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広野真嗣『消された信仰~「最後のかくれキリシタン」-長崎・生月島の人々~』を読んで【読書メモ】

今回は2017年の第24回小学館ノンフィクション大賞受賞作を読んだ感想です。

2016年の自転車日本一周に、天草地方や長崎では、たくさんの教会や隠れキリシタンにまつわる博物館を訪れました。

以前から隠れキリシタンには、興味はありましたし、旅中での学びも多々あったと思ってました。でも、この本を読んで全然わかっていなかったと痛感しました。

長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産

2018年7月、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」は、世界文化遺産に登録されました。

構成資産は長崎県の大浦天主堂、外海の出津集落、外海の大野集落、原城跡、黒島の集落、平戸島の聖地と集落、野崎島の集落跡、頭ヶ島の集落、久賀島の集落、奈留島の江上集落、熊本県天草市の﨑津集落です。

これらの構成資産に、今もかくれキリシタン信仰が残る、生月島は含まれておりません。

それはなぜなのか?この本はそれを解き明かします。

ノンフィクション作品ですが、まるでミステリー小説のような感覚で読むことができます。

「潜伏キリシタン」と「カクレキリシタン」

全然知らなかったのですが、「潜伏キリシタン」とすべてカタカナ表記の「カクレキリシタン」には、違いがあります。

わたくしは、どちらも「隠れキリシタン」を表す言葉と思っていました。

「潜伏キリシタン」は江戸期の「隠れキリシタン」。「カクレキリシタン」は明治期以降、禁教令が解かれたあとも、カトリックに復帰しなかった人々のことを指します。

これは隠れキリシタン研究の第一人者である、宮崎賢太郎氏の提唱です。

ようは「カクレキリシタン」は「隠れてもいないし、キリシタンでもない」から。

これはキリスト教のカトリック信者でもある、宮崎氏のカトリック側からの視線があるようです。

こういったカトリック側からの視線が、「かくれキリシタン信仰」を難しい位置づけにしているようです。

消された信仰

著者は何度も生月島を訪れ、儀式に参加したり、島の人々に取材することにより、かくれキリシタン信仰について調べ上げていきます。

禁教期に隠れて信仰されたことにより、土着の信仰と結びつき、変容したといわれるかくれキリシタン信仰。

はたして変容したのか?それとも伝わったときのまま「凍結保存」されたのか?

タイトルの「消された信仰」には、たくさんの意味が込められています。

世界遺産登録のために作成された、2014年と2017年、2種類のパンフレット。

かくれキリシタン信仰について「今なお大切に守られています」とされていた記述が、「ほぼ消滅している」という正反対の表現に変わっているのだ。

生月島のかくれキリシタン信仰は、誰によって消されたのか?なぜ消されたのか?

それを調べることで、信仰・宗教とは何か?伝統を守るとはどういうことなのか?という問題までいきつきます。

世界遺産登録は、短期的には長崎の観光政策に恩恵を生み出すかもしれない。だが、この枠組で考えるほどに、大切な部分が抜け落ちてしまうように思える。それは家族を通じて静かに手渡されてきた「祈りのかたち」という、無形で、言葉では捉えきれない遺産である。

この世界遺産登録は、本当に良かったのか、そんな事を考えてしまいました。

まとめ

隠れキリシタンについて、全然理解できていなかったというのが、この本を読んで1番に感じたことです。

隠れキリシタンの話は、大浦天主堂における「信徒発見」、その後の「浦上4番崩れ」を経て、キリスト教禁制の高札撤去で終わりではなかったのです。

そもそも禁教令廃止以降、かくれキリシタン信仰を続けている人がいるとは、思っていませんでした。

自転車日本一周中に、生月島には訪れました。訪れた道の駅の近くにある博物館「島の館」は、510円をケチって訪れませんでした。

【196日目】本土最西端、そして、生月島へ【2016/11/06】
さて、本日はまず本土最西端の神崎鼻を目指します。ネットカフェにて朝5時半起床。昨日は漫画にハマってしまい、寝たのが午前2時半、少々寝不足気味です。それでも寝坊もせず、きっちりと時間オーバーすることなく、店を出ます。6時半ころの出発です。本日

なんて馬鹿なことをしたのだろうと、今さらながら後悔しております。

長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」を訪れようと考えている人は、この本を読んでほしいです。うわべだけを見るのではなく、文化の成り立ちや継承など、問題をもってみることができるようになるかと。

そのうえで、生月島にも立ち寄って欲しいなぁと思ったのでした。

もう一度しっかりと、かくれキリシタンについて勉強した上で、長崎や天草に行きたい。

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