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電撃コラボレーション『サンタクロースを見た』を読んで【ラノベ・アンソロジー】

さて、今回は電撃コラボレーションの『サンタクロースを見た』を読んだ感想です。

こちらの作品はもともと雑誌の付録です。紙版を手に入れるのは古書店やヤフオク・メルカリなどを利用する必要があります。ただ、電子書籍化されていますので、そちらであれば簡単に読むことができます。

電撃コラボレーション

もともとは雑誌『電撃hp』『電撃文庫MAGAZINE』誌上にて行われた企画で、「電撃作家陣が同じテーマ&同じシチュレーションのもと、コラボレーション作品を描く」がメインコンセプトです。wikipediaによると、かなりの企画が開催されているようです。

その中で電撃文庫創刊15周年記念企画として、2008年に『まい・いまじね~しょん』『MW号の悲劇』『最後の鐘が鳴るとき』の3企画が文庫化されました。その後『電撃文庫MAGAZINE』では「まるごと1冊“電撃文庫”」として、アンソロジー企画がそのまま付録になることもあったようです。

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サンタクロースを見た

クリスマスイブで盛り上がるとある街で「サンタクロースを見た」ことから始まる5つの事件が描かれる。それぞれの個性が光るストーリーは心に残ること間違いなし! 聖夜に訪れる、優しい、笑える、切ない、スリリングな、暖かな──珠玉のストーリーをあなたに。

電撃文庫MAGAZINE2012年1月号の「まるごと1冊“電撃文庫”」付録。現在は電子書籍で読むことができます。

収録作品
恋愛と幼女の分岐点 / 蒼山サグ
とある童貞のクリスマスイブ / 沖田雅
ワルキューレの奇行 / 竹宮ゆゆこ
クリスマスM&A / 土橋真二郎
勇者の帰還 / 志村一矢

読んだ感想

今回のお題は「サンタクロースを見た」という書き出しで始まることと、「小学生」「魔法」「ツンデレ」「ゲーム」「たらこ」の5つキーワードを使うことです。

恋愛と幼女の分岐点 / 蒼山サグ

クリスマスイブの日に、クラスメートの男女6人でカラオケパーティーのはずが、近所に住む小学生の女の子の面倒を見ることに……

幼女といえば、この著者が第一人者か。幼女とのデート話に見せかけて、ちょっといい話。

蒼山 サグ(あおやま サグ) 2009年『ロウきゅーぶ!』でデビュー。小学校の女子バスケットボール部を描いた同作はアニメ化もされるほどの人気に。代表作はこれ以外にも『天使の3P!』など。

とある童貞のクリスマスイブ / 沖田雅

めでたく彼女ができて初めてのクリスマスイブ。準備万端で迎えたはずなのに、踏んだり蹴ったりの日になることに……

童貞喪失を焦るチェリーボーイのバカ話なんだけど、なんでうんこ漏らしそう的な話にするのだろうか。内容のわりに話が長く、冗長に思えました。ゆりたんがかわいくて救われます。

沖田 雅(おきた まさし) 2004年『先輩とぼく』でデビュー。同作は男女入れ替わりラブコメの佳作。代表作はアニメ化もされた「オオカミさんシリーズ」。現在は作家活動はしていないようです。

ワルキューレの奇行 / 竹宮ゆゆこ

女子大生2人のガールズラブな物語で、タイトル通りの奇行を描いたもの。ただ、一緒にいたいとはいえ、人の携帯電話を隠すという行為に共感できず。大きな展開もなく、ダラダラと続く内容で、こちらも冗長に思えました。

5人の作家の中で期待していただけに、ちょっと残念でした。

竹宮 ゆゆこ(たけみや ゆゆこ) 2005年『わたしたちの田村くん』で文庫デビュー。代表作はアニメ化もされた「とらドラ」「ゴールデンタイム」など。現在はライト文芸のジャンルで活躍しています。

クリスマスM&A / 土橋真二郎

ネットを使ったモノポリー的なゲームを、実際の街と連携させて行うXゲーム。設定は面白いのですが、ゲーム世界で株主になったからといって、実際の店のサービスを変更したり合併させたりというのは、読んでいてさすがにありえないと思いました。

主人公の考え方も偏っていて、それはそれで面白いのですが、展開が主人公の考えた通り進むというのが作者の独りよがり的な展開のようにも思えました。

クリスマスをテーマにした作品に、M&A(企業の買収や合併)を持ってくる発想は面白かったのですが、今ひとつ消化しきれていなくてもったいない作品だなぁと。

土橋真二郎(どばししんじろう) 2007年『扉の外』でデビュー。代表作に「ツァラトゥストラへの階段」「ラプンツェルの翼」など。現在も電撃文庫で活躍中。

勇者の帰還 / 志村一矢

途中まではサンタ少女がどうのこうのと、つまらなかったのですが、途中からの超展開に驚き。ただの幼なじみとの物語に終わらなかったところが素晴らしいです。

最後の取って付けたような各作品の回収はいらないんじゃないかと思いましたが、これがあるのがアンソロジーでなくてコラボレーションたるゆえんなのでしょう。

志村 一矢(しむら かずや) 1998年『月と貴女に花束を』でデビュー。デビュー作以外の代表作に『麒麟は一途に恋をする』など。現在はカクヨムでも作品を発表しています。

まとめ

お題からはもっと自由にできるはずだと思うのですが、作家同士の打ち合わせで、あらかじめ場所やイベントを決め、話がリンクするようにしたのでしょう。短編小説を集めた単純なアンソロジーでなくて、コラボレーション小説なので、それはそれでありとは思います。

ただ、同じ舞台、同じ時間帯、なのでどうしても似たような話になってしまいます。それを各作家によって色を付けていくのが、コラボレーションなのでしょうが、このタイプはあまり好きではないですね。

幼女と家族の感動語、童貞少年のコメディっぽい物語、同性への恋心を描く物語と前半はクリスマスっぽい話で、後半2つがゲーム的世界を描く物語、異世界との関係を描く物語とやや飛躍した話。各作家が似たようなテイストにならないようにしているのがよくわかります。

でも、全体的におもしろくなかったというのが本当のところです。ベストは「恋愛と幼女の分岐点 / 蒼山サグ」で、それ以外はどれもまぁまぁ。参加作家が少ないのもあって、過去に読んだの電撃コラボの中では1番楽しめませんでした。

出だしの「サンタクロースを見た」がどの作品も活きていなかったのも残念。また各作品がちょっと冗長に感じるところがあったので、もう少し短めであと2人ほど増やしても良かったのでは? なんて思います。

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