さて、今回は富士見ミステリー文庫から出版された単巻ラノベをまとめたもの、第2弾です。
なお、既読作品には星印の評価を添えてあります。未読のものは未評価で、今後読み終わり次第、評価をつけていく予定。あくまでも個人的な好みです。
面白い。読んで損は無し。
面白い。楽しめます。
それなりに面白いかも。
時間があれば、読んでみるのも一興。
大雑把な評価ですが、もし読んだことがないものがあれば、参考にしてください。
- 銀の逢魔ヶ刻探偵団 聖ウィンチェスター学園の魔女たち / ゆうきりん
- フォート探偵団ファイル 1 牙王城の殺劇 / 霞流一
- 硝子ノ音色 1 蒼い波紋のラプソディ / 金巻兼一
- アンダーヘヴン -RYO- 翼の境界線 / 三田誠
- レブリガン・ド・レコール 今宵、すべての悪党たちに / 日昌晶
- ちけっと・2・らいど! カシオペアは北天に輝く / 西奥隆起
- 注文の多いパズル 夏の雪に溶けたパスワード / 雅孝司
- フォルクローロの記憶 あの空に届いた約束 / 伊藤馨太郎
- 今夜だけ退魔少女 あたしの中の王子さま / 真坂たま
- カフェ<白銀館>物語 一 危険な魅惑のアロマ / 年見悟
- ブラインド・エスケープ / 樹川さとみ
- とりあえずまとめ
銀の逢魔ヶ刻探偵団 聖ウィンチェスター学園の魔女たち / ゆうきりん
著者:ゆうきりん
イラスト:RAMI
発売日:2001/09
横浜のキリスト教系学園の一角。魔女養成秘密結社の隠れ蓑「悪魔学研究部」に、人形を送りつけられたというハーフの少年・クリスが相談に訪れた。「IAMMASCIRTAUSKALEOV」
黒瓜羊子に手渡された人形には、そんな呪文が書かれていた。
「これは、あたしたちへの挑戦だわ!」羊子は強引に決め付けると、同じく魔女を目指す占い師の遙と、頭脳派で物静かな智巳とともに、身を清め黒衣をまとい、呪い封じの儀式を行った。
そして3人は捜査を始めるが、彼女たちの前に『暴走神父』の異名を持つ天敵・大地怜が立ちはだかった。ノンストップ・オカルト・ミステリー登場!
オススメ度:未読。
フォート探偵団ファイル 1 牙王城の殺劇 / 霞流一
著者:霞流一
イラスト:佐々木あかね
発売日:2002/01
「コビトワニのグッチ君を見つけだして欲しいんです」
ドーベルマンからハリネズミまで、珍ペットなんでもござれの刃狩動物病院に舞い込んだ、これまた珍妙な事件。忙しい父姉に代わり、現場に乗り込むのは、高校二年生の紋太郎と仲間たち《フォート探偵団》だ。
UFO、心霊現象など、超常現象(フォーティアン・フェノミナ)を調査し、真の怪奇事件との出会いを渇望する、ちょっとだけ夢見がちな三人組。もはや怖いものなどない!
彼らが挑戦する相手はワニの楽園《牙王城》。事件は財閥跡目相続問題も絡み、ついには殺人事件まで起こるが……
超常現象を探究する学校非公認サークル・フォート探偵団が、行方不明のワニの探索を依頼され、殺人事件に巻きこまれていくミステリ。バカミスキングの作品ということで、舞台となる牙王城の設定など馬鹿っぽいんだけど、しっかりと本格です。超常現象に殺人事件を絡めて、その両方の謎を解いていくスタイルが面白いです。馬鹿っぽい設定の上に随所にギャグが盛り込まれているのですが、最後はビターでただのユーモアミステリとはまた違った味わいがあって良いのです。このメンバーでの続きが読みたくなりますが、残念ながら続きはありません。
オススメ度:
硝子ノ音色 1 蒼い波紋のラプソディ / 金巻兼一
著者:金巻兼一
イラスト:いとうたけひこ
発売日:2002/04
音響効果マン──それは、フィルムの「音」を司る縁の下の力持ちである。高校生の初音響樹はアルバイトSEマン、『音屋の元次郎』といえば知らぬ者がいない名音響マンである祖父にシゴかれる毎日をおくる。
そんな彼に、初めて「映画」の仕事が舞い込んできた。張り切る響樹だったがこの映画、なぜかトラブル続き。主役声優は交代するは、監督は逃げ出すは、スポンサーはうるさく注文をつけてくるは……その上、響樹のプライベートでも騒動が巻き起こって!?
ティーンズのセンシティヴな日常を活写する、すったもんだのギョーカイミステリー!
オススメ度:未読。
アンダーヘヴン -RYO- 翼の境界線 / 三田誠
著者:三田誠
イラスト:堤利一郎
発売日:2002/04
「空なんておとぎばなしにしかないって、聞いたよ。むかしむかし、人間が地上ってとこに住んでいたときのおとぎばなしって」
少年の言葉に、にっこり笑った爺さんは頭上を──息のつまりそうに赤く、ごつごつした都市天蓋を指差した。
「あの天井の向こう側に、空があるんじゃよ」
そこは上空を完全に閉ざされた地下都市。誰もが行き場をなくした場所で、〈悪魔〉の異名を誇る殺し屋の少年リョウと天使の少女ユラは出会う。やがて、二人は世界を統べる《天使三原則》の謎に立ち向かうのだった。
天界と地界、光と陰が交錯するエンジェリック・ミステリー誕生!!
オススメ度:未読。
レブリガン・ド・レコール 今宵、すべての悪党たちに / 日昌晶
著者:日昌晶
イラスト:篁龍士
発売日:2002/06
悪友ルイ・アルフォンス・フランソワ・山田・ド・サドの奸計にはまり、16歳の身空で一千万円の借金を背負ってしまった榊時光。しかもご丁寧なことに、借金を返すために男同士のAVへの出演契約書までサインした事になっていた!!!!
死んでもそんな物に出たくない。しかし借金は返さないとその筋の方に命を狙われる……。
進退窮まった榊に、ルイは甘い声で囁いた。──いい金儲けの方法があるんだけどさ──。
ヤクザを欺き、警察から逃げ回り、出席日数ぎりぎりで追試を受けまくる! 大胆不敵! 神出鬼没! 規格外の超高校生四人組が繰り広げる危険遊戯!!
オススメ度:未読。
ちけっと・2・らいど! カシオペアは北天に輝く / 西奥隆起
著者:西奥隆起
イラスト:みけおう
発売日:2002/07
「うわーっ!待ってくれ~!!」
発車のベルが鳴り響くホームを少年と少女が駆ける。二人は大荷物を抱えながら、列車の扉にギリギリで転がり込んだ。少年の名は小山翼──旅を愛する高校生。少女の名は松本あずさ。好奇心旺盛で何にでも首を突っ込むタイプの女の子だ。
北海道・札幌と上野を結ぶ豪華寝台特急〈カシオペア〉。個室に区切られ、ホテル並のサービスを誇る人気路線だ。福引きでチケットを手にし二人は、後先考えず旅立つのだが……。札幌到着後、車内から死体が発見され、翼は殺人事件の容疑者となってしまう。翼の鉄道知識と推理が謎を解き明かす!
多分、富士ミスで唯一のトラベルミステリー? 犯人探し自体は楽しいのですが、キャラに魅力がないので全体としてみると、もったいないという感じです。主人公もその友人も女性刑事も、みんなウザいタイプで読んでいてイライラ。さらに主人公は謎の上から目線で、こんなキャラに共感を覚える人は少数派だと思います。さらにさらに友人キャラは格別にウザい存在で、作者はこういうのが面白いと思っているのでしょうか? 物語自体が多少面白くなくても、キャラに魅力があれば続きが読みたくなるものですが、残念ながらこの作品にはそれがありません。
オススメ度:
注文の多いパズル 夏の雪に溶けたパスワード / 雅孝司
著者:雅孝司
イラスト:箱田真紀
発売日:2002/07
知英大学付属高校に入学した菅野久斗は、三人の新入生と出会った。竜崎純、三沢麻鈴、寺本優菜と久斗は、お互いがミステリー好きと言うことで、専用のメーリングリストを作る。
そこにある日、リュパン21と名乗る謎の存在から、次々とパズルが送られてきた!
「ネット内をさまよう仮想知性ってなんだよ!?」
「いたずらじゃ……ない!!」
そんなとき久斗たちは人工ゲレンデで20人が消える事件に遭遇する! 20人はどこへ? そして、リュパン21の正体は!?
ひねりのきいたパズルと事件とが絶妙に絡み合う、超パズル・ミステリー誕生!!
ミステリ好きの4人が人工ゲレンデで20人が消えた事件の謎を解く物語です。殺人事件は起こらず、日常の謎系に近いタイプの作品。作中にパズル(今で言うナゾトキ)が散りばめられていて、変化球的な作品なのですが、意外といっては失礼ですが面白いです。メーリングリストに仮想知性リュパン21が入り込んできて、ナゾトキを連発してくる流れは、グループLINEにAIが割り込んでくると考えたら現在でも通用しそうです。メインとなる謎はテレビ局や芸能事務所が絡む事件で、中高生向けに興味のもたせ方も良いと思います。ただリュパン21の正体はわからないまま、続編がなく残念。
オススメ度:
フォルクローロの記憶 あの空に届いた約束 / 伊藤馨太郎
著者:伊藤馨太郎
イラスト:小野寺明
発売日:2002/08
──私は空を見ました。いちめんはられたインドラのスペクトル製の網。幾億互いに交錯し光って顫えて燃えました──。
民話を意味する《フォルクローロ》と呼ばれる街、岩手県遠野市から、一通の手紙が届いた。
偉大な民俗学者・吉弥候部真宛てに届いた手紙に、曾孫の松岡圭真は興味を覚える。そして、誘われるかのように、圭真は急ぎ遠野へ向かった!
そこで出会った差出人の少女・白石佳織に、心魅かれていく圭真。ところが、圭真と佳織は身も凍るような事件に遭遇する!! 二人の想いの行方は!?
事件のキーワードは『賢治の童話』にあり!?
作者いわく妖怪民俗学ミステリーとのこと。座敷わらしが町中で見かけられるようになり、それを調査に訪れた民俗学者の孫が、過去の未解決事件を模倣したような殺人事件に巻き込まれる物語です。柳田國男「遠野物語」と宮沢賢治「インドラの網」を引用して、目指すところは面白そうなのですが、出来としては……。文章に若干おかしな所がありますし、事件全体にもおかしなことが多々あります。わりと重要な存在の人間の正体が語られずに終わってしまい、続きも出ていないのは残念。
オススメ度:
今夜だけ退魔少女 あたしの中の王子さま / 真坂たま
著者:真坂たま
イラスト:森永あい
発売日:2002/08
「はぁ……。かんべんしてよ」
校門前に止まった黒のベンツを見て、亜子はため息をついた。すかさず、黒いスーツにサングラス姿の、超美形の男が現れる。
「亜子さん、お迎えに上がりました」
周りの好奇の眼差しを避けるように、彼女は車に乗り込んだ。
亜子は代々、怨霊退治を生業とする平野家の一人娘。今日も制服姿のまま、政府の役人・司馬史郎に連れられ、謎の石棺が発見された場所へ向かう。だが、そこで彼女を待ち受けていたのは、とんでもない事件だった!期待の新人が描く、陰陽アクション・ミステリー。果たして、王子さまは現れるの!?
オススメ度:未読。
カフェ<白銀館>物語 一 危険な魅惑のアロマ / 年見悟
著者:年見悟
イラスト:早真さとる
発売日:2002/09
珈琲──時に人を幸福にし、時に人を惑わす、ほろ苦く芳しい傾国の美女……。
明治三十二年。ようやく日本にも珈琲文化が根付き始め、東京・神田のカフェ〈白銀館〉もハイカラ好みの人々でにぎわいをみせていた。
だが、ある日〈白銀館〉では珍客を迎えていた。人ならぬその客の名は《殺人事件》──。〈白銀館〉の看板娘である元気少女・ユキは、事件の容疑者にされた同僚・ケイの無実を証明するため、真犯人を見つけだす決意をする!
漆黒の液体はいかなる謎を映し出すのか? 浪漫の薫り漂う、青春ミステリー。
明治期を舞台にカフェで働く少女を主人公にした青春ミステリ。殺人事件を巡る話ではありますが、珈琲に取り憑かれた人間と幻の珈琲豆を巡る話でもあります。少女が将来の目標に悩みつつ、事件の解決とともに成長する姿も描かれていて、青春ミステリとしても楽しめます。作中にあるシーボルトやその娘いねが〈カイール・ベイ〉に関わる話が、本当なのか創作なのかわからないですが、この幻の珈琲豆にまつわる話も面白いです。
オススメ度:
ブラインド・エスケープ / 樹川さとみ
著者:樹川さとみ
イラスト:藤田香
発売日:2002/12
いつもと変わらないはずだった放課後……それは起こった。突然、肩ごしに伸びてきた手が下足箱のふたを閉める。
「声をたてるな。ひとこともだ」
制服の背中ごしに伝わる声の響きと体の熱で、相手の近さを実感し、由貴は動けなくなる。
──これが、ごく普通の女子高生・青野由貴が《誘拐》された瞬間だった。《誘拐犯》高嶋要は由貴の手を握り、呟く。
「オレがお前を守る」
そして二人の、後戻りできない逃避行が始まった!! ハイスピード・エスケープ・ノベル、ここに登場!!──あなたは、誰かの手を、離せないと想ったことがありますか?
ハイスピード・エスケープ・ノベルやジェットコースターノベルの煽り文句通り、次から次へと起こる危機を切り抜けていく逃亡劇。最初は訳がわからないのですが、どんどんと展開していきグイグイと惹き込まれていきます。最後のあたりで若干?な部分があるのですが、面白く一気に読めます。最初はただの盗聴野郎が、物語に大きく関わってくる展開も面白いです。
オススメ度:
とりあえずまとめ
以上、富士見ミステリー文庫創刊の01年9月から02年11月までの11作品の紹介でした。