2023年に読んだ本を、読書メーターのまとめ機能を使って記録しておきます。
2023年の読書メーター
読んだ本の数:153
読んだページ数:42441
呪殺島の殺人 (新潮文庫)の感想
読了日:01月01日 著者:萩原 麻里
密室殺人でクローズドサークルで呪われた一族と、ライトな本格ミステリ民俗学風味。呪術や呪殺はスパイス程度で、内容的にはしっかりとしたミステリと感じた。序章の会話文の読みにくさ、第1章冒頭の手紙の「彼」が誰を指すのか、語りが一人称といったところから、ミスリードを誘っているんだろうなと思いながら読む。結果は思っていたより捻りが効いていたかな。斬新さはないけど、手堅くまとまっていた印象。ただ〇〇が死んだのを知っていたらしい弁護士やジャーナリストは、彼に最初に会った時に気が付かなかったのだろうか?そこが疑問。
スターライト・だんでぃ (集英社文庫 165-A)の感想
読了日:01月01日 著者:火浦 功
すちゃらかコメディスペオペ。良く言えば軽やか、悪くいえば内容が薄くノリだけで突っ走っている感じ。出版された84年というと、ソノラマ文庫では菊池・夢枕が人気でスペオペだとハイスピード・ジェシー登場の頃。どれもそれほど軽くはない。その中でこの軽さというのは、時代の一歩先をいっていたのかもしれないと、今読んで思う。新井素子作品ともまた違った軽さで、フジテレビ「軽チャー」的時代の軽さの反映と言えばよいのか。80年代後半~90年代序盤の「ライト」ノベルの直接的な原型は、このあたりにあったのかもしれない。
スターライト・こねくしょん (集英社文庫 165-B)の感想
読了日:01月03日 著者:火浦 功
すちゃらかドタバタコメディSF風味。前作はスペオペ風味だったが、今回は地球が舞台のドタバタ。結局、ボギー&ジギーとビランデル一味のドタバタに終始していて、物語自体の盛り上がりもなく終わってしまった感じ。イマイチ、面白く感じないのは、ひねくれた感じの主役コンビに共感できないからか。今回、敵役にラム・リーという新キャラが投入されているが、これもイマイチ活きていないし。出版当時はノリが笑えたのかもしれないが、やっぱり時代が立つと内容がないので面白さは感じられない。
スターライト・ぱにっく! (集英社文庫―コバルトシリーズ)の感想
読了日:01月03日 著者:火浦 功
歴史改変をネタにした、すちゃらかドタバタコメディSF風味。作者は軽い読み物だから、これくらいテキトーに書いておけばOKというつもりなのだろうか。そのように受け取れるテキトーな内容に、読んでいて腹が立った。火浦作品が好きになれないのは、笑いを言い訳やごまかしに使っているからだと、この本を読んで確信した。描写を省くなど手を抜くために使う、ごまかすための笑いだよね。あとがきではいつも原稿が遅いだの、カンヅメになっているだのと、すべて言い訳なのである。真摯な態度がかっこ悪いと思っている時代の産物とも言えるかも。
幽霊は行方不明―Dear My Ghost (角川スニーカー文庫)の感想
読了日:01月06日 著者:矢崎 存美
占いによって白骨死体を発見し、幽霊に聞き込みして事件を解決するという、反則気味の斬新なミステリだった。誰が殺したかというより、殺された人物の背景を描く物語で、親子の愛情がしっかり描かれており、事件の結末にちょっとしんみり。そのうえで最後にちょっとした笑いを持ってきて、読後感がいい。残念なのは、主人公の幼馴染の幽霊が、どういうキッカケでいるのか、全く描かれていないこと。最初から居て当然のように描かれているのが、若干違和感を感じた。あと、会話文がちょっと分かりづらいかな。
ダミーフェイス (角川スニーカー文庫)の感想
読了日:01月07日 著者:映島 巡
火事の中から助けた幼児はすでに死んでいた。殺したのは誰か、というミステリが大きな流れ。一旦事件が解決したと見せかけてからの、伝奇小説的展開はちょっと蛇足の感がある。スニーカー文庫ということで、ただのミステリで終わらせるのを避けたのか。そんな超展開より、いじめ、シングルマザー、ネグレクト、幼児虐待あたりの問題にもう少し突っ込んでほしかったかな。それにしても、柊子のアルビノ設定は何だったんだろう。あと、主人公が嘘をついて状況が悪くなっていく序盤の展開が嫌い。読み手としてはなんでこんな嘘をつくのか共感できない。
助けて!ワトソンくん―コスプレ探偵花梨〈1〉 (富士見ミステリー文庫)の感想
読了日:01月08日 著者:じょうもん 弥生
初期富士ミスに多々あった〇〇探偵の1つ。取ってつけたようなコスプレ設定が、変装の言い換えレベルで、あまり活かされていないのが悲しい。物語は過去のいじめに対する復讐劇で、それなりに楽しめたが、途中で犯人は絞られてきて、ある程度想像がつくのに必死にミスリードさせようとしている展開がちょっと残念。色々とよくわからないところもあるのだが、特に花梨の母親の設定がちょっと疑問で、なぜこんな設定にしたのだろう。で、タイトルのワトソンくんの存在が1番のミステリーのような気がする。
負けるな!ワトソンくん―コスプレ探偵花梨〈2〉 (富士見ミステリー文庫)の感想
読了日:01月09日 著者:じょうもん 弥生
鎌倉大仏の手のひらに死体が!となかなかインパクトのある殺人事件が発生。前作に比べると、人間関係も複雑となり読み応えはあった。ただ、犯人探しは良いとして、殺害方法などには全く触れられていないのが残念。大仏の手のひらに死体をどうやって乗せたのだろう?また中学生の変装で警察官を名乗ったりするのは、やや無理があるような。今回やっとワトソン君の正体が少し明かされているが、前作同様その存在があまり活きていないね。
匣庭の偶殺魔 (角川スニーカー文庫)の感想
読了日:01月13日 著者:北乃坂 柾雪
凝った構成で、新しいことをやってやろうという意気込みを感じる作品だった。デビュー作として力が入っていたのだろう。ただ素直に楽しめたかというとそういうわけではなく、読みにくいし最後の最後はどういうこと?という感じ。スニーカー文庫なら、もう少し軽い読み味のものが良かったかな。印象に残ったのが物語より、奥入瀬〈おいらせ〉正親町〈おおぎまち〉御炊〈みかしぎ〉十七夜〈かのう〉など人名の読みにくさだった。普通に読める漢字にルビいらないから、人名にもっとしつこくルビふるか、登場人物一覧(読み付き)つけて欲しかったな。
名探偵は、ここにいる―ミステリ・アンソロジー〈1〉の感想
読了日:01月15日 著者:太田 忠司,鯨 統一郎,西澤 保彦,愛川 晶
スニーカー・ミステリ倶楽部のアンソロジー第1弾。豪華作家を連れてきて、すべて書き下ろしと力が入っている。10代向けと意識して各作家は書いているのだろう、読みやすくて楽しい作品ばかり。太田作品は怪奇幻想譚を真ん中に置き、現実的解決を見せてくれる。鯨作品はまさかの安楽椅子探偵!西澤作品は日常の謎に近い内容で、1番読み応えがあった。愛川作品は納豆殺人と一見ふざけているように見えて、正統派な内容。テーマが名探偵ということで、もう少し金田一少年的なものが多いのかなと思ったが、どれも一捻り効いたものだった。
殺人鬼の放課後―ミステリ・アンソロジー〈2〉 (角川スニーカー文庫)の感想
読了日:01月17日 著者:恩田 陸,新津 きよみ,小林 泰三,乙一
小林泰三・乙一作品は、ミステリというよりホラーもしくは残酷小説で読んでいて気持ち悪くなった。「殺人鬼」がテーマということで、ある程度残酷話は想像はできたけど、こういう小説はできれば読みたくない。恩田作品は『麦の海に沈む果実』の番外編とのことだが、元を知らなくても楽しめた。むしろそちらも読んでみたいなと思う。学園の設定ですでに面白い。新津きよみ作品は幽霊話かと思いきや、見事騙された。こういう作品こそがスニーカー文庫らしくて良いと思う。ただ、恩田・新津両作品は「殺人鬼」がテーマと考えると、ちょっと弱いかなと。
密室レシピ―ミステリ・アンソロジー〈3〉 (角川スニーカー文庫)の感想
読了日:01月19日 著者:折原 一,柴田 よしき,霞 流一,泡坂 妻夫
今回もなかなかの豪華メンツ。折原・泡坂作品は正統派、霞・柴田作品はユーモアよりといったところ。折原作品は黒星警部シリーズの番外編で、館で棺で呪いでといった如何にもな道具立てが楽しい。霞作品を読むは初めて。バカミスの第1人者ということで、こんなのあり得るのか?と笑ってしまった。柴田作品は猫探偵の番外編で、設定だけで楽しい。未来の宇宙ステーションが舞台で、状況が分かりづらいが、猫の正太郎が可愛いからOK。最後に泡坂妻夫のような超ベテランがなぜ、このアンソロジーに参加したのかが1番のミステリかも。
夏合宿 (角川ホラー文庫)の感想
読了日:01月20日 著者:瀬川 ことび
クスっと笑えるユーモアホラー。ことび作品は少年(学生)主人公の場合と若い女性主人公の場合があるが、女性主人公のほうがとぼけた感じが強くて、より面白く感じる。「本と~」の美夏は自身の存在自体が怖いわけだが、本人は全く意識していないところが愉快。「ドライ~」は恐怖体験を怖がらない主人公もだが、アドバイスする司書のすっとぼけ具合も良い。収録された5篇とも恐怖が存在するのにユーモアでそれをくるんでいるので、読後感がどれも良いのがいいね。恐怖や残酷さが期待されるホラー文庫からの出版がもったいない。
殺意の時間割―ミステリ・アンソロジー〈4〉 (角川スニーカー文庫)の感想
読了日:01月21日 著者:赤川 次郎,鯨 統一郎,近藤 史恵,西澤 保彦,はやみね かおる
アリバイをテーマにしたアンソロジー。赤川次郎「命の恩人」は、わりと大人な内容でスニーカー向け? って感じがする。「Bは爆弾のB」は堀アンナ第2弾。耳が聴こえないという設定が足を引っ張っている気がする。「水仙の季節」は双子のアリバイモノ。オチは想像できるがちょっとひねりがあって、入門編としては良い。「アリバイ~」はアリバイトリックを使っただけの物語ではなく、アリバイをめぐる物語になっていて読み応えもあり面白い。「天狗と宿題、幼なじみ」はトリックに説明されていない部分があり、推理小説として欠陥品ではないかな。
血文字パズル―ミステリ・アンソロジー〈5〉 (角川スニーカー文庫)の感想
読了日:01月23日 著者:有栖川 有栖,麻耶 雄嵩,太田 忠司,若竹 七海
スニーカー・ミステリ倶楽部最後の作品。豪華メンバーは相変わらずで、今作はハズレ無しと思う。「砕けた叫び」はムンクの叫び人形が、アレに繋がるのがすごい。正統派。「八神翁の遺産」はデュパン鮎子のキャラが肝で、この設定は面白い。奈緒がもっと活躍するところが見たい。「氷山の一角」はメルカトル鮎のキャラが良くて、良い意味でラノベっぽく感じた。「みたびのサマータイム」はちょっと苦い青春小説って感じで、謎解き以外の部分でも楽しめた。
道―MEN 北海道を喰いに来た乙女 (ダッシュエックス文庫)の感想
読了日:01月26日 著者:アサウラ
日本から独立した北海道を舞台にした、ローカルグルメx異能バトル。北海道で独自進化した能力を持つミュータント、X-MENならぬ道-MENが千葉や群馬の工作員と戦うのがメインなんだけど、東京から潜入した女子が北海道のローカルグルメを食べ歩く物語でもある。北海道が独立したゆえに、日本国内でも各県の勢力争いが起こっているという設定も面白い。全体的にコメディタッチだが、アクションシーンはわりとハード。道-MENの能力もめちゃめちゃ強いわけでなく、限定された能力をうまく使うところに面白みがあった。
黄色い花の紅 (スーパーダッシュ文庫)の感想
読了日:01月27日 著者:アサウラ
銃器所持規制が緩和された日本を舞台にしたガンアクション物語。2部構成で1部では極道組長の娘を警護する女性の、ラノベらしからぬハードボイルド風物語。2部ではその警護されていた少女が銃を取って戦う物語で、14歳の少女が銃を持ち、ほぼ不死身の男と戦うライトノベルらしい展開。350pとボリュームがあるが、面白くて一気に読めた。ただ、中盤少女が銃の訓練・銃の選択をするくだりが長くて、ちょっと間延びした感じもする。とにかく銃絡みの描写が細かくて、著者の銃への愛・こだわりは感じるが、これを面白いと思えるかどうかかな。
バニラ A sweet partner (スーパーダッシュ文庫)の感想
読了日:01月28日 著者:アサウラ
表紙を見ると百合モノ恋愛小説かと思ってしまうが、中身はハードなガンアクション。とあるキッカケで銃・ライフルを手に入れた女子高生2人が、連続狙撃殺人を起こし逃亡、最終的に学園に立てこもり籠城戦を行うというもの。読んでいてアメリカン・ニューシネマを思い出してしまい、最後はハチの巣になっちゃうのかなと思った。結局女子2人には未来のある終わり方で、良かったともいえるが、殺した人数を考えれば、壮絶なバッドエンドの方が良かったかも。アクションモノなのに、読後感は恋愛小説のようだった。対比的な存在の刑事コンビも良い。
怪奇編集部『トワイライト』 (集英社オレンジ文庫)の感想
読了日:01月29日 著者:瀬川 貴次
瀬川ことび作品にハマったのだが作品数が少ないため、貴次名義にやってきた。帯に「怖いけど怖くない」「まったりオカルト小説」とあり、ことび作品に近いかもと思い購入。読んでみて大正解。求めていた通り、実際は怖いホラー現象が起こっているのに、クスっと笑えるようなユーモアでまとめるユーモアホラーだった。ことび作品では短編集に魅力的作品が揃っていたが、こちらは連作短編の形で、主人公の生い立ちなど大きな謎も残しつつ、個々の話で楽しませてくれる。ただの心霊モノでなく、民俗学的要素があるのも良い。次巻にも楽しみ。
怪奇編集部『トワイライト』 2 (集英社オレンジ文庫)の感想
読了日:01月29日 著者:瀬川 貴次
今回収録されている2篇のうち、「戦慄~」は面白いが、「激闘~」の方は、ちょっとイマイチだったな。「戦慄~」は、ことび名義の作品集「厄落とし」にある「戦慄の湯けむり旅情」と似通った舞台設定ながら、オチはこちらのほうがシンプルでより笑える。「激闘~」はちょっとダラダラと話が続く感じで、切れ味が良くない。主人公男巫女駿だけでなく、編集部の男二人もちょっと特殊な感じなので、この辺りもっと突っ込んでほしかったかな。次巻が最終巻のようなので、どこまで話が膨らむのか、それとも短編集的になるのか、興味深い。
リコリス・リコイル Ordinary days (電撃文庫)の感想
読了日:01月31日 著者:アサウラ
アニメは途中離脱したけど、こちらは楽しく読めた。喫茶店リコリコを舞台に、訪れる人の問題を解決する連作短編集。基本設定はアニメ見てないとわからないので、アニメを見た人向け。内容的にはさすがアサウラ氏で、ガンアクションと食事シーンが冴え渡っているなと。強烈なのは第5話「ご注文は?」でなかなか読んでいて辛かった。最後に救いはあるのだけど、必殺仕事人の最後の殺害シーンがないような感じで、爽快感がないのが残念。やっぱりゾンビの話がオチはアレだけど、読んでいて楽しかったかな。
双星妖美伝 (光文社文庫)の感想
読了日:02月03日 著者:竹河 聖
いにしえより転生を繰り返している、姫とそれを守る5人の鬼を巡る物語。日本の先住民族である彼らは、時の為政者により呪いをかけられており、5鬼たちがその使命を思い出した時、様々な呪いが姿を変えて襲ってくることに。今巻では双子として生まれた姫がその記憶を取り戻すまでが描かれ、壮大な物語の序章といったところ。エロ描写もあって妖しげな雰囲気もあるが、伝奇ロマンと言うにはちょっとあっさり目な気がする。アクション的な部分は楽しいが、もう少し伝奇的な部分で、因縁めいたものがあればなと思う。
名古屋駅西 喫茶ユトリロ (ハルキ文庫)の感想
読了日:02月04日 著者:太田 忠司
喫茶店を舞台に、訪れる人達が持ち込む謎を解く日常系ミステリ。といっても謎解きよりも、喫茶店に集まる人達の人情モノに近いかも。主人公は喫茶店店主夫婦の孫の大学生。彼が動き回って情報を集める係。ちょっと変わっているのは、謎を解く安楽椅子型探偵的人物が2人いること。喫茶店常連の紳士さん、主人公の大学の先輩である麻衣。どちらも話を聞いただけで謎を解いてしまうが、それを簡単に教えず、主人公に行動させるところにこの物語の面白さがあった。名古屋めしも多数登場し、グルメガイド的な意味でも楽しめる。気軽に読めて楽しい作品。
7 (角川ホラー文庫)の感想
読了日:02月09日 著者:瀬川 ことび
伝奇ホラーというほどホラーではなく、伝奇ロマンというほどロマンはない、ちょっとあっさり目の伝奇モノ。発掘された有柄細形銅剣をめぐる物語で、北斗七星に七星剣、飛座石船にチブサン古墳などなどが関わってきて、こっち系が好きな人間にはなかなかに楽しい。楊貴妃はヤマトタケルの転生という俗信があるなんて初めて知ったな。残念だったのは、もうひとりの主人公ともいえる柳亜希子の背景があまり語られなかったこと。もう少し活躍してほしかったな。雰囲気としては、諸星大二郎の漫画「妖怪ハンター」に似た感じかな。
幽霊は身元不明―Dear My Ghost〈2〉 (角川スニーカー文庫)の感想
読了日:02月12日 著者:矢崎 存美
幽霊が見える少年とその守護霊が謎を解くシリーズ第2弾。別人の記憶を持つ記憶喪失らしい男、それに取り付く女の幽霊。この幽霊の正体は如何に、といった物語は面白い。ただ、主人公の姉の存在がノイズでしかなくて、物語を混乱させるのを著者は楽しんでいるのかもしれないが、読んでいてイライラした。また中盤まで情報を隠し過ぎで、引き込まれにくく、何度か読む手が止まった。その分後半は一気に楽しめたのだけど、全体的になんかスッキリせずモヤモヤが残る。幽霊が人を突き飛ばすのはできるのかな。前作では通過するってなかったかな?
アザゼルの鎖 (角川スニーカー文庫)の感想
読了日:02月13日 著者:梅津 裕一
面白い。聖書の偽典エノク書の記述を模倣した猟奇殺人事件を追う刑事モノ。猟奇殺人を扱っているが、それほど残酷描写はないので一安心。非常に重い内容で、虐待と猟奇殺人の連鎖が描かれている。最後の最後まで迫力があり一気に読み終えたが、終章の悲しさよ。ただちょっと叙述トリック的な構成で、人によってはわかりにくく感じるのかも。埼玉県警特異殺人専従班・浅田直樹シリーズっていうのがあっても良さそうと思うが、続きがないということはこれはスニーカー文庫読者には受けなかったということなのだろう。わりと大人向けだと思う。
水の牢獄 (角川スニーカー文庫)の感想
読了日:02月16日 著者:咲田 哲宏
嵐の中のペンションで合宿中の高校生たちが、水の化け物(水潜)に襲われるサスペンスホラー。人の体に潜り込む水潜の設定は面白い。しかし、この化け物を生み出した犯人の動機が全くわからないのが、最大の欠点か。過去の出来事を描きミスリードをしておき、犯人は意外な人!ということをやりたかったのだろう。ただ、なぜこの舞台で水潜が発生し、彼らを襲わなければならないかがよくわからない。また終盤オーナー夫人が饒舌に語るところも違和感(これもミスリードか?)。あとは建物内の位置関係が分かりづらいので、図面が欲しかったな。
夏休みは命がけ! (角川スニーカー文庫)の感想
読了日:02月19日 著者:とみなが 貴和
ミステリ倶楽部版で読了。当初スニーカー文庫で出す予定がスニーカー・ミステリ倶楽部での出版になったとのこと。著者自身もミステリらしくないといっており、実際謎解き要素はない。仲違いした幼なじみ同士のガンバトルにヤクザ・中国マフィアが絡むサスペンス・アクションだが、あまり楽しめなかったのはなぜか。問題のあった中華料理店に都合よく逃げ込むとか、ご都合主義的なのは良いとしても、高校生が偶然手に入れた銃を簡単に扱うのはどうかと。高校生の心情を扱う部分とリアリティラインにズレがあるので、違和感を感じてしまうのだろう。
みすてりあるキャラねっと (角川スニーカー文庫)の感想
読了日:02月21日 著者:清涼院 流水
オンライン仮想空間での殺人事件。現実世界が舞台でないだけに、とんでもトリックになるのか?と思っていたら、意外とアナログなトリックだった。ただキャラを殺したところで、主人公のように復活してくるから、殺す意味は無いような気もする。また、そもそも犯人は何を目的に1人で2キャラを操っていたのか。それに20歳以下対象のゲームに大人がログインする動機もわからない。現実の犯人にアクセスできないから、そのあたりが分からずじまいで、モヤモヤが残るだけだった。
プロジェクトA子 (角川文庫―スニーカー文庫)の感想
読了日:02月21日 著者:越沼 初美
巨大隕石落下から16年後とか、隕石からの放射線で異常筋力がついたとか、SF的な設定があるものの、ただ力が強い・高くジャンプできるくらいだけに終始していて、ドタバタコメディ的な内容の学園百合小説になっている。イチャイチャしたり嫉妬したりの、普通に学園モノ的な内容で、「うる星やつら」をレズビアンでちょいエロに描いた感じといえばよいのか。元は『くりいむレモン』の1本として企画がスタートしたとのことなので、物語を読ませるというより、ほんのりとしたエロを読ませる感じで終わっている。
怪奇編集部 『トワイライト』 3 (集英社オレンジ文庫)の感想
読了日:02月25日 著者:瀬川 貴次
短編2編と中編1編の最終巻はちょっとシリアス。ユーモアホラーを期待してたので、ちょっと残念。薔薇王院と蛇神の両先生はコメディっぽいキャラで良いんだけど。エピローグは面白かったが、短編2編はオチとかにもう少しユーモア感が欲しかったな。前巻の流れから最後は恋愛話になるのは予想ができたが、ちょっと消化不良だし、久津媛の扱いがひどい。駿や千夏の恋愛なしで、編集部メインのユーモアホラーがもっと読みたかったな。瀬川ことび作品では女性を主役にするととぼけた感じで面白かったので、麻衣子が主人公の話が読みたい。
幽霊は生死不明―Dear My Ghost〈3〉 (角川スニーカー文庫)の感想
読了日:02月28日 著者:矢崎 存美
幽霊が見える少年とその守護霊が謎を解くシリーズ第3弾。殺人を犯した少年の背後にいる幽霊は誰か?という謎を解くとともに、犯行の背景を紐解く物語。事件の背景はわりとシリアスで、前2作より重い印象。ただ、事件の背景を知っている人が情報を隠した状態で、話を引っ張るので、モヤモヤするだけで面白くない。前2巻もこんな感じで、謎を解いていくような面白さがないというか。主人公の守護霊が離れていく展開も唐突で、取ってつけた感じ。どうやらこの著者とは相性が悪いようで、前2作と同じく非常に読みにくいし、あまり面白いと思えない。
アクアリウムの夜 (角川スニーカー文庫)の感想
読了日:03月01日 著者:稲生 平太郎
面白い。あることをキッカケに狂気に囚われていく、2人の少年と1人の少女を描く青春幻想小説。見世物小屋、こっくりさん、霊界ラジオ、金星人といった道具立てから、70年代オカルト趣味的だなと思うが、1990年に単行本で出版されたのを文庫化したものとのこと。どういう経緯でこれがスニーカー文庫しかもミステリ倶楽部に収められたのか興味深い。青春モノな前半、伝奇小説的な中盤、幻想小説的な後半と3種類の味わいがあった。主人公を見守る立場の大人の女性2人が、ともに狂気を持っていた中盤の展開に痺れた。
戦士の掟は炎で刻め―ミュートスノート戦記 (富士見ファンタジア文庫―ミュートスノート戦記)
読了日:03月08日 著者:麻生 俊平
お葬式 (角川ホラー文庫)
読了日:03月10日 著者:瀬川 ことび
わたしのお人形 怪奇短篇集 (集英社オレンジ文庫)
読了日:03月13日 著者:瀬川 貴次
小説!!!ルパン三世 (1982年) (集英社文庫―コバルトシリーズ)の感想
読了日:03月20日 著者:辻真先
ルパン三世のノベライズは、かなりの数が出版されている。その中でこの作品は1番最初のノベライズ。辻真先らしく読者に著者が語りかけたり、声優や音楽担当大野雄二の名を出したり、小説の中だけの物語に終わらないユーモアがあり、アニメでルパン三世を知った中高生でも楽しめるようになっていると思う。表紙はアニメ版を使用しているが、本文イラストはモンキー・パンチというのも良い。内容的にはアニメにも登場する白乾児を軸に持ってきて、ミステリ的な構成。アニメ的な面白さと小説ならではの面白さを持った幸せなノベライズといえるかも。
幻夢戦記 レダ―ファンタスティック・アドベンチャー・アニメ (講談社X文庫)の感想
読了日:03月24日 著者:菊地 秀行
アニメは未見の状態で読了。異世界に召喚されて、世界征服を狙う巨悪を倒すという物語の展開自体はシンプルなんだけど、最後にきちんとオチをつけてあり楽しめた。若干、風景やメカ、敵などの描写が少なくて分かりづらいところもあったが、これはアニメありきなので仕方がないのかも。菊地作品としてはコクがないと思うけど、いのまたむつみのイラストを活かすという意味では良いのかもしれない。それにしてもいのまたむつみが描く女の子は可愛いし、たくさん収められたイラストが良い。日本のビキニアーマーものの元祖と言ってよいのかな。
魔天楼 薬師寺涼子の怪奇事件簿 (講談社文庫)
読了日:03月28日 著者:田中 芳樹
超少女REIKO (コバルト文庫)
読了日:03月28日 著者:大河原 孝夫,吉田 恵子
週末同じテント、先輩が近すぎて今夜も寝れない。 (GA文庫)の感想
読了日:03月31日 著者:蒼機純
キャンプモノとして興味を持ち読んでみた。基本ラブコメで、キャンプに関しては、参考文献『ゆるキャン』といったところ。読んでいて浮かんだ言葉が「インスタント」。4月に入学、4月後半には図書委員として活躍をしていたり、カフェのバイト始めて1週間後にラテアートを担当していたり、先輩と初めてのデイキャンプ(3時間くらい)で、キャンプにハマったとか、なにもかもすごくお手軽だ。キャンプが楽しいじゃなくて、女の子と一緒にいるのが楽しいだけの物語かな。先輩のバイク、アクセルペダル式に改造?してあるのがすごい!(嫌味)
あんただけ死なない (ハルキ・ホラー文庫)の感想
読了日:04月01日 著者:森 奈津子
面白くて一気読み。憎んだ相手が何故か死んでしまう女とそれに近づく男の出自を巡る伝奇ホラー。半村良につながるような伝奇SFっぽさを感じた。しかし、そこはさすがの森奈津子。エロスと笑いを織り交ぜて楽しませてくれる。一応、ホラーの括りだけど、それほど恐怖といった感じはない。性に奔放な女性・小雪のあっけらかんとした明るさに救われた気がする。あとがきも面白い。
ジャナ研の憂鬱な事件簿 (ガガガ文庫)の感想
読了日:04月02日 著者:酒井田 寛太郎
学校を舞台にした日常の謎系ミステリ。多くの方が指摘しているように、米澤穂信作品の影響を感じる。タイトルに「憂鬱な事件簿」とあるように、ちょっと苦味のある作品で、読み終えてスッキリとならず。気になったのがメインとなる登場人物4人、みんな高スペックというところ。これは好みの問題。また最終話に見られるように、力である程度解決できるのは面白くもあるが、都合が良すぎる感もある。格闘技を習っている人が、簡単に力を行使するのは疑問だし、ミュージシャンが大事なギターを振り回すのも、ちょっと変かな。
ノンセクシュアル (ハルキ・ホラー文庫)の感想
読了日:04月06日 著者:森 奈津子
桶川ストーカー殺人事件が99年で、この作品の初出は98年だから、まだストーカーという言葉が一般的でない頃の作品か。ノンセクシュアルやバイセクシュアルと、性的マイノリティーの話になっているが、そのあたりはあまり関係ないかも。絵里花というサイコパス令嬢の物語だ。絵里花の詠子に対する執着や手段を選ばない様は恐ろしい。しかし、詠子や夕子の飄々というか、とぼけているというか、心の内や態度が面白い。このあたりはさすが森奈津子といった感じ。秀美と徹が可哀想だな。
人食いバラ―少女少説傑作選カラサワ・コレクション〈1〉 (少女小説傑作選カラサワ・コレクション 1)
読了日:04月07日 著者:西条 八十
星降る街に (講談社X文庫―ティーンズハート)の感想
読了日:04月12日 著者:牧村 優
牧村優は、冒険小説などで有名な樋口明雄の別名義。あとがきにて、この作品は眉村卓「なぞの転校生」のオマージュであり、ゼナ・ヘンダーソン「ピープル・シリーズ」からも構想を得ていると述べられている。少女を主人公にし、ロマンチックに仕上げたジュブナイルSF。今から読むとシンプルなストーリーで、恋愛要素も可愛らしいもの。冒頭にはブラッドベリ「霧笛」からの引用があったり、SFファンならちょっとニヤッとするかも。
あの扉を越えて (講談社X文庫 183-2 ティーンズハート)の感想
読了日:04月14日 著者:飯田 雪子
早見裕司「ジュニアの系譜」から。少女同士の友情を中心としたファンタジー。他者への思いが束縛となることを、異次元に閉じ込めるという形で発露させ、それを乗り越えることで成長する姿を描いている。時系列がバラバラに描かれているため、若干分かりづらかったかな。あと、喧嘩の内容を描かずに話を引っ張るので、そのあたりがもやもやした。
忘れないで―FORGET ME NOT (講談社X文庫―ティーンズハート)の感想
読了日:04月14日 著者:飯田 雪子
嵯峨景子『少女小説を知るための100冊』から。少女同士の友愛を描いた佳作と紹介されていて、百合っぽい青春ものかと思っていたら、ジュブナイルSF風味の作品だった。少女の感情や心理、友人との関係性が丁寧に描かれている。ただ、過去の事故のことを隠して話が進むので、『あの扉を越えて』同様、モヤモヤしながら読んだ。
STEP OUT (コバルト文庫)の感想
読了日:04月19日 著者:榎木 洋子
帯にSF、あらすじにスペースファンタジーとあるが、人間が宇宙に進出した時代という舞台設定だけで、小難しいSFではなく、宇宙飛行士養成学校を舞台にした青春群像小説で、生徒間の諍いあり、友情ありのストレートな青春モノ。読後感は爽やかだ。章ごとに主人公を変え、それぞれに共感できる要素を見せつつ、物語を進めていくところが良いと思う。ただ登場人物みんなエリートで、変なキャラがいないのは好ましいけど、その分物語が若干平板かな。
危険な魅惑のアロマ―カフェ「白銀館」物語〈1〉 (富士見ミステリー文庫)の感想
読了日:04月24日 著者:年見 悟
明治期を舞台にカフェで働く少女を主人公にした青春ミステリ。殺人事件を巡る話ではあるが、珈琲に取り憑かれた人間と幻の珈琲豆を巡る話でもある。少女が将来の目標に悩みつつ、事件の解決とともに成長する姿も描かれていて、青春ミステリとして予想以上に楽しめた。シーボルトやその娘いねが〈カイール・ベイ〉に関わる話は本当なのか、創作なのかわからないが、この幻の珈琲豆にまつわる話も面白い。ラストが意外。
カシオペアは北天に輝く―ちけっと・2・らいど! (富士見ミステリー文庫)の感想
読了日:04月26日 著者:西奥 隆起
富士ミスにトラベルミステリーはこれだけなのかも。犯人探し自体は楽しめだが、キャラに魅力がないので全体としてみると、もったいないという感じ。主人公もその友人も女性刑事も、みんなウザいタイプ。主人公は謎の上から目線で、こんなキャラに共感は覚えない。友人キャラは格別にウザい存在だが、著者はこういうのが面白いと思っているのだろう。またヒロインにも、読んでいて惹きつけられる魅力が全くない。富士ミスが目指したのが、キャラクターミステリーだとしたら、この作品は残念ながら失敗だと思う。ホテルの鍵返せよ。
牙王城の殺劇―フォート探偵団ファイル〈1〉 (富士見ミステリー文庫)の感想
読了日:04月29日 著者:霞 流一
超常現象を探究する学校非公認サークル・フォート探偵団が行方不明のワニの探索を依頼され、殺人事件に巻きこまれていくミステリ。バカミスキングの作品ということで、舞台となる牙王城の設定など馬鹿っぽいんだけど、しっかりと本格。超常現象に殺人事件を絡めて、その両方の謎を解いていくスタイルは面白い。馬鹿っぽい設定の上に随所にギャグが盛り込まれているのだが、最後はビターでユーモアミステリとはまた違った味わいがあって良い。このメンバーでの続きが読みたくなる。最後の三太の発言は聞きたくなかったかな。ちょっと残酷すぎる。
あの空に届いた約束―フォルクローロの記憶 (富士見ミステリー文庫)の感想
読了日:05月03日 著者:伊藤 馨太郎
著者いわく妖怪民俗学ミステリー。座敷わらしが町中で見かけられるようになり、それを調査に訪れた民俗学者の孫が、過去の未解決事件を模倣したような殺人事件に巻き込まれる物語。柳田國男「遠野物語」と宮沢賢治「インドラの網」を引用して、目指すところは面白そうなのだが、出来としては残念なもの。文章に若干おかしな所があるし、事件全体にもおかしなことが多々ある。わりかし重要な存在の人間の正体も語られず、続刊出す気満々だが、続きが出なかったというのも残念。
夏の雪に溶けたパスワード―注文の多いパズル (富士見ミステリー文庫)の感想
読了日:05月04日 著者:雅 孝司
ミステリ好きの4人が人工ゲレンデで20人が消えた事件の謎を解く物語。殺人事件は起こらず、日常の謎系に近いタイプの作品。作中にパズル(今で言うナゾトキ)が散りばめられていて、変化球的な作品なんだけど、意外と面白い。メーリングリストに仮想知性リュパン21が入り込んできて、ナゾトキを連発してくる流れは、グループLINEにAIが割り込んでくると考えたら現在でも通用しそう。メインとなる謎はテレビ局や芸能事務所が絡む事件で、中高生向けに興味のもたせ方も良いと思う。リュパン21の正体はわからないまま、続編もなく残念。
先輩と私 (徳間文庫)の感想
読了日:05月06日 著者:森 奈津子
オナニズムとレズビアニズム、女性しか登場しない官能小説。序盤は楽しめたが、中盤の瑠璃が話の中心になってから、サディスティックなプレイが増えて楽しめなくなった。ルームランナーを使ったプレイやプレイしながらの口述筆記など、笑えるところもあるが、加虐的なのは嫌だな。先輩が光枝の作品を評した「エロティックなんだけど、品があるんだ。官能シーンも、明るくてかわいい。いい感じのユーモアもある。作者が好きで書いているのが伝わってくる」がそのまま森奈津子作品に当てはまるんじゃないか。作中作「カレン姫の秘密の冒険」読みたい。
スーパー乙女大戦 (徳間文庫)の感想
読了日:05月13日 著者:森奈津子
怪獣が女性型有機ロボットを襲うAV版ウルトラファイトと寄宿舎レズビアンものを合体させたエロコメSF。オ○二ーと○ックスにより性の快感エネルギーを有機ロボットに送りパワーを与えるという設定だけでも面白い。7人の女子による群像劇で、様々な組み合わせで楽しませてくれるが、ちょっとボリュームが有りすぎで、読み終えてお腹いっぱい。終わり方が意外と爽やかで良かった。あえて不満を言うなら、神とリリスの正体はもう少しひねりがあっても良かったかな。怪獣や必殺技に名前をつけるオタクな冬子がいいね。
天使のベースボール (ファミ通文庫)の感想
読了日:05月14日 著者:野村 美月
色々と詰め込みすぎの散漫な内容で、あまり楽しめず。1番の疑問は監督として就任した先生が、なぜ野球のメンバーに加わらなければならないのか、よくわからないところ。普通ならメンバー集めからのところを、このような形にしたのを独創的と考えるか、ありえないと思うかがこの作品の受け止め方を決めるだろう。ラノベにリアリティをそれほど求めないが、この部分だけはもっと説得力がほしいかな。あと学生側の主役であろう、太宰千草というキャラが魅力的に思えず。ラノベで野球ものはやはり難しいか?
天使のベースボール〈2〉 (ファミ通文庫)の感想
読了日:05月16日 著者:野村 美月
野球モノとして期待していたのだが、全くの期待外れ(まぁ、前巻から想像できたが)。それにしても強姦しようとしてきた教え子と仲直りしたいというヒロイン先生が理解できない。お嬢様ならトラウマになりそうなものなのに。その強姦しようとした生徒、先生を遭難させようとしたり、欲望のまま生きている感じで、こういうキャラのどこに共感できるのか。嫌なやつとしか思えない。ヤりたい盛りの高校生ということで、リアルなのかもしれないがこういうのを読みたいのではなく、野球に打ち込む少年たちの物語が読みたかったなと。
ゆるコワ! ~無敵のJKが心霊スポットに凸しまくる~ (角川文庫)の感想
読了日:05月18日 著者:谷尾 銀
サブタイトル通りの内容の、それほど怖くないライトなホラー。女子高生2人が心霊スポットを訪れ、事件・事故に巻き込まれたりしつつ、場所にまつわる謎を解いていく。無敵のJKとあるように、女子高生コンビがメンタル的にも、能力的にも優れているので、その活躍を楽しむタイプの物語。スカッとして楽しめるけど、あっさり気味でちょっと物足りなさが残る。巻数を重ねていけば、もっと面白くなっていくだろうね。あと、無敵のJKコンビより、ちょこっと出てくる本物の霊能者・九尾天全がいい味出していて面白いかな。
赤城山卓球場に歌声は響く (ファミ通文庫 223)の感想
読了日:05月18日 著者:野村 美月
女子大生がわちゃわちゃしつつ、何の害も為していない卓球魔人と戦う物語。里見八犬伝的展開はご都合主義的だし、物語全体も何だかよくわからないけど、なんだか楽しい。ラノベで女子大生が主役というのも珍しいかも。ファミ通文庫は桜庭一樹と野村美月を世に送りだしたということを評価したい。
那須高原卓球場純情えれじー (ファミ通文庫)の感想
読了日:05月22日 著者:野村 美月
前作に続き、よくわからんがなんか楽しい作品。普通に読めば、おかしなとこだらけなんだけど、何故か憎めないというか。今回は那須高原の巫女と鬼になった少年と生贄の少女を中心とした物語。RHSVOのメンバーが多すぎで、全員を登場させるから展開の足を引っ張っている気もするが、全員で合唱することに意味があるんだろうね。そもそもなぜ卓球?っていうのが1番にあって、合唱メインの物語にしたほうがしっくり来ると思うんだけど。
世界でいちばん透きとおった物語 (新潮文庫 す 31-2)の感想
読了日:05月22日 著者:杉井 光
話題になっていたので、買ってみた。読み終えてまず、スゲェと思った。物語の面白さより、仕掛けを形にする労力に驚いた。話題になって当然か。父であるミステリ作家の遺稿を探して関係者を訪れ、父の姿をあぶり出しつつ、最後の作品に込めた父のメッセージを探す物語。物語と仕掛けのリンクも素晴らしく楽しめた。それにしてもクズ作家の付き合った女性、みんないい人だね。というか登場する女性、みんな魅力的だわ(特に霧子さん)。
あだたら卓球場決闘ラブソング (ファミ通文庫)の感想
読了日:05月25日 著者:野村 美月
これは怪作。基本ストーリーは主人公ヒロインの恋愛なんだけど、恋した相手が魔王(になりたい男)で、最後には巨大メカに乗り込んだ魔王と巨大化したヒロインが、湖上で卓球対決。さらにヒロインはドナドナの合唱で応援されたり、バビル2世ネタがぶっこまれたりと、一体何を読まされているのかわからなくなってくるが、最後はなんだか感動してしまう終わり方。面白いのかと言われると微妙かもしれないが、こういう作品が存在していることがラノベの面白さか。
神宮の森卓球場でサヨナラ (ファミ通文庫)の感想
読了日:05月25日 著者:野村 美月
出会いがあれば別れもあるということで、荒唐無稽だったシリーズも、最終作はしんみりとしてちょっと感動的。第3作「あだたら卓球場」の内容がぶっ飛んでいただけに、その落差も楽しめた。著者の実体験が反映されているということで、学生時代やその時の友人への思いがよく伝わってくるなと。良き大学生時代を過ごしたんでしょうね。全体的におかしな(褒め言葉)作品だったけど、終始ほのぼのとした暖かさがあって楽しめた。
下読み男子と投稿女子 -優しい空が見た、内気な海の話。 (ファミ通文庫)
読了日:05月25日 著者:野村 美月
コスプレ温泉 (ソノラマ文庫)の感想
読了日:05月28日 著者:吉岡 平
会社を首になってコスプレにハマる前半、実家の温泉宿を立て直す後半とくっきり分かれる。アニメ、コスブレ、カメラ、麻雀、サバゲーなどオタクネタは満載だが、物語としての盛り上がりに欠けるかな。特に後半はそれほど斬新なアイデアがなくて、実家を立て直せるのかなと?あらすじに三年半にもわたる綿密な取材のもとに描かれたとあったので、濃密なものを期待したのだが、やや期待ハズレ。
コミケ殺人事件 (ハルキ文庫)の感想
読了日:06月01日 著者:小森 健太朗
これは面白い。作中内に同人誌として、SFアニメ「ルナティック・ドリーム」の複数の結末を読ませると同時に、それを描いた人たちが夏のコミケで殺人事件に巻き込まれて行く展開。まず同人誌の内容が内容も文体もバラエティに富んでいて面白い。「ファンダメンタリズム~」が1番好きかな。そしてコミケで起きた殺人事件を巡るどんでん返し。終盤の「手記」から「独白」に至る展開に痺れた。あとがきによると舞台は91年の夏コミをモデルにしているとのこと。ビッグサイト以前の晴海時代コミケの雰囲気が味わえる。
嘘つきは妹にしておく (MF文庫J)の感想
読了日:06月01日 著者:清水 マリコ
散らばってしまった物語を取り戻すために、本の妖精と共に失われた物語を持つ人を探す物語。その人と心の交流を持つことによって、物語内の特定の人物のセリフが復活し、本の白紙のページが埋まっていく。説明の難しい話で、面白いのだが、わかったようなわからないような不思議な読後感。説明不足なところがあったり、見せ場見せ場で繋いでいくので、端折っているように感じたりもするが、著者が劇団系の人だからか、物語の流れより場面々々の会話劇を中心に組み立てているようで、演劇的な面白さを感じた。
幻夢 目覚める (富士見ファンタジア文庫―ロスト・ユニバース)の感想
読了日:06月02日 著者:神坂 一
クラッシャージョウやハイスピード・ジェシーの流れを受け継ぐスペースオペラ。SF的というよりも活劇的で、前記2作よりも良い意味で、ライトノベルらしい軽さ、軽やかさがあるかな。人探しからの組織の争いに巻き込まれる流れはありがちだが、テンポよく読ませてくれる。後半の宇宙戦艦同士の戦闘が読みどころか。ロストシップを巡る物語が主軸となって展開していくのだろう。主役3人、過去になにかありそうで、続きも楽しみ。
妖夢 蠢く (富士見ファンタジア文庫―ロスト・ユニバース)の感想
読了日:06月06日 著者:神坂 一
今巻はスペオペの定番、宇宙海賊ネタ。ロストシップの三つ巴の戦いが描かれる。明るい調子ながら、わりと残酷な結末を迎える地上での戦いは、前巻に続き今巻でも。キャナルもミリィも過去に何かあるらしいというのは、今巻でも匂わせつつもまだ謎のまま。やはりシリーズ2作目というのは難しいようで、前作の流れを受けつつ、大きな流れにはまだ至らずといった感じ。次巻を楽しみにする。
ドラゴン殺し (電撃文庫)の感想
読了日:06月07日 著者:中村 うさぎ,鳥海 永行,荒俣 宏,山本 弘,小沢 章友
ドラゴン殺しをテーマにしたアンソロジー。正統派な英雄譚ばかりではなく、ちょっとひねった作品が多い。落ちこぼれの子ドラゴンをコミカルに描く中村うさぎ『ア・リトル・ドラゴン』。アフリカの奥地を舞台に探検家と少年少女の冒険活劇、山本弘『密林の巨龍』。囚人たちが暮らす僻地での、砂金と龍を巡る正統派の英雄譚、鳥海永行『黄金龍の息吹』。平安期を舞台に比叡山から逃れてきた少年の幻想怪奇譚、小沢章友『魂魄龍』。マルコポーロが西洋と東洋をつなぎ龍を救う寓話、荒俣宏『ヴェネツィアの龍使い』。『魂魄龍』が1番楽しめた。
ファイナルカウントダウン (電撃文庫)
読了日:06月07日 著者:きみや しげる
生徒会の一存―碧陽学園生徒会議事録〈1〉 (富士見ファンタジア文庫)
読了日:06月09日 著者:葵 せきな
凶夢 ざわめく (富士見ファンタジア文庫―ロスト・ユニバース)の感想
読了日:06月13日 著者:神坂 一
今回の依頼は、とある企業の宇宙実験工場への潜入捜査。ケインとミリィがあまり活躍せず、ただドタバタするばかりの前半が若干退屈。中盤以降の大量のコピーロストシップvsソードブレイカーvsゴルンノヴァの展開が面白い。最終的にソードブレイカーvsゴルンノヴァの戦いになるが、圧倒的な攻撃力を持つゴルンノヴァを攻略できるかハラハラする展開。3巻まで読んで感じるのは、宇宙戦艦同士の戦いはいずれも面白いが、宇宙船を離れたときの、キャラの活躍が今一つといったところか。
悪夢生まれる (富士見ファンタジア文庫―ロスト・ユニバース)の感想
読了日:06月13日 著者:神坂 一
今回は前半から宇宙戦艦同士の戦いが描かれ、一気に引き込まれる。一度はラグド・メゼギスに敗れ逃亡するものの、そこからの逆襲が見もの。ただ、キャナルがケインたちに説明した部分が明かされず、ケインたちの覚悟が分かりにくくて、やや不満。いよいよ次巻が最終巻ということで、全ては次巻で解き明かされるのだろう。それにしても、ラストの苦々しさよ。
サイレント・レイク (富士見文庫)の感想
読了日:06月14日 著者:倉田 悠子
帯にエロチックノベルとあるように官能小説なんだけど、内容的にはSFや幻想小説に近い感じ。山道で迷い込んだ先に地図にない湖があり、そこには双子の美少女が。果たしてこの湖や美少女は何なのか?そこには過去にこの地で起きた事件・事故があり、そしてそれは未来へと影響していく。官能小説としては、主人公の義姉への仄かな憧れがまずあり、湖畔の美少女との肉欲の生活を経て、最終的に義姉と結ばれる展開。下品なエロさはなく、話としても面白い。古き良きジュブナイルSFの香りといえばよいか。
時空(とき)のロマンサー―マイナス43 (富士見文庫)の感想
読了日:06月15日 著者:吉岡 平
昭和63年から昭和20年にタイムスリップした女子高生と戦闘機「鍾馗」パイロットのラブストーリー。だが、著者は太平洋戦争における、戦闘機vsB29を描きたかったんだろう。話の中心は戦闘機のうんちく・戦闘シーンで、戦記物といえるかも。SF的な部分はちょっと雑で、タイムパラドックスを巡るハラハラする面白さはない。また美少女文庫だけど、官能描写はほぼない(口絵にはそれっぽいのがあるが)。あとがきによると、NHK少年ドラマシリーズを意識していたとのことで、ジュブナイルSF的な作品。
かげろう闘魔変 (集英社スーパーファンタジー文庫)の感想
読了日:06月17日 著者:鳴海 丈
18世紀後半、江戸時代安永年間、女装した女たらしの景四郎と眼鏡少女さやかが、妖怪退治する超時代活劇小説。平賀源内が超兵器を提供するというお約束もあり。コメディというより特撮アニメネタやダジャレの応酬で、読んでいてちょっと疲れる。当時としては軽いノリで面白かったのだろうが、今となってはくだらないだけだ。92年の時点で女装男子とメガネ女子コンビというのは斬新だったと思うが、現在読むにはさすがに厳しい内容か。
「若者の読書離れ」というウソ: 中高生はどのくらい、どんな本を読んでいるのか (1030;1030) (平凡社新書 1030)
読了日:06月19日 著者:飯田 一史
コミケ中止命令! (富士見ファンタジア文庫)の感想
読了日:06月21日 著者:南田 操
某国の王太子が日本来訪時に公務を抜け出し、アニメ関連のお店やスタジオを楽しみ、最後はコミケでひと悶着という、「ローマの休日」の男女入れ替えパターン。日本側で王太子と仲良くなるのが、同人活動をする女子高生。全体的に少女漫画チックな内容だが、80年代末の同人界隈、ファンダムの熱気が伝わってくる。当時の漫画・アニメネタ満載で、この時代を通過している人間にとっては懐かしくもあり、楽しくもあるが、今の若い人にとっては、ここに書かれているネタのほとんどはよくわからないだろう。
生徒会の二心 碧陽学園生徒会議事録2 (富士見ファンタジア文庫 166-8 )
読了日:06月26日 著者:葵 せきな
闇 終わるとき―ロスト・ユニバース〈5〉 (富士見ファンタジア文庫)の感想
読了日:06月29日 著者:神坂 一
いよいよデュグラディグドゥとの最終決戦。工場衛星「ヘカトンケイル」の奥に潜むデュグラディグドゥおよびスターゲイザーをいかに攻略するのか?が見どころ。ケイン、ミリィ、キャナルそれぞれの因縁も明かされ無事完結だが、もうちょっとそれぞれの因縁話をガッツリと読ませて欲しかったかな。ヘカトンケイルに潜入するレイルも大活躍ではあるが、このくだりがちょっと冗長かな。全5巻通して軽妙な語り口でありながら、物語自体はハードな面もあり楽しめた。
雑居時代〈1〉(Saeko’s early collection〈volume.7〉)の感想
読了日:06月30日 著者:氷室 冴子
NHK北海道の氷室冴子を扱った番組を見て、興味を持って手に取ってみた。女子高生2人と浪人生男子1人の同居ものコメディ。主人公は美人で成績優秀で開校以来の才媛と呼ばれるが実は2重人格的強烈な性格で、彼女を中心としたドタバタ。同居することになる漫画家の卵・家弓の人物造形は、交流の深かった漫画家・藤田和子の影響かなと考えてみたり。初出が82年ということで、時代を感じさせる所も多いが、あの時代を経験している人間としては、非常に楽しめた。
雑居時代〈2〉 (Saeko’s early collection〈volume.8〉)の感想
読了日:07月02日 著者:氷室 冴子
この作品の面白さは、容姿端麗・頭脳明晰な主人公倉橋数子が何をやっても最終的にうまくいかないところにあるんだろうなと。特に愛する血の繋がらない叔父・譲の妻・清香には前巻に続き手玉に取られていて可笑しみがある。このあたりに主人公が嫌味にならず、愛すべきキャラクターと感じる要因があるのだろう。残念ながら同居解消となる所まで描かれず、中途半端に終っている。叶わないとわかっていながら、続きが読みたいと思う。
高3で免許を取った。可愛くない後輩と夏旅するハメになった。 (GA文庫)の感想
読了日:07月04日 著者:裕時悠示
旅ラノベと思って読んだのだが、プロローグといったところで、旅よりも2人の出会い・接近を描くラブコメ。良く言えばこの後の展開が楽しみ。でも(今のところ)続き出ていないことから、今巻だけではことさら面白いといったわけではない。おっさん的には主人公の乗る車が何なのか?(15年くらい前の黄色の右ハンドルのイタリア車、フィアット500かな)が気になるところだが、最近の若者は車に興味がないのか、そのあたりに触れた感想がないのが興味深い。
同い年の妹と、二人一人旅 (MF文庫J)の感想
読了日:07月05日 著者:三月みどり
旅ラノベとして読んだ。義理の兄妹になる過程がずさんで、なぜ北海道の老舗旅館の女将と東京のシェフが結婚して、東京で民宿を始めるのか、話の本筋でない部分で?が発生。老舗旅館の女将が簡単に旅館を捨てるのか?と思う。ただ、それは物語には関係がなくて、義兄妹の旅に意味があるのだろう。主人公が一人旅に拘る理由が「母親との思い出」で、兄妹とはいえ女の子との旅に目覚めるということは、親離れの一種、旅を通しての成長の記録と考えれば納得。訪れるのが日光、鎌倉、函館と一般受けしやすいところをきちんと押さえているのが良い。
ひとり旅の神様 (メディアワークス文庫)の感想
読了日:07月08日 著者:五十嵐 雄策
旅ラノベとして読んだ。中高生向けレーベルのラブコメと違い、こちらは女性の自立・成長を描いている。旅先が鎌倉、金沢、江ノ島、京都といかにも女性が好きそうな場所をチョイスしていて、ガイドブック的な役割も。旅先では食べ物が美味しい!で終わらず、その地の人物と関わることで、主人公に成長を促している部分が面白い。このあたりは中高生向けのものと違い、読み応えがあるかな。ただ、京都の旅程はちょっと厳しすぎだ。京都を1日で楽しもうというのは無理である。
美少女とぶらり旅 (ファンタジア文庫)の感想
読了日:07月09日 著者:青季 ふゆ
旅ラノベとして読んだ。一応ラブコメだが、内容はもうちょっとハード。タイトルからは想像できない、自殺希望者と家出人の、家族からの逃避行。2人の関係性だけに注目すればただのラブコメだが、脇役として登場する、ある種奇矯な人物たちの存在まで考えれば、もっと深い内容を含んでいる。旅ラノベを何冊か読んだ中で、1番充実した内容で楽しめた。旅先での内容は観光ガイド的な意味ではそれほど面白くないが、そこは目的ではない。「旅はリフレッシュにはなったが、もっと生きたいと思うほどの思考にならなかった」的なセリフが深いね。
宇宙人の村へようこそ 四之村農業高校探偵部は見た! (電撃文庫)の感想
読了日:07月14日 著者:松屋大好
奇書ラノベと聞いて。帯には”怪作が登場”とあり、たしかにこれは怪作、奇書といっていいかも。「八ツ墓村」に触発されたとあとがきにあり。因習の残る岐阜の山奥の村で起こる、SF・怪奇・ホラーな出来事の数々を描く連作短編。語り口はミステリで、ちょっとグロテスクな所も多い。各話めちゃくちゃ面白いのだが、全体を通してみると投げっぱなしの設定が多く収拾されていないので不満が残る。この不満を解消するには、続きを書いてもらうしかないのだが、もう望めないのだろう。「ハートマークと平等人間」が、切なさもあって一番良かった。
(P[ん]1-17)猫とわたしの七日間 (ポプラ文庫ピュアフル)の感想
読了日:07月16日 著者:秋山 浩二,大山 淳子,小松 エメル,水生 大海,村山 早紀,若竹 七海
若竹七海以外は初読み作家。思っていたより、猫の存在がトリッキーなものが多くて、ちょっと意外だったかな。青春ミステリーアンソロジーと銘打たれているが、正統派な謎解きミステリではなく、ファンタジックといった意味でのミステリーといったところか。若竹作品は流石の出来と思う。「まねき猫狂想曲」が一番楽しめた。
幽霊には微笑を、生者には花束を (ファミ通文庫)の感想
読了日:07月17日 著者:飛田 甲
幽霊が現れ、自身はどうやら殺されたらしいというところから始まる、青春ラブミステリー。主人公はオカルト懐疑主義でちょっと理屈っぽく、読みはじめの頃はややうんざりするが、読み続けていくとこの思考にも慣れてくる。幽霊や未来視といったものが登場しオカルト的物語と思っていたのだが、最終的にはSF的というか、ロジカルな物語であった。あとがきによると、著者は機械系エンジニアとのことで納得する。良作であると思うが、ただ1点、主人公が学内では有名な少女のことを全く知らないというのは、疑問が残る。
夏祭りに妖狐は踊れ (ファミ通文庫)の感想
読了日:07月18日 著者:飛田 甲
『幽霊には微笑を、生者には花束を』の続編。不幸の手紙、現れる狐面の幽霊、地域の夏祭りの由来など、民俗学的要素を取り入れつつ、前作にもあった「未来視」の要素を更に進めた青春ミステリー作品。前作もであるが、今作もSF的に感じる。タイムパラドックスものといえるのかも。前作ではただの脇役だった主人公の友人が、今回は話の中心となり、前作よりもキャラ的な面でも面白くなっている。前作とセットでかなり面白い作品だが、著者はこれ以降、作品を発表していないのが残念。
晴れた日は謎を追って がまくら市事件 (創元推理文庫)の感想
読了日:07月30日 著者:伊坂 幸太郎,大山 誠一郎,伯方 雪日,福田 栄一,道尾 秀介
不可能犯罪が年間平均15件発生する、蝦蟇倉市を舞台にした、アンソロジー短編集。ミステリでシェアードワールドって珍しいなと思い手に取る。道尾秀介「弓投げ~」はラストに疑問。後の物語が引き継ぐのかなと思ったらそのままで。伊坂幸太郎「浜田青年~」はちょっと不思議な感じで面白い。大山誠一郎「不可能犯罪係~」は、なぜか読むのに手こずる。福田栄一「大黒天」は、今巻の中で一番好き。伯方雪日「Gカップ・フェイント」は、バカミスっぽい面白さ。本格っぽい作品よりも、伊坂・福田作品のような、変化球的な作品が面白かったな。
街角で謎が待っている がまくら市事件 (創元推理文庫)の感想
読了日:07月30日 著者:秋月 涼介,北山 猛邦,越谷 オサム,桜坂 洋,村崎 友,米澤 穂信
1作目に比べると、ちょっとダークな感じの物語が多い。でも、こちらの方が好きかな。北山猛邦「さくら炎上」は、女子高生の無軌道さに、切なさ、儚さを感じる作品。こういうのいいよね。桜坂洋「毒入り~」は、タイトル通り有名作品のオマージュ。理屈っぽい面白さはあるけど、好きではない。村崎友「密室の本」はさわやかな青春ミステリと思いきや、意外なラストで驚き。越谷オサム「観客席~」も、青春ミステリかと思いきや、びっくりするくらいダークな物語で面白い。秋月涼介「消えた~」も最後でひっくり返すパターンで、意外なラスト。
謎の館へようこそ 白 新本格30周年記念アンソロジー (講談社タイガ)の感想
読了日:08月02日 著者:東川 篤哉,一 肇,古野 まほろ,青崎 有吾,周木 律,澤村 伊智
館ものミステリアンソロジー。新本格という定義はよくわからないが、どれも楽しめた。一肇作品がラノベ読みとしては、一番しっくり来て面白いと思う。キャラが中心になっているからか。謎解きとしては、やはり多くの人が挙げている周木律『煙突館の実験的殺人』が面白い。デスゲーム的でありつつ、しっかりとミステリでオチも良くて。澤村作品はちょっとミステリアスな雰囲気というか、ホラー風味もあり。東川・青崎作品は「んなあほな」的ではあるが、これはこれで面白い。唯一、古野作品のみ、オチが良く分からなかった。音楽用語がわからない。
謎の館へようこそ 黒 新本格30周年記念アンソロジー (講談社タイガ)の感想
読了日:08月05日 著者:恩田 陸,はやみね かおる,高田 崇史,綾崎 隼,白井 智之,井上 真偽
館ものミステリアンソロジー。思っていた館ものとちょっと違っていたけど、1作品以外は楽しめた。ただ、はやみね・恩田・高田作品はシリーズの番外編で、この1作だけで満足できるものではなかったかな。QEDシリーズは好き。綾崎隼作品は、SF要素ありの青春ものかと思ったら、最後そうきますかと驚かされる。苦味があって良い。井上真偽作品はホラーテイストで、こちらも最後は驚かされる。綾崎・井上、両作家とも初読みだが、他の作品も読みたくなった。アンソロジーの楽しみは、こういった知らない作家との出会いだよね。
ひとり旅の神様2 (メディアワークス文庫)の感想
読了日:08月05日 著者:五十嵐 雄策
仕事に悩んだり疲れたりしている編集者・結子が猫神様ニャン太と旅する物語第2弾。旅先での出会い・縁を通して、成長する姿が描かれている。今回はニャン太の存在が神様でなくて、ほぼ猫と化しているがこれはこれで楽しい。チャオチュールを要求する神様(笑)。訪れるのは箱根、宇治・伏見、出雲と女性に人気の定番スポットで、ガイドブック的にも楽しめる。残念ながら、続刊は今のところ無し。
鍵のかかった部屋 5つの密室 (新潮文庫nex)の感想
読了日:08月06日 著者:似鳥 鶏,友井 羊,彩瀬 まる,芦沢 央,島田 荘司
使う密室トリックを予め決めたミステリアンソロジー。本来なら、どんなトリックが使われたのか?を目的に読むのがミステリだと思うが、トリックをどこに使うのかを楽しむ作品と言えるのかな。5作品それぞれの使い方で、どれも楽しめた。友井作品が1番のお気に入り。彩瀬作品はトリックの使い所が、物語に重要ではないという意味で反則だが、こちらも面白い。読み応えがあったということで、島田作品は流石だなと思う。芦沢作品は正統派な殺人を隠すための使い方を、ああいう形で落とすとは驚き。似鳥作品はトップバッターで損をしているかな。
ラスト・マジック (新潮文庫―ファンタジーノベル・シリーズ)の感想
読了日:08月08日 著者:村上 哲哉
野球ラノベの前史的位置付けで読んだ。新潮文庫だけどファンタジーノベルシリーズという、今のNEXと似たようなもの。オーナーで監督の死去により、孫娘の女子高生・由貴がプロ球団の監督になって、身売りをさせないためにペナント優勝を目指す物語。万年最下位チームが一丸となって優勝を目指すベタな物語ともいえるが、野球に関する部分は堅実で、破天荒な面白さ(魔球とか)はないが、88・89年の近鉄と西武の優勝争いを思いださせるペナントレースの面白さを味あわせてくれる。
コンビネーション (ソノラマ文庫)の感想
読了日:08月08日 著者:谷山 由紀
野球ラノベの前史的位置付けで読んだが、これは本格的な野球小説だね。水島新司「野球狂の詩」を思い出す。弱小プロ球団を舞台に、選手の思いや葛藤を描く連作短編。無名の高校から素材を期待されドラフト入団し、高卒3年目でブレイク、4年目にはレギュラーとなる名倉を物語の中心において、各話の主人公が名倉と自分を対比させることで、自分を奮い立たせたり、自身の才能のなさを嘆いたりするのを描いている。プロ野球選手の心情を丁寧に描いていて、これは面白い。
若草野球部狂想曲 サブマリンガール (電撃文庫)の感想
読了日:08月10日 著者:一色 銀河
これが元祖野球ラノベといって良いでしょうね。物語は能力のある選手が強豪高校から弱小高校に移り、強豪高校を倒すという王道。キチンとした野球の知識を活かして、アンダースローの女子選手やいわゆる魔球を描いていて、野球モノとしてしっかり楽しめた。ヒロインの1人が主人公を粉砕バットでボコボコにするというのがあるのだが、このあたりがギャグ漫画のノリで、いかにもラノベという感じがする。野球モノはどうしても登場人物が多くなるのだけれど、主人公側監督いれて11人、しっかりとそれぞれに個性をもたせて描けているところも良いね。
若草野球部狂想曲(2) クイーン・オブ・クイーンズ (電撃文庫)の感想
読了日:08月11日 著者:一色 銀河
若草野球部、今巻の対戦相手は光児の幼馴染が在籍し、全国制覇した女子高硬式野球部。前巻で指を負傷した光児はスタメン落ち、速球派ピッチャー六甲道は不参加、さらに光児の幼馴染を出して、文月と三角関係っぽくしてメンタルを削るなど、若草野球部の戦力を削りハンデを付けている。前巻で高いレベルの戦いを見せたので、今巻では残念ながらレベルを落として接戦にせざるをえなくなったということか。野球部分は前巻に続き面白いが、ラブコメ要素的なものはあまり好きになれない。文月がもっとまともに投げて接戦になるのなら良いのだが、(続
若草野球部狂想曲(3)スプリング・ステップ (電撃文庫)の感想
読了日:08月15日 著者:一色 銀河
今巻が最終巻ということで、ちょっと詰め込んだ印象。合宿先での若狭常陽高校との戦いを描いているが、ポイントは2つ。強豪神戸学園を秋季大会で破るもセンバツ出場とならず、トラウマを抱えた投手・大志との若草野球部としての対決、そしてちょっとしたきっかけにより衝突した亜希と光児との対決。亜希と光児が別れて戦う展開が悲しく、ストレートに若草vs若狭常陽の戦いが読みたかった。残念なのは神戸学園を破った若狭常陽のことも、剛腕投手大志のことも、若草の面々が知らないという展開。また、大志のトラウマのキッカケとなる試合を(続
藤井寺さんと平野くん 熱海のこと (ガガガ文庫)の感想
読了日:08月15日 著者:樺 薫
坂口安吾「投手殺人事件」「不連続殺人事件」から着想を得た作品で、ガガガ文庫初期の跳訳シリーズのひとつ。野球ラノベの流れで読んだが、野球にあまり関係のないミステリだった。第1章の冒頭、藤井寺球場にまつわるウンチクに野球モノとして期待したのだが… 「投手殺人事件」を過去に起こった出来事として、被害者の孫世代の人達が集まり、アレヤコレヤと推理合戦する内容。投手殺人事件を読んでいないので、元の作品との距離感はわからず。著者が何をやりたかったのかよくわからないが、それなりに楽しく読めた。ただ、下品かな。
○×△べーす (1)ねっとりぐちゃぐちゃセルロイド (ファミ通文庫)の感想
読了日:08月19日 著者:月本一
序盤の人の話を聞かない男のくだらないギャグが延々続くのに何度も読むのをやめようと思ったが、そこをクリアすれば徐々に面白くなり、最後はそれなりに読める野球ラノベだった。とある理由で野球をやめた少年を中心に、廃部寸前の野球部を立て直し地区の強豪校と戦うスポーツ物の王道展開。ただ、この”とある理由”を隠し続けて話を進めるのが、私は嫌いだ。この作品では最終的に敵になるライバルがそれに関わっているので、登場が遅くなり存在感が薄くなってしまっている。せっかくの双子設定も活きておらず、このあたりもったいないと思う。
クレイジーカンガルーの夏 (GA文庫)の感想
読了日:08月20日 著者:誼 阿古
これは面白い。1979年の兵庫県T市を舞台にした、ひと夏の物語。もっと爽やかな青春モノかと思っていたが、ちょっと苦い物語だった。地方によくある、本家が~分家が~跡継が~長男が~、の話と言っても良い。大人には大人の、子供には子供の事情があるっていうことだね。東京に行った時の洌史の母の言葉が重い。話の展開にちょいちょいファーストガンダムの話が関わってくるのが面白いと感じるも、未見の人にはちょっと分かりづらいかなと思ったりもする。主人公の兄・優樹が圧倒的にかっこいいのだが、これはパンクの影響だね。
いのち短しサブカれ乙女。 (メディアワークス文庫)の感想
読了日:08月20日 著者:ハセガワケイスケ
ラノベで一時流行った、部室でダラダラ喋っているだけの日常系に近い感じ。女子寮でサブカルについてダラダラ喋っているだけで、物語性はない。そういう意味では面白い小説ではないが、他者のサブカル談義を延々聞かされているのが逆に面白くなってくるという不思議。サブカルかどうかとか、サブカル女子とかサブカル糞野郎とか、どうでも良いのだが、他者のこだわりを聞いているのは、なにか楽しい。「サブカルとはAKIRAであり、AKIRAとはつまりサブカルの権化と言ってしまっても過言ではないやつ!」は名言だ。
正捕手の篠原さん (MF文庫J)の感想
読了日:08月24日 著者:千羽カモメ
野球ラノベとして読んだが、野球はほとんどせず、野球部を舞台とした日常系ラノベ。4コマ漫画風ショートショートで、読みやすいという人も多いが、物語が細切れになり引き込まれずに読むのに苦労した。2ページ1話というスタイルから、野球部あるある的なもので笑わせるのかなと思ったら違っていて、マネージャーとか妹とか、野球にあまり関係のないところでのキャラの物語だった。だから野球部である必然性は少ないかな。最後の男装少女の話は、ショートショートのスタイルと内容がズレている気がして、ちょっと残念。
後宮楽園球場 ハレムリーグ・ベースボール (スーパーダッシュ文庫)の感想
読了日:08月26日 著者:石川 博品
野球ラノベの流れとして読んだ。このラノ2015で新作1位とか、評判が良いのは知っていたが、全く合わなかった。話の導入としては復讐モノであるが、そちらの部分では進展を見せず野球モノとして展開する。世界の設定など細かい部分もあるが、投げっぱなしで終わっており、結局のところ何がやりたかったのか?ということになる。壮大なギャグのつもりなのかな。それらをすべて無視して野球モノとしてみた場合、宇宙人や獣人、猿が登場するのはまだ許せても、超能力で人や球の動きを止めるに至っては、野球モノとしての興味は失った。
若草野球部狂想曲EX―アンサンブル (電撃文庫)の感想
読了日:08月31日 著者:一色 銀河
野球ラノベとして読んだ。個性的な脇役にスポットを当てた、番外編の短編集。キャラ立ちというラノベらしさとスポーツモノが上手くブレンドされているなと感じた。亜希のひとつ上の先輩世代を描いた「夏の彼方に~Last ball~」が、正統派な青春モノとしてもよかった。キャラを主にしているとはいえ、野球部分は今回もしっかりとしていて、野球ラノベとして好感が持てた。
ステージ・オブ・ザ・グラウンド (電撃文庫)の感想
読了日:08月31日 著者:蒼山サグ
こういう野球ラノベを待っていた! 表紙からして期待大だったが、面白くて一気読み。小学生時代チームとして集まった5人だが、エースの引っ越しによりバラバラに。未練をかかえつつ、見ないふりして中学時代を過ごし、高校になりエースの帰還により野球部復帰を目指す物語。後半の熱い展開はもちろん面白いのだが、エース帰還までの前半のダラダラ過ごす部分も気に入っている。常滑市という都会でも田舎でもない町、海を見れば中部空港があり上空を飛行機が滑空していく。そこで過ごす高校生の鬱屈した生活がリアルで。
花屋敷澄花の聖地巡礼 (電撃文庫)の感想
読了日:09月03日 著者:五十嵐雄策
五十嵐作品は基本好きなんだが、これは無理。引きこもりヒロインを聖地巡礼の旅に連れ出す内容で、ガイドブック的な部分をもたせるというチャレンジは評価できるが、物語の設定やオチがさすがに無理がある。7年引きこもっていたのに、なぜ高校に行こうと思うのか、入学試験はどうした。頭いいなら大検でいいのにね。ヒロインに主人公を紹介する友人も途中全く絡んでこないし、最後のアニメうんぬんはさすがに無理がある。こういうある種ラノベらしい突飛な部分と、現実にある聖地巡礼の作品や舞台のリアルとがバランス悪いんだよね。
祭火小夜の後悔 (角川ホラー文庫)の感想
読了日:09月05日 著者:秋竹 サラダ
短編3つと中編1つの連作集。短編3つは学園の生徒・先生が怪異に巻き込まれるが、祭火小夜のアドバイスで回避する内容。最後の中編では、短編の主人公たちが小夜の依頼を受け、祭りの夜に現れる魔物に立ち向かう話。短編3つが面白く、中でも「しげとら」は抜群。残念なのはメインとなる中編。小夜が秘密を隠したまま話は進むのだが、3人はよく協力しようと思ったものだと。先生は小夜の話を疑い、新聞などを調べた上で協力するわけだが、普通はホイホイと魔物と対峙するのを手伝わないよね。小夜というキャラにあまり魅力を感じない。
花屋敷澄花の聖地巡礼 (2) (電撃文庫)の感想
読了日:09月05日 著者:五十嵐雄策
1巻を酷評したが、今巻は楽しめた。厳密に言うと第2話以降。聖地巡礼の旅だけだと平板になってしまうので、どんな物語を組み合わせるかが、鍵となると思う。その点、第1話は物語として未消化。第2話以降は、幼馴染の夏奈との関係性がよくわかり楽しめる。評判が良くなかったのか、今巻で終了。第1巻の内容なら、それも致し方なしだが、今巻で登場した聖地巡礼部をもっと早く提示できたら、もっと面白くなったのかも、と思う。
19 -ナインティーン- (メディアワークス文庫)の感想
読了日:09月09日 著者:綾崎 隼,紅玉 いづき,柴村 仁,橋本 紡,入間 人間
19歳をテーマにしたアンソロジー。綾崎隼「向日葵ラプソディ」が1番素直に楽しめた。心に響いたのが後半の2作品。19歳で浪人生を経験した身としては、紅玉いづき「2Bの黒髪」の逃避したくなる心や踏ん切りの付け方に共感を抱く。作中作の結末およびエピローグにジンとくる。橋本紡「十九になるわたしたちへ」は、高校生の頃の自尊心とも言えない変なプライドの高さを思い起こし、しみじみとする。「オリジナルじゃない。アリの隊列だ。」という先生の言葉が響く。前半2作品はイマイチ理解できない。入間人間「19歳だった」は↓
祭火小夜の再会 (角川ホラー文庫)の感想
読了日:09月11日 著者:秋竹 サラダ
祭火小夜シリーズ第2弾。主人公が怪異に対して、退治するわけでもなく、謎を解くわけでもなく、少しの対処をするものの、ただ知っているというだけという、ある意味斬新なスタイルの作品。今回は第1話で現在(高校2年生)を描き、第2話以降で過去(中学3年生)を描く。第1話で登場する少女・圭香が実質的な主人公。第1話で小夜と圭香は中学時代それほど親しく無いように描かれているのに、第2話以降でかなり親交を深めていて、おかしな話だなと思っていたのだが、最後にこう来るとは! 第3話までがホラーで、最終話でミステリに変わる。
メビウス・ストーリー (富士見ファンタジア文庫)の感想
読了日:09月13日 著者:六道 慧
アンティークショップに並ぶ商品を手に入れることによって、不思議な現象に巻き込まれるホラー短編集。あとがきによると、ドラゴンマガジンの穴埋めのために書かれたとのこと。ドラマガ掲載が4編、描き下ろし4編の計8編。生い立ちの不幸、望まぬ受験戦争、いじめ、両親の離婚、女子高生コンクリート事件などなど、中高生を主役に現実にあった事件などを下敷きにして書かれている。アンティーク商品を使ってスッキリ解決という話ではなく、余韻を持たせていたり、社会批判的な結末であったりと、90年序盤のライトノベルにしては、軽くない内容。
ゴーストハンター パラケルススの魔剣―謀略の鉤十字 (角川スニーカー文庫)の感想
読了日:09月18日 著者:山本 弘
ゴーストハンターシリーズ第2弾。ゲームノベライズだが、ゲームを知らなくても楽しめる。ただ、前作『ラプラスの魔』を読んでいないと、人間関係は分かりづらいかな。今回は富豪の依頼を受けて、ヨーロッパの調査に。そこに待ち受けるのは、オカルティズムに毒されている団体。今巻では人狼救出劇があるくらいで、物語はあまり進展せずに、オカルト主義の主張が展開される。アトランティスがどうこうとか、そういうのが好きな人にはたまらないだろう。幻視能力のあるヒロイン的な存在のフランカがあまり活躍しないのが、ちょっと残念。次巻に期待。
ゴーストハンター パラケルススの魔剣―アトランティスの遺産 (角川スニーカー文庫)の感想
読了日:09月22日 著者:山本 弘
トランシルヴァニアでのディアーナとの戦いが、わりとあっさり決着して、この後どうするの?というところから、面白さが加速。最後の戦いはホムンクルスの存在の気持ち悪さがありつつ、メンバー全員の力を集めて勝利する展開がアツイ。ナチスドイツ、アトランティスや人狼・吸血鬼などの伝説、神話を絡め、伝奇小説として最高に面白い。クトゥルフに絡めた前作『ラプラスの魔』より、こちらの方が好み。あとがきにある「神話や伝説の断片を適当に拾い出してきて組み合わせれば、それらしいものになってしまう」はちょっとぶっちゃけすぎだ(笑)
パンツブレイカー (一迅社文庫)の感想
読了日:09月23日 著者:神尾 丈治
「半径2m以内に近づくものの下着を消し去る」能力を持った少年を主人公とした、異能学園ラブコメなのだが、意外とマジメに超能力者の悲哀が描かれる。この能力を持ったために主人公は出歩くこともできず、両親からは見放されてしまう。救いは献身的に協力してくれる妹のみ。エロっぽい展開もあるのだが、能力を見極めようとしたり、進化させようとしたりと、真っ当な展開。このあたり、期待したものと違う!orそうくるか!と受け取り方次第で、作品の評価は変わるだろう。
邪神惑星一九九七年―クトゥルー・オペラ1 (1980年) (ソノラマ文庫)の感想
読了日:09月25日 著者:風見 潤
ラブクラフト周辺が作り出したクトゥルフ神話の邪神たちが復活し、それを迎え撃つ超能力を持つ7組の双子たちの戦いを描く。今巻では世界に散らばる双子たちを、旧神の啓示を受けた人物が集める序章的な物語。思っていたよりあっさりと邪神たちがやられてしまうので、ある意味爽快感があるというか、物足りないというか。7組の双子設定は人数が多いと思っていたが、きちんと意味があったので納得。次巻以降、別れて展開していくのね。ただ、読み手としては感情移入しにくいのが難点か。もう少しメインとなるキャラがあれば、もっと読みやすいのに。
地底の黒い神―クトゥルー・オペラ〈2〉 (1980年) (ソノラマ文庫)の感想
読了日:09月30日 著者:風見 潤
復活したクトゥルー神話の邪神たちに立ち向かう、7組の双子たちの物語第2弾。双子7組14人はちょっと多すぎと思ったが、地球班と宇宙班二組に分かれたので、わかりやすくなった。同じ能力を持っているので、地球と宇宙の邪神、同時に攻略していけるのは、面白いアイデアだなぁと。前巻ではあっさりと邪神を倒したが、今巻ではやや手こずることに。強くなった敵を倒す方法も、SF的な理屈があって楽しい。あとがきに「ラブクラフトが読者に与えた恐怖をSF的科学でバッサリやって、その割り切り方に爽快感を味わっていただけたら」とあり。
双子神の逆襲―クトゥルー・オペラ〈3〉 (ソノラマ文庫 184)の感想
読了日:10月01日 著者:風見 潤
復活したクトゥルー神話の邪神たちに立ち向かう、7組の双子たちの物語第3弾。邪神たち反撃の巻。あらすじにややネタバレがあり、読んでしまって後悔。途中の、健と星華が2人だけで北海道を訪れるエピソードが良い。やはり登場人物を絞ることで、関係性をしっかり描けるし、超能力も限られるので緊迫感が増す。80年代作品らしく、2人の仲が進展する様子はないのだが、この2人が微笑ましい。あっと驚く展開もあって、次巻に期待。
暗黒球の魔神―クトゥルー・オペラ〈4〉 (ソノラマ文庫 205)の感想
読了日:10月05日 著者:風見 潤
復活したクトゥルー神話の邪神たちに立ち向かう、7組の双子たちの物語第4弾。前巻を読んだ後、期待感が高まったのだが、中盤まででちょっと飽きてしまった。展開がやや平板というか、同じテンションの繰り返しというか。ただ、終盤のベテルギウスで明かされる、衝撃の事実にびっくり。そして、ラストのまとめ方もキレイだなぁと。全体を通して、40年前の作品なので、やはり古臭さはあるものの、わりと楽しめました。傑作!や名作!とはいわないが、シンプルな面白さがあった。古い作品には古い作品なりの楽しみ方があると再確認。
パンツブレイカーG (一迅社文庫)
読了日:10月08日 著者:神尾 丈治
ある行旅死亡人の物語
読了日:10月08日 著者:武田 惇志,伊藤 亜衣
プレイバックへようこそ (角川文庫)
読了日:10月11日 著者:氷室 冴子
委員物語―プレイバックへようこそ 2 (角川文庫)
読了日:10月16日 著者:氷室 冴子
6 ‐ゼクス‐ (電撃文庫)
読了日:10月16日 著者:来楽 零
X(クロス)トーク (電撃文庫)
読了日:10月17日 著者:来楽 零
エートスの窓から見上げる空 老人と女子高生 (ファミ通文庫)の感想
読了日:10月23日 著者:かめのまぶた
女子の方が好きな女子高生と好々爺な教師の、ミステリ風味の青春小説。二人の居場所となる半地下の廊下からは、女子高生の太ももが見えて……という設定は、いかにもラノベらしい。ただ、太もも太ももと出てくるが、それほどいやらしさはないのが良い。物語としては、ちょっとした日常の謎を解くものであるが、謎解きよりも自虐的な女子高生のキャラの言動が面白い。好々爺な教師との会話も良くて。ただ半地下の場所が、部室に置き換えても良いくらいの存在で、物語の中で活きていないところだけが残念。
天才少女Aと告白するノベルゲーム (ファミ通文庫)
読了日:10月23日 著者:三田 千恵
空色メモリ (創元推理文庫)
読了日:10月26日 著者:越谷 オサム
エーコと【トオル】と部活の時間。 (電撃文庫)
読了日:10月29日 著者:柳田狐狗狸
エーコと【トオル】と真夜中の落雷少女。 (電撃文庫)
読了日:11月04日 著者:柳田狐狗狸
失恋探偵ももせ (電撃文庫)
読了日:11月06日 著者:岬 鷺宮
失恋探偵ももせ2 (電撃文庫)
読了日:11月06日 著者:岬 鷺宮
失恋探偵ももせ3 (電撃文庫)
読了日:11月06日 著者:岬 鷺宮
失恋探偵の調査ノート ~放課後の探偵と迷える見習い助手~ (メディアワークス文庫)
読了日:11月09日 著者:岬鷺宮
(P[ん]1-16)寮の七日間 (ポプラ文庫ピュアフル)
読了日:11月12日 著者:加藤 実秋,谷原 秋桜子,野村 美月,緑川 聖司
ネオクーロンB (角川スニーカー文庫)
読了日:11月17日 著者:鷹見 一幸
みなごろしの学園―デビル17〈1〉 (富士見ファンタジア文庫)の感想
読了日:11月21日 著者:豪屋 大介
エロス&バイオレンスな内容で、80年代ノベルス(菊池・夢枕)風とでも言えば良いのか。私は大人なので、常人では無い主人公の物語を楽しんだが、中学生くらいの子には読ませたくない内容。これを中高生向けレーベルで出版した編集部は悪趣味だなと。出版当時も賛否両論あったようだが、ラノベの歴史にこのタイトルが出てこないのが救い。話題となったのも一時のもので、歴史的な評価にはならなかったと。物語としては、対ヤクザの決着がつくくらいまでは楽しかったが、それ以降が冗長で退屈になった。それにしても銃や兵器についてクドい。
さよならよ、こんにちは (星海社FICTIONS)の感想
読了日:11月23日 著者:円居 挽
現居住地・大和郡山が舞台の青春小説ということで、気になって手に取った。読み終えてまずスッキリしないな、と。他者の感想を読むと別シリーズの前日譚とのことで納得。主人公がどう学園と戦ったのかは語られず、周辺の物語で。連作短編で前半はミステリっぽいのだが、後半はSFか?という感じ。著者のデビュー作から始まる、ルヴォワールシリーズを読んでいれば、また違った感想になるのだろう。あらすじにそのあたり書いていてくれたら(〇〇の前日譚とか)とも思うが、出版社が別なので無理なのか。
緋色の館 (小学館キャンバス文庫)
読了日:11月24日 著者:図子 慧
ストレンジボイス (ガガガ文庫)の感想
読了日:11月28日 著者:江波 光則
あらすじから、いじめられっ子の復讐譚かと思ったが、さにあらず。いじめっ子、いじめられっ子、それを見る傍観者、普通じゃない3人の物語。彼らが発する声・心の叫び=ストレンジボイスを、作中でノイズと表現しているところがある。この小説で描かれているのはノイズなのだ。青春を謳歌する中学生の心地よい響きでなく、耳を塞ぎたくなるようなノイズ。だからこの小説を読むと心がザワつくし、心地よく楽しめない。だからエンタメ小説としては面白くないのだけど、純文学的なものとして面白いと感じた。こういうのを出したガガガ文庫はすごいね。
パニッシュメント (ガガガ文庫)の感想
読了日:12月01日 著者:江波 光則
『ストレンジボイス』に続いて読了。序盤は学園ラブコメ風で前作よりエンタメ寄りになったかと思いつつ読んでいたのだが、中盤スクールカースト絡みのいじめになり、そして学園で起こった諸問題の裏には新宗教が関わっていたというところから、物語はローリング! 面白いの一言。さて、タイトルのパニッシュメント、処罰という意味。誰が誰を処罰したのか。主人公の少年が教祖である父とその教団を処罰したのであるが、果たしてそれだけなのだろうか。主人公の少年は最後死んだかに見えた。しかし3日後に復活しているのである。続
ペイルライダー (ガガガ文庫)
読了日:12月16日 著者:江波 光則
好きって言えない彼女じゃダメですか? 帆影さんはライトノベルを合理的に読みすぎる (角川スニーカー文庫)の感想
読了日:12月17日 著者:玩具堂
ちょっと立て続けにヘヴィなラノベを読んだので、軽い感じの1冊をと思って読んだのだが、これがなかなかの曲者だった。ラノベ談義的なものであるが、ヒロインの斜め上からのラノベ解釈が面白い。ラノベの表紙に巨乳イラストが多いことを起点に、人=哺乳類はおっぱい嫌いでは生きられない、「人間とは、ほぼおっぱいでできている」、織田信長もおっぱい好きを経て、「ラノベ表紙に巨乳がたくさんあるのは後世への文化事業」となる第1話の展開には痺れた。第2話ではハーレム問題の激論?がおこなわれ、第3話では異世界モノについて触れられる。続
悪の江ノ島大決戦 (富士見ファンタジア文庫)の感想
読了日:12月26日 著者:塚本 裕美子,とまと あき
物語はシンプルで、超生命体的機械を手に入れた高校生とマッドサイエンティスト、それぞれが機械を利用することにより、最終的にPCエンジン+αでコントロールする改造鎌倉大仏と、要塞化され飛行する江ノ島が戦うことになる。おバカっぽい内容だが、なかなか楽しい作品。今冷静に読むとツッコミどころ満載だけど、こういう読みやすく手軽に楽しめるのこそが、90年代初期のライトノベルであるのだろう。
リュカオーン (富士見ファンタジア文庫)の感想
読了日:12月26日 著者:縄手 秀幸
”軽”の「スレイヤーズ!」、”重”の「リュカオーン」と解説にあるように、SF要素の強い重厚な近未来ファンタジー。人類の種としての衰退に対応するために、獣や昆虫のDNAをかけあわせて獣人にするっていう設定からしてすごい。ただ物語自体構成に凝りすぎていて、わかりづらいかな。読み間違えていなければ、オリオン=カトゥルフ=ジャックということ?このあたりよくわからなかった。オモシロそうな要素てんこ盛りだけど、ストレートな面白さではないといったところ。すでに述べている人もいるが、ソノラマ文庫のほうが向いていそう。
スレイヤーズ! (富士見ファンタジア文庫)の感想
読了日:12月29日 著者:神坂 一
第1回ファンタジア長編小説大賞の準入選作品。ライトノベルの代表的なタイトルながら今まで未読。今回、同期作品の『リュカオーン』とあわせて読んでみた。物語は王道というかありきたりに思えるが、やはりキャラクターが良い。文章も軽快で、リナのツッコミが楽しい。凝った設定・構成、重厚な文章の『リュカオーン』よりも、シンプルながらもキャラが活き活きしたこちらの方が楽しく読めた。子供の頃に読んだら、呪文の詠唱、絶対真似してるね。
竜の聖域 (富士見ファンタジア文庫)の感想
読了日:12月30日 著者:ひかわ 玲子
創造主たる神々の部族間対立を描く物語。創造物である地球の中学生カップルと、神々の上位に存在する竜王を絡めて物語に奥行きを持たせている。面白いのは登場人物男女とも全員美形なところ。ほのかにBL臭もするが、この時代だと耽美派になるのかな。神々の部族間対立は直接的な剣での切り合いもあるが、取引・駆引きの応酬で単純なバトル物でない面白さあり。登場する地球上の中学生の美少女が面食いという設定で、美形の神々を見ては、♡付きのセリフを連発しているのがあまりにもバカっぽくて楽しい。
スクラップ・ドリーマー―事件屋シン&ダイ (富士見ファンタジア文庫)の感想
読了日:12月30日 著者:園田 英樹
下層民の若者探偵コンビが、いつも痛い目にあいつつ、くじけずに上を向くSFアクション物語。読んでいてショーケンのドラマ「傷だらけの天使」を思い出す。ちょっとキャラが下品で、魅力がない。内容はさておき、イラストがミスマッチ。加藤&後藤コンビのファンタジックな絵と内容があっていなくて、きれいなイラストがもったいない。もっとポップな感じイラストのほうが絶対あっていると思うんだけど。
以上。