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【90年代単巻ラノベを読む8】大林憲司『東北呪禁道士』を読んで

さて、本日の【90年代単巻ラノベを読む】は、大和と蝦夷の戦いを描く和風ファンタジー、大林憲司「東北呪禁道士」を読んだ感想で す。

東北呪禁道士

著者:大林憲司
イラスト:こばやしひよこ
文庫:富士見ファンタジア文庫
出版社:富士見書房
発売日:1993/04

時は延暦十二年。大和朝延と東北地方に棲む蝦夷とは長い間、戦いを続けていた。蝦夷はカムイの力を借り、大和の軍を翻弄し、戦いは膠着状態に陥る。そこで、大和朝延は対カムイの切り札として陰陽師の流れをくむ呪禁道の者たちを蝦夷征伐の一部隊として組織した。父をカムイに殺された徳紅明は仇を討つため呪禁道士隊の一員として坂上田村麿に従い、蝦夷征伐に出る。しかし、紅明は東北で蝦夷の人たちと出会い、暮らしぶりを知るにつれ、蝦夷征伐に疑問を抱くようになった。はたして紅明は疑問を抱いたまま蝦夷と戦うことができるのか?この蝦夷征伐に隠された陰謀とは何か?第三回ファンタジア長編説大賞準入選作。

読んだ感想

奈良時代(西暦700年代後半)の大和朝廷と東北の蝦夷の戦いを舞台に、呪禁道士の少年の成長を描く和風ファンタジー小説です。歴史の授業でも習う坂上田村麻呂やアテルイなど歴史上の人物に、オリジナルのキャラクターを絡ませ、歴史小説ではないバトルありのファンタジー小説に仕上げています。

延暦8年(西暦789年)の蝦夷征討で父をなくした呪禁道士の少年、徳紅明が主人公。呪禁道士は呪言と呪符により気を操り、剣などの武器で敵を倒す呪法の戦士。戦うだけでなく、気を使っての治療なども出来ます。

延暦12年暮れからの蝦夷征討に参加、蝦夷との戦いの中で傷を追うのですが、蝦夷の人に助けられることになります。蝦夷の神であるカムイや蝦夷の人々、蝦夷側の戦闘を指揮するアテルイなど、蝦夷側にも色々な立場の人がいることを知ります。そして大和側の行いが本当に正しいことなのかと迷いも。

単純な勧善懲悪モノでは無いところに、この物語の深みがあります。若干アテルイの存在が薄く感じてしまうのが残念ですが、過去の戦いにおける伏線も張り巡らされていて、史実にファンタジーをうまく混ぜ合わせた作品でした。さすが第三回ファンタジア長編説大賞準入選作といったところ。

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