さて、今回はファミ通文庫から出版された、『部活アンソロジー1「青」』を読んだ感想です。なお、部活アンソロジー2は「春」なので、あわせて「青春」になります。舞台が「部活」の「青春」モノというわけですね。
部活アンソロジー1 「青」

著者:更伊俊介、綾里けいし、嬉野秋彦、関根パン、櫂末高彰、佐々原史緒
イラスト:ねりま、白井鋭利、An2A、NOCO、himesuz、霜月えいと(カバーイラスト)
文庫:ファミ通文庫
出版社:エンターブレイン
発売日:2013/07
全ての揉め事を大貧民で解決する「大貧民部」最後の一戦を描く更伊俊介『B.E.T』、読書部を隠れ蓑にした非公式の部の実態とは──。綾里けいし『宵下様探索部』、嬉野秋彦『理由なき反逆部の誰も知らない最初で最後かつ最大の戦いとその後日譚』のWEB掲載作に、関根パン『たたくぶ』、櫂末高彰『バビ部』、佐々原史緒『サルと踊れば』の書き下ろしを加えた全六篇でお贈りする、努力と情熱の先にある何かが垣間見える部活エピソード集第一弾!
収録作品
B.E.T / 更伊俊介、ねりま
宵下様探索部 / 綾里けいし、白井鋭利
理由なき反逆部の誰も知らない最初で最後かつ最大の戦いとその後日譚 / 嬉野秋彦、An2A
たたくぶ / 関根パン、NOCO
バビ部 / 櫂末高彰、himesuz
サルと踊れば / 佐々原史緒、NOCO
読んだ感想
B.E.T / 更伊俊介、ねりま
廃部が決まった「大貧民部」を舞台に、部活最後のメンバーである男女が、「勝者は敗者にひとつだけ命令をして良い」という権利をかけて、最後の勝負をすることに。
「大貧民」もしくは「大富豪」と呼ばれるトランプゲームの勝負で、ポーカーを使ったギャンブルモノのように、その駆け引きで読ませてくれます。
男女が「命令権」をかけて勝負っていうところで、オチがなんとなく想像できてしまいますが、それでも良き青春モノです。
宵下様探索部 / 綾里けいし、白井鋭利
様々な理由で希望の部活に入れなかった学生が集まる読書部。その実態は学校の怪談を記し、後世に残すことを目的とした「宵下様探索部」でした。
姉の死によって感情を表に出さなくなった主人公が、部活動中に巻き込まれる不思議な現象。そこには謎の少女がおり、部活は亡くなった姉も関わっていて……
ホラーテイストの作品で、本巻の中では異色作です。
理由なき反逆部の誰も知らない最初で最後かつ最大の戦いとその後日譚 / 嬉野秋彦、An2A
顧問の25歳独身女教師目当てで、英語弁論部に所属する主人公。夏休みに合宿をすることになるのですが、呼び出された場所は学校の屋上で……
主人公である生徒よりも、先生側の事情をメインに描いており、部活自体にもあまり意味がなく、青春モノとしては変化球的な作品です。あとがきを読むと、作者が「年上のお姉さん」が好きらしくて、こういう作品になったとのことです。
たたくぶ / 関根パン、NOCO
軽音楽部に集まった新入生4人と、在校生1人、希望するパートが全員ドラム。ドラムにかける熱意で、誰が担当になるか決めることになるのですが……
ふざけている、と受け取る人もいるでしょうし、賛否両論、好き嫌いの別れる作品だと思います。私は好きです。他の作品が真面目であればあるほど、この作品が浮くことになり存在感が増します。こういう作品がアンソロジーの中に入っていることが重要ではないかと思います。
とにかく笑いました。

バビ部 / 櫂末高彰、himesuz
バビる──「バリバリ」と「ビビる」を合成・簡略化したもので、非常にびっくりすることを意味する、とのことです。
バビ部は他者をバビらせる部活動、すなわちドッキリを仕掛けるような部活動です。バビ部2年生の主人公は、3年生の部長をバビらせようと計画を進めるのですが……
これもちょっとオチが想像できる気がしますが、直前の「たたくぶ」からの流れで読むと、安定感というか、安心感のある作品になっています。
サルと踊れば / 佐々原史緒、NOCO
3年後の廃校が決定している中学校にはいった主人公。小学校の時はサッカーで才能を見せていたのですが、とあることをキッカケに中学校ではサッカーをやらないと決めていました。中学校で勧誘されたのが、男女混合でおこなうフットサル。女子の先輩の甘い言葉で入部を決めるのですが、そこで待っていたのは、豹変した先輩女子だった……
正統派スポーツ系部活モノで、続きを読みたくなる作品です。本巻の中で1番お気に入りです。
まとめ
ということで、全6編の読んだ感想でした。
わりと正統派なのは「B.E.T」「バビ部」「サルと踊れば」の3つ。ホラーテイストの「宵下様探索部」、先生側の事情を描いた「理由なき反逆部の誰も知らない最初で最後かつ最大の戦いとその後日譚」、ひたすら笑える「たたくぶ」の3つは異色作といってもよいでしょう。バランスよく収録されていると思います。
個人的に面白いと思ったのが、「サルと踊れば」「たたくぶ」の2つで、全くベクトルの違う面白さでした。「たたくぶ」は賛否両論かもしれませんが、この作品が掲載順で4つめにあることで、良いアクセントにもなっているし、存在感が効いている気がします。
ただ、どの作品も短編ながらも、しっかりと読ませてくれる作品でした。次の「春」も期待して読みたいと思います。



