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【90年代単巻ラノベを読む11】吉岡 平『恐竜鉄道』を読んで

さて、今回は【90年代単巻ラノベを読む】です。90年代のラノベには有名なシリーズがたくさんあるのですが、長く続くシリーズもの全巻を読むのは大変なので、有名シリーズを書いた90年代を代表する作家の単巻ものを読んでいこうというのが元々の始まりです。

以前『あうとふぉーかす』の感想を書きましたが、今回もアニメ『無責任艦長タイラー』の原作「宇宙一の無責任男」シリーズで有名な吉岡平の『恐竜鉄道』です。なお、ラノベの定義については、排除する方向ではなく、幅広く認める方向です。なので、私にとってはソノラマ文庫もラノベです。異論のある方はこの記事を無視してください。

恐竜鉄道

 

著者:吉岡平
イラスト:武半慎吾
文庫:ソノラマ文庫
出版社:朝日ソノラマ
発売日:1996/4

古生物学者の物集蒐一は、西都電鉄の誘いで長野県の上伊那郡に来ていた。そこで、彼らが掘り当てた『金鉱』の調査を依頼されたのだ。その『金鉱』とは白亜紀に繋がるタイムトンネル。西都グループは、このタイムトンネルを利用して恐竜世界に一大リゾート地を建設しようとしていたのだ。しかし、そこで人間たちを待っていたのは―。恐竜マニアの著者が贈る、SFアクション巨編。

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読んだ感想

内容は吉岡平版「ジュラシックパーク」といったところでしょうか。

長野の上伊那郡で見つけた白亜紀へつながるタイムトンネルに鉄道をひき、恐竜の住む世界にリゾート施設を建設しようとしますが、人間を襲う恐竜たちがあらわれて戦うことになってしまうという話。読む前はもっとSFっぽい話なのかと思っていましたが、どちらかというとバトル小説でした。タイムトンネルがなぜ存在するのかなんて、考えもしないのですから。

いきなりのカメラ(ライカIg)のウンチク?に若干ウンザリしますが、こだわるところは徹底的にこだわるのが吉岡流なのかもしれません。あまり本筋とは関係ない余計な描写で、このあたりは90年代のオタクっぽさなのでしょうか。恐竜の名前や鉄道車両も、マニアックで私には今ひとつわからないものがありました。

しかし最終的にSF設定や恐竜や鉄道、カメラのウンチクはどうでも良くて、描きたかったのは人vs恐竜のバトルでしょう。これがアツい。銃で撃つのは当たり前、素手で戦ったり、居合抜きで切りつけたり。

またタイトル通り? 恐竜vs鉄道の戦いも見物です。蒸気機関車と恐竜が正面からガチンコでぶつかるバトルは、バカバカしくも楽しい。ただ、マルチプルタイタンパーなる車両が出てきて恐竜相手に大活躍するのですが、これがどういったものなのか想像できなくて、なんかすごい機械があるのだなぁくらいの感想。実在するものなのか空想のものかわからなくて、このへんマニアックにしすぎなんじゃないかと(今ならすぐ調べられますので、実在のものとわかったのですが)。

面白いのは、物語すべてリゾート開発という商業主義の下で進んでいること。主人公の恐竜博士は、恐竜世界にリゾート施設を作ることに疑問を覚えつつも協力することになるのですが、最後までこの疑問を解消することは出来ず。「俺はこの世界の、破壊神かもしれない……」というセリフが印象的です。これには80年代後半~90年前半にかけての、全国的なリゾート開発への批判も含んでいるのでしょう。

最初は嫌な奴と思いつつも案外良い奴なライバルの恐竜博士、恋人となる京都弁の女性博士、無口なハンターの外国人、別れた妻との間に出来た娘などなど、キャラクターの配置も良く、娯楽小説として良く出来ていると思います。ただ、もう少し人間関係を描いても良かったと思いますが、単巻ではこれくらいでしょうか。

読書メーターのレビューでバカ小説(褒め言葉)と呼んでいる方もいるのですが、全くそのとおりで難しいことは考えずに、楽しめる小説です。

最後に1つ疑問ですが、普段恐竜の化石を見ている研究者が実在の恐竜を見た時、それが何という恐竜なのか想像できるものなのかと。今の恐竜図鑑に載っているものって、想像図であって実在のものであるわけは無くて。骨格と想像図しか知らない恐竜の名前をはたして特定出来るものだろうかと。まぁ、そんなことをいうのは野暮ですね。福井の恐竜博物館に行きたくなりました。

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