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警察小説の第一人者 今野敏が描くスペースロボットオペラ『宇宙海兵隊ギガース』を読んで【読書メモ】

さて、久々の読書メモです。今回は警察小説の第一人者といっても良いであろう、今野敏が宇宙を舞台にメカアクションを描いた『宇宙海兵隊ギガース』全6巻を読んだ感想です。

ちょっと古い作品ですが、外出を控えている現在、一気読みしてみました。

 

今野敏

作者の今野敏は、1955年北海道生れ。1978年に『怪物が街にやってくる』で問題小説新人賞を受賞。2006年、『隠蔽捜査』で吉川英治文学新人賞を、2008年、『果断―隠蔽捜査2―』? で山本周五郎賞と日本推理作家協会賞を受賞。

作品としては警察小説、格闘技や伝奇などを絡めたアクション小説を多数書いています。その中でも隠蔽捜査シリーズや安積班シリーズ、警視庁強行犯係・樋口顕シリーズなどの警察小説がドラマ化されるなど、警察小説の評価が高い作家です。

ガンダム好きでも知られていて、趣味としてガンダムのスクラッチビルド(模型を一から作る)があげられているほど。

ガンダムに関連する作品としては、『機動戦士Zガンダム外伝 ティターンズの旗のもとに ADVANCE OF Z』があります。また、いじめられっ子をガンプラ作りで立ち直させる『慎治』という異色作(佳作!)なんかもあって、オタク側の作家といっても良いでしょう。

今回紹介する『宇宙海兵隊ギガース』は、ガンダムにインスパイアされたというか、ガンダムへのオマージュともいえる作品でしょうか。

宇宙海兵隊ギガース

1990年に発売された『宇宙海兵隊』と翌年の『宇宙海兵隊2』をもとに、2001年から講談社ノベルズでリライトされたのが『宇宙海兵隊ギガース』シリーズ全6巻です。

3巻までは年1冊ペースで刊行されたのですが、4巻まで3年、5巻まで2年、6巻までは4年かかるなど、2001年の刊行開始から、11年かけて完結しました。初期から読んでいた人も、結構離れていったかもしれません。作者のコメントによると、全3巻の予定だったようですが、ずいぶんと冊数も期間も長くなってしまいました。

ノベルス1巻の裏表紙には「スペース・ロボット・オペラの決定版」、最新刊紹介の文句には「”G”世代直撃!」などと書かれており、リアルロボット小説への期待を持って読むことにしました。なお、”G”世代というのは、ガンダム世代ということと思われます。

読んだ感想

舞台は人類が宇宙に進出した未来。木星に住むジュピタリアンが独立戦争を挑んでくるという、ガンダム的な世界です。

対する地球連合軍では、アメリカ海軍を母体とする宇宙海兵隊とロシア空軍を母体とする空間エアフォースが存在し、宇宙海兵隊に新型ヒュームス(ロボット、モビルスーツと同義)ギガースと謎の美少女パイロット・リーナが配属されるところから物語は始まります。

宇宙海兵隊は宇宙での作業ロボットをベースにしたヒュームスが、空間エアフォースでは航空機をベースにした戦闘機が使用されており、それぞれが混じること無く運用されている状態。そこへギガースの投入にあわせて、海兵隊とエアフォースが混成部隊になり、ジュピタリアン側と対峙していくように。

前半は宇宙海兵隊小隊長カーター大尉、空間エアフォース部隊長オージェ大尉を中心に物語は進んでいきます。ジュピタリアンとの戦いや海兵隊隊員とエアフォース隊員との軋轢などが描かれ、特殊な能力を持つリーナの生い立ちなども解き明かされていきます。

宇宙における移動がすべて引力の影響を受けていて、自由な移動があまりできない、出来たとしても絶えず燃料を意識しないといけないという設定がリアル。ただ、リアルにこだわりすぎた故に、面白みもなくなったように思えます。ヒュームスが自由に移動して戦えないというのは、ロボットものとしてはマイナスです。また、星間移動にも時間がかかり、展開が間延びするなどリアリティが足を引っ張っています。

後半は、地球側の新聞記者と政治家、ジュピタリアン側のスパイを中心とした話が多くなり、物語は地球連合政府内部の政治闘争ばかりで、ロボット小説という期待も裏切ってくれます。最終的にはジュピタリアンの存在意義的な話になり、終わり方も今ひとつすっきりしない。

最終的な感想は、ガンダムを期待していたらダグラムだったといったところです。

amazonのレビューなどでも、評価は高くありません。カバーイラストは美少女xロボットなのに、内容はリアリティを前面に出したSF風の作品で、ライトノベル以上SF未満といった立ち位置。結局、ライトノベルを期待した人、SFを期待した人、どちらの層にもフィットしなかったようです。

イケメンなオージェ大尉やニュータイプ風美少女リーナなどキャラクターに魅力もあるし、ギガースのデザインもかっこ良いのにもったいない感じ。もう少し気楽な娯楽小説だったら良かったのにと思う次第です。

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