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スニーカー・ミステリ倶楽部『名探偵は、ここにいる』を読んで【ラノベ・アンソロジー】

さて、今回はスニーカー・ミステリ倶楽部のミステリ・アンソロジー第1弾、『名探偵は、ここにいる』を読んだ感想です。

ミステリ・アンソロジー1 名探偵は、ここにいる

著者:太田忠司、鯨統一郎、西澤保彦、愛川晶
イラスト:藤田新策
文庫:角川スニーカー文庫(スニーカー・ミステリ倶楽部)
出版社:角川書店
発売日:2001/11

本格ミステリといえば、なんといっても名探偵! 中学生探偵・狩野俊介が怪奇な館の謎に挑む『神影荘奇談』。あたしの相棒、究極の安楽椅子探偵の推理が冴える『Aは安楽椅子のA』。謎めいた文庫本に導かれ、少女は6年前のあの日に辿りつく──『時計じかけの小鳥』。大の納豆嫌いだった男の胃に詰まっていたものとは!?幼い根津愛も登場する『納豆殺人事件』。ミステリ入門としても楽しめる、書き下ろしアンソロジー第1弾。

読んだ感想

神影荘奇談 / 太田忠司

狩野俊介シリーズの番外編。喫茶「紅梅」にいた大学生・瀬戸祥造は、1年ほど前に田舎の村で体験した不思議な出来事が頭にこびりつき、悪夢に悩まされている。この不思議な出来事の謎を、中学生探偵・狩野俊介が鮮やかに解いてみせます。

怪奇幻想譚を真ん中において、現実的解決を見せてくれます。狩野俊介シリーズはトクマ・ノベルズ、徳間文庫、創元推理文庫で展開されていますが、この短編はどちらにも未収録です。

なお、この作品は後ちに発売された角川文庫のアンソロジー『赤に捧げる殺意』に収録されています。

Aは安楽椅子のA / 鯨統一郎

探偵事務所で働く堀アンナは、愛猫のダニエルが死をキッカケに聴力を失ってしまう。しかしその代わりに特別な能力を手に入れることに…… 首なし死体の謎をとくのは堀アンナならぬ、安楽椅子探偵!

ユーモアミステリといえばよいのでしょうか、人によってはふざけていると捉えられるかもしれない安楽椅子探偵の設定です。のちに「堀アンナの事件簿」シリーズとしてPHP文芸文庫から2作品出版されています。

この作品も後ちに発売された角川文庫のアンソロジー『赤に捧げる殺意』に収録されています。

時計じかけの小鳥 / 西澤保彦

久々に立ち寄った書店で購入した1冊の本。その中に挟まれていたメモと奥付に書き込まれた母親が書いたらしきイニシャルと日付。そこから思い出される6年前の出来事。書店店主の死亡、父と母の離婚、そのきっかけとなった学校をサボった日。6年前のあの日に、はたして何があったのか……

短いながらも読みごたえのある1篇。殺人事件のない「日常の謎」に近い内容で、6年前に起こった出来事を推理していきます。すべてが想像でしかない内容ですが、過去の出来事を見直すことで成長する姿を、少し苦味を持って描いています。

この作品も後ちに発売された角川文庫のアンソロジー『赤に捧げる殺意』にも収録されています。

納豆殺人事件 / 愛川晶

解剖した死体の胃から出てきたのは納豆。ただ、その殺された人物は大の納豆嫌いで有名だった……

根津愛シリーズの番外編で、関西人の納豆嫌いをネタにした物語。愛はまだ小学生で謎をとくのは父・信三。納豆殺人と一見ふざけているように見えて、正統派な内容です。のちに「美少女代理探偵の事件簿」シリーズの『カレーライスは知っていた』に収録されています。

まとめ

テーマが名探偵ということで、もう少し金田一少年的なものが多いのかなと思ったのですが、どれもひと捻り効いたものでした。「金田一少年的なもの」とはキャラクター性が強く、学生が殺人事件を解決するというスタイルのもので、見下した意味ではありません。

スニーカー文庫なので、もう少しキャラクターの立った探偵を用意するのかと思っていたのですが、鯨統一郎作品を除いては、わりと一般文芸作品的だったと思ったわけです。ただ、どの作品も10代向けと意識して書かかれているようで、読みやすくて楽しい作品ばかりでした。

同時期に創刊した富士見ミステリー文庫では、キャラクターミステリーを意識していたようですが、スニーカー・ミステリ倶楽部ではキャラクター性よりも、「ミステリ入門書」を意識しているように感じました。

この文庫を読み終えて、「堀アンナの事件簿」「美少女代理探偵の事件簿」それぞれのシリーズを読んでみたいと思いました。アンソロジーは次に読みたいと思う作品を探すきっかけになるので、「ミステリ入門書」のスタイルは次につながるという意味で、とても良い試みだったんじゃないかと思います。

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