置いてあった気がする。もちろんそんな値段の商品は買えなくて、眺めるだけでしたが。

アニメ雑誌やアニメムックもたくさん並んでいて、角川のアニメ雑誌『ニュータイプ』創刊号とか、ダンバインやエルガイムのちょっと高いムック本とかもここで買いました。品揃えも良くて、お店もコンパクトなので買い物しやすくて、良く利用していましたね。

あと、2階へ上る階段では、アイドルの生写真(グレーゾーン商品)なんかも売っていましたし、当時のマニア御用達アニメキャラのペーパーバッグ(紙袋)も売っていたような気がします。たしか「バイファム」のペーパーバッグ買ったような覚えが…

1階では雑誌や小説が売っていて、文庫本は宮井平安堂に比べると品揃えは少なかったけど、当時よく買っていたソノラマ文庫の新作はキチンと入荷するし、人気作の品揃えは良かったと思います。グイン・サーガもここで買っていたはず。

和歌山に住んでいた頃一番好きだった本屋は?と聞かれたら、津田書店と答えるでしょう。若林書店には子供の頃からの思い出もあるし、宇治書店もいっぱい立ち読みしてお世話になったし、高校のときは星林近くの本屋を一番利用(週刊誌買うのに週2で利用)していたけど、コンパクトながら私にとっての品揃えが充実していたのは、やっぱり津田書店ですね。

それ以外の本屋

上で書いた以外にも、欲しい本が近くの本屋にない時は、宮井平安堂を目指して、自転車で道すがらの本屋に立ち寄っていました。家からの近さでいえば、若林書店と同じくらいの距離にあった太田書店。こちらは現在も営業中。若林書店より小さかったので、どうしても若林書店にまず行ってしまうわけで。太田書店はちょっと硬めのイメージの本屋で、あまり行かなかったですね。

車庫前(現在、高松北)のバス停からバス通りを堀止目指していく途中にあった、小さな本屋。名前も覚えていないのですが、藤子不二雄のコミックスが充実していて、小学生の頃から何度か行きました。ドラえもんが人気の当時、『キテレツ大百科』や『21エモン』など3巻くらいで終わる、ちょっとマイナーな藤子作品が並んでいたのです。

国道42号線沿いには本屋が何軒かあって、小松原6丁目の中華そば屋の並びにも本屋がありました。こちらも小さな本屋だったのですが、映画の前売券を扱っていたので、本よりも映画の前売券を買っていた印象が強いです。

県庁前の交差点の角には上野山書店。あまり利用した記憶がなくて、探している本がないか覗きに行くくらいでした。こちらも2015年3月31日閉店。創業102年だったそうです。

上野山書店と国道を挟んでななめ向かいくらいには、宇治書店県庁前店。こちらもちょっとお硬い目の品揃えであまり利用した記憶がありません。確かコミックスほとんどなかったような気がします。

最後に忘れてならないのが、帯伊書店。現在も営業中。こちらも江戸時代から続く老舗とのことです。高校生の頃はビブレへ買い物に行くときに、この前を通るのでちょっと本を覗きに入ることがあったくらいです。宮井平安堂と津田書店でほとんど買いたい本は買えたし、宮井平安堂から津田書店と帯伊書店の距離は同じくらいなので、同じ本を買うならどうしてもお気に入りの津田書店へ足が向いてしまうということだったのでしょう。

まとめ

以上、小学生~高校生の頃(70年代後半~80年代)に、利用していた本屋の思い出話です。取り上げた本屋11軒中、現在も営業しているのは3軒のみと惨憺たる状況です。

ネットで色々調べていると、2010年の時点で、「2000年に全国で2万1922店あった書店は一貫して減少し、2010年には約29%減の1万5519店となった。最も減少率が高かったのは和歌山県で、257店から137店へと約47%も減少。」と朝日新聞で2010年1月26日に報道されたようです。

日本の書店数の変化を調べる。 | レファレンス協同データベース
レファレンス協同データベース(レファ協)は、国立国会図書館が全国の図書館等と協同で構築する調べ物のための検索サービスです。参加館の質問・回答サービスの事例、調べ方、コレクション情報など調査に役立つ情報を公開しています。

元記事はもう無くなっているので、こちらを参考に。

出版市場が2兆円割れし、縮小が続く中、各地で書店が消えている。この10年間で6403店減少し、ほぼ半減している県もあることが分かった。全国の書店を調査しているアルメディア(東京都)のデータをもとに、2000年と今年1月時点の書店数を比較し、減少率を計算した。
00年に全国で2万1922店あった書店は一貫して減少し、10年には約29%減の1万5519店となった。最も減少率が高かったのは和歌山県で、257店から137店へと約47%も減少。次いで山口県佐賀県が約38%減少した。

個人的には雑誌がコンビニエンスストアで扱われたことによって、本屋へのリピーターが減って減少が始まり、ネットの発達で雑誌が読まれなくなり、書籍もネットで買われるようになって、さらに減少が進んでいるのでは?と思っています。

このあたりは冒頭に紹介した、飯田一史『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか』をいずれ読んでみたいと思います。それにしても新書が1000円オーバーなのは、なかなか買うのに勇気がいりますね。

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