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『青葉台高校映画研究会シリーズ』を読んで

さて、今回は「青葉台高校映画研究会シリーズ」を読んだ感想です。この語呂の悪い呼び名、どうにかならないものかと思うのですが、今のところこれが一般的なのでこれを使っておきます。もう少し略して「青葉台映研」シリーズとか、「羽場由香理」シリーズとか、もう少し短いほうが絶対良いのにね。

樋口 明雄(ひぐち あきお)

まず作者の樋口明雄についてです。現在では、冒険小説や山岳小説で有名な作家、というのが一般的な認識になるでしょうか。以下、双葉社にある著者プロフィールです。

1960年山口県生まれ。明治学院大学法学部卒業。雑誌記者を経て、87年『ルパン三世/戦場はフリーウエイ』でデビュー。2008年『約束の地』で、第27回日本冒険小説協会大賞と第12回大藪春彦賞をダブル受賞。『酔いどれ犬』『墓標の森』『狼は瞑らない』『光の山脈』『男たちの十字架』『武装酒場』など著書多数。

小説家としてのデビューは87年ですが、86年から90年にかけて、双葉社などでゲームブックを多数書いています。87年『ルパン三世/戦場はフリーウエイ』のあと、牧村優名義で講談社X文庫ティーンズハートから『霧の学園』『星降る街に』の2冊を出版。その後は、樋口明雄名義で著作多数。90年代には、実話怪談ブームの先駆けとなった『「超」怖い話』シリーズの編著者も務めています。

青葉台高校映画研究会シリーズ

ハイスクール重機動作戦

著者:樋口明雄
イラスト:神崎将臣
文庫:富士見ファンタジア文庫
出版社:富士見書房
発売日:1990/07

ある日、東京の四谷にある私立青葉台高校は“赤い狐”と名乗るテロリスト集団に占拠された。彼らは原爆を所有し、東京で開かれるサミットの中止を要求してきた。青葉台高校の生徒と都民を人質に取られた形になった警察は手を出すことが出来ない。テロリストが回答を要求した時間が迫って来る。
その時一人の少女が立ち上がる。父が元傭兵で現在冒険作家であり、並の米国陸軍特殊部隊員よりも高い戦闘能力を持つ女子高生・羽場由香理であった。果して彼女はテロリストを倒すことが出来るのか?
新鋭、樋口明雄が送る新感覚学園アクション。

もしも学校に、銃器を持ったテロリストグループが侵入してきたら? あとがきによると、そんな中学時代の妄想からスタートした物語とのこと。内容的には映画『ダイ・ハード』の学園版みたいなところです。米軍グリーンベレー隊員と一緒に軍事訓練を受けたこともある、羽場由香理(はねばゆかり)が銃をバンバンぶっ放して、テロリストたちをやっつけていく物語。

相手がテロリストだからと、主人公たちは人を殺すことにためらいを見せず、バッタバッタとやっつけていき、テロリスト側はボスキャラ以外人格のない、ただのモブキャラ。アクション映画を小説に落とし込む時に、感情など内面的なことを省いて、戦うことのみに全フリしたような物語です。

テロリスト側はバンバン死んでいくのに対し、主人公たちは弾に当たらない、爆発があってもなんとか被害は免れるなど、ご都合主義的なところはありますが、「そんなコマけぇことは良いんだよ」と勢いで突っ走ります。最後には生徒たちが開発した、パワードスーツが登場するなど荒唐無稽な面白さ。このあたりはアニメ版『うる星やつら』や『さすがの猿飛』を彷彿させます。

生徒vsテロリストだけでなく、警視庁特捜警部、自衛隊1等陸佐、主人公の担任なども絡んでくるのですが、主要登場人物が皆、どこかタガの外れていてクレージーというか、ハチャメチャというか。全体的にはコメディタッチですが、銃器などに対する異様なこだわりが、ややクドく感じました。

戦うこと・アクションがメインの作品ですが、映画研究会のメンバーが主役なので、8ミリ映画についての話も少しあります。今となっては8ミリフィルムカメラやPFF(ぴあフィルムフェスティバル、作中ではびあフィルムフェスティバルBFF)なんて、話は通じないかもしれませんが、この時代、PFFっていうのは自主製作映画界隈では、ひとつの権威でしたね。この辺り(オチになる部分)については現在の若い人にはややわかりづらいでしょうが、メインの話ではないので、それほど関係はないかもしれません。

ヴァンパイア特捜隊

著者:樋口明雄
イラスト:神崎将臣
文庫:富士見ファンタジア文庫
出版社:富士見書房
発売日:1990/11

死者が行方不明になる怪事件が深夜の東京に発生した。『ハイスクール重機動作戦』の次の作品をとるために遅くまで作業をしていた青葉台高校映画研究部のメンバーが事件に巻き込まれる。なんと、首筋に二本の歯形を付けて、道端に倒れこんでいた女性を三宅順が助けてしまったのだ。そのため、平凡な暮しを夢みる超過激女子高生、羽場由香理も事件に巻き込まれていく。さらに、警視庁特捜課の石崎が事件究明のために乗り出し、事件はとんでもない方向に突き進む。この事件の影にはいかなるものが潜んでいるのか?そして、由香理はいったい何発の弾丸を消費するのか?

前巻と変わって、今度は吸血鬼及びその手下相手に、女子高生が銃をバンバン撃ちまくるバイオレンスアクション。作者のやりたいことが、ストレートにでていて爽快です。前回は学校という限られた場所での撃ち合いでしたが、今回は場所を変え、相手を変え、とにかく銃を撃ちまくっている印象です。

なぜ吸血鬼を日本に持ってきたのか、その組織が結局のところ何がしたかったのか、よくわからないですが、とりあえず銃をぶっ放しておけばいいよね的な、単純明快な面白さといえばよいのでしょうか(褒めていません)。

ただ吸血鬼及びその手下とのバトルが終始ハイテンションで続いて、読んでいて最後は疲れました。最後に横田の米軍基地まで行くことになるのですが、まだ続くのかよと。前巻が250ページくらいだったのに対し、本巻は350ページくらい。物語的にバトルして逃げての繰り返しなのと、警察が絡まいで特捜刑事ひとりだけで動くのが、物語のスケールを小さくしているのかなとも思います。

何も考えずに読む分には楽しいのですが、やや物足りなさを感じる一冊でした。

最後にこの作者、コメディ部分があまり面白くなくて、それで緩急が効いていないように感じるのかも。

爆風カーニバル

著者:樋口明雄
イラスト:神崎将臣
文庫:富士見ファンタジア文庫
出版社:富士見書房
発売日:1991/05

文化祭中止命令が青葉台高校の生徒たちに下された。怒りに燃える生徒たちは映画研究会を中心に独自の文化祭を開くことを決意する。もちろん、平凡な生活を夢みる超過激女子高生・羽場由香理も問答無用で巻き込まれてしまった。生徒たちの文化祭構想は留まるところを知らず、なんと、東京全体をも巻き込む形で転がり始めた。その準備を進める中、由香理は何者かにつけられていることに気が付く。そのうえ、テロリストの不穏な影もちらついていた…。はたして、由香理をつけ狙うものとは何者か?文化祭の行方は?テロリストは何を狙っているのか!?

シリーズ最高傑作です。前2巻は銃の撃ち合いに終始していて、物語的な部分がちょっと単純だったと思うのですが、本巻では様々な要素が絡み合い物語的にもうねりがあって、最終決戦がより盛り上がります。

アメリカ大統領来日を控え、蠢く過激派テロリスト。それとは別に文化祭中止を決定した青葉台高校教師陣。それにくわえ主人公を狙う元スペツナズの女子高生が絡んできます。主人公たち映研メンバーは学外文化祭を計画し、地域や大企業を巻き込んで、盛り上がってくる中で……

ビルが爆破されたり、女子高生が拳銃で撃ちあったり、非現実的物語ではありますが、それらの要素が面白さにつながり、これこそがライトノベルの自由で素晴らしいところだと思います。

全共闘世代の生き残り、管理社会の代弁者たる存在となった学校、学外文化祭をシンボルとして生き生きと動き出す学生たち、それぞれが絡み合い物語は大きなうねりとなります。ただ最後はそれらとあまり関係のないところで、主人公ともうひとりの女子高生の東京ドームでの銃撃バトル。

大統領暗殺計画はどうなるのか? 学外文化祭は成功するのか? 物語的な盛り上がりもありつつ、銃撃戦、アクションバトルも盛り上がっていき、最後は東京ドームに穴が開きます! 前巻は最後は「まだ続くのかよ」となりましたが、本巻は最後まで飽きることなく楽しめました。

ハート・オン・ファイア

著者:樋口明雄
イラスト:神崎将臣
文庫:富士見ファンタジア文庫
出版社:富士見書房
発売日:1992/07

戦う女子高生・羽場由香理が恋をした。それも、通学に使う電車で一緒になる笑顔がさわやかな大学生がお相手なのだ。由香理はこのため普段の生活をガラリと変えて、絵に書いたような“女子高生”になってしまった。そんな彼女の変化に三宅順は気が気でない。そんな、青春を謳歌しようとしている由香理の周囲に不隠な影が忍び寄る…。そのころ由香理の父である冒険作家の羽場正は中近東で行方不明になっていた。はたして由香理に付きまとう影は何者か?羽場正の安否は?そして、フツーの女子高生しようとしている由香理はいつものように戦うことができるのか?

これが最終巻となるのですが、これまで暴れ回っていた主人公・由香理が、恋愛のため暴れ回らず、今までとは全く違った展開になってしまって残念。これが短編だったら、まだ納得できるのですが、1巻丸ごと使ってこれは……

しかも電車の中で出会った人に恋をしただけなら良いのですが、その人が好きなのか、幼馴染である同じクラス・部活の順が好きなのか、その揺れ動く描写が特になくて、何をどう悩んでいるのか全くわからず、鬱々とした雰囲気だけが続くのです。爽快さが売りの作品で、これを半分以上のページを使ってやられては、たまったものではありません。

女の子らしくなったということで、喧嘩っ早いのをやめたり、部屋をいかにもな女の子っぽくするのは良いけど、映研までやめてしまっては、今までの話の核にあったものが、すべてなくなってしまっています。せめて映画撮影で女らしく振る舞う様子を見せるくらいの展開が良かったのに。

「電車で出会った人に恋をした、いや、でも私は順のことが好きだったはず」この部分をもっと前に出せば良いのに、描かれるのが教室の席でボォっと外を見ているだけだったり、家でグダグダしているだけだったり。恋愛に関する描写がちょっと物足りないのです。

今まで由香理が暴れてた部分を前回で登場した、元スペツナズの少女が担うわけですが、こちらを前半からもっと暴れさせてほしかったですね。

冒頭の由香理の父の話も、もっと展開に関わってくるのかと思いきや、ミスリード的な使い方になってしまっているのも残念。なぜ由香理だけを殺さないとダメなのか? そもそも家ごとぶっ飛ばせばそれで終わりなのにね。

最後にへりを使ったバトルがあるのですが、これも取ってつけたような展開で、無理があるし……

文句ばかり描きましたが、前巻が最高の出来だったため、さぁ次はどうなるんだと期待したて読んだら、この落差はつらい。前巻が出版されてから間が空いて、作者も心変わりしたのだろうか。爽快感のある物語が読みたかったのに……

シリーズ通しての感想

全4巻のうち、面白かったのが1巻と3巻。1巻はコンパクトに纏まっているし、爽快感を徹底的に追求したような、B級アクション映画のノリで突っ走る文句無しの面白さ。3巻はシリーズ最高傑作と言ってもよく、物語的にもバトルアクション的にも楽しめました。

2巻は1巻の面白さをさらに拡大するべく、舞台を変え、敵に変化を与えたりとしているのですが、逆に冗長になってしまった感じです。面白いのは確かなのですが、もう少しコンパクトに纏めたら良かったかもと思いました。4巻は全然楽しめませんでした。

ということで、〈青葉台高校映画研究会〉シリーズ全4作。作者がライトノベルを離れて、一般文芸で活躍していること、電子書籍にもなっておらず入手困難となっていることから、隠れた名作、的な扱いとなっています。

この作品の第1巻が、出版された1990年といえば、富士見ファンタジア文庫で『スレイヤーズ!』が出版され、大人気となっていた年です。その前から人気を博していた、『ロードス島戦記』や『風の大陸』とあわせて、異世界ファンタジーの大ブームの時代。そんな中、学園を舞台にしたこちらの作品は、ブームの影に隠れてしまったのかと。もったいないですね。

読んでみて思ったのは、第4巻に不満が残るものの、1~3巻は間違いなく面白い、ということ。ライトノベル史ではあまり語られることのない作品ですが、もし手に入るなら、読んでみることをオススメします。

最後に、この時代(80年代後半~90年代前半)の学園ものといえば、やはりアニメ『うる星やつら』の影響が大きいのかもと思えます。この作品では映研部長・竹林一平がどうしても、『うる星やつら』のメガネに思えてしまいますね。

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