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【90年代単巻ラノベを読む22】関俊介『RAIN‐BELL』を読んで

さて、今回もスニーカー文庫作品を読んだ感想です。1997年の第1回角川学園大賞金賞を『歪む教室』で受賞した関俊介、受賞後第1作目となる『RAIN‐BELL』を読んだ感想です。

関俊介

1976年大阪府生まれ。1997年、『歪む教室』で第1回角川学園小説大賞金賞を受賞し、デビュー。1998年、『RAIN-BELL』(角川スニーカー文庫)刊行。2012年、『絶対服従者(ワーカー)』で第24回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞。

角川スニーカー文庫
歪む教室 1997/6
RAIN-BELL 1998/7

単行本
絶対服従者(ワーカー)  2012/11、新潮社
ブレイン・ドレイン 2016/1、光文社
精密と凶暴 2021/5、光文社

光文社文庫
ブレイン・ドレイン 2021/6

RAIN‐BELL

sty220529-004

太平洋上に浮かぶ小さな島、第三地区。奇妙で、不思議で、乾いた街。
この街に伝えられる「紫の伝説」を追う自治警の刑事西野真人は、ある日殺人事件捜査中に化け物に襲われる。相手はケモノ化した人間だった…。
紫の伝説―抗えぬ闇に呑まれしとき、救いの手、天使が降臨し、人を進むべき道へ導かん。第一回角川学園小説大賞金賞受賞第一作、奇妙なハード・ファンタジー。

読んだ感想

あらすじや帯にはハード・ファンタジーとありますが、ハードボイルド・アクションや刑事モノといったほうが良さそうな内容です。また、帯には「愛は必要か? ヒトの進むべき道とは……」なんて、大層なフレーズが書かれていますが、ちょっとこれには違和感を感じます。そういったテーマ性よりも、アクション作品として気軽に手に取ってもらえるような売り方のほうが良かったのにと。

太平洋上に浮かぶ小さな島の、第三地区と呼ばれる街が舞台。SF的な未来都市ではなくて、ほぼ現実に近い都市です。ただ、そこは国による警察機構ではなく、民間企業のバックアップによる自治警察機構、通称「自治警」により治安が維持されています。主人公・西野真人は自治警の特捜課に所属する刑事。西野は1人、幻覚剤中毒者が口にする、「紫の伝説」を探っています。そしてたどり着いたのが「RAIN-BELL」という喫茶店。そこに務めるウエイトレス響に惹かれていきます。

一方、街では口からは牙が生え鉤爪を持つ、ケモノ化した人間が出現するようになってきます。ケモノ化事件を追ううちに、「RAIN-BELL」のウエイトレス響も関わってくることに。ケモノ化の背景、紫の伝説、響の不思議な能力、すべてがつながっていく先には何が……

ちょっと色んな要素を詰め込みすぎて、消化不良なところもありますが、ケモノ化した人間やラスボスとの戦いは迫力があります。愛だの進化だのいわずに、シンプルなアクション小説としたほうがスッキリするかなと思いました。とくに響の設定が中途半端というか、能力についてもよくわかりません。またRAIN-BELLの「BELL」は鐘のことのようですが、作中のものはどう考えても鈴のように思えます。鐘はお寺にあるような、外から突いて音を出すイメージなのですが、このあたりもよくわかりませんね。

さらに西野や響より、主人公に心を寄せる上司の朋子が魅力的です。大人の女性といった感じ。西野とはもう少し大人の関係があっても良かったのではと。そのあたりはスニーカー文庫の足かせがあったのかもしれませんね。むしろ西野と朋子の第3地区を舞台にした、バディモノが読みたいと思いました。

あと著者がなにかこだわりあるのか、「インスパイア」という車が出てきます。作中では連呼されているような場面もあるのですが、なぜにただの「車」や「愛車」でなくて「インスパイア」なのか、ちょっと不思議で。そもそも最初は「インスパイア」って何? と思いました。調べてみるとホンダが90年ころから販売している、高級セダンです。こういう固有名詞に意味があるのかなと。フェラーリとかベンツなら、スポーツカーや高級車の代名詞的に受け入れられるのですが、インスパイアなんて車種を知っている人は、当時としてもどれくらいいたのかなと。日本車ならスカイラインとかならまだわかるのですが。拳銃なんかもガバメントと固有名詞で呼んでいるし、こういうところがオタク臭いですね。

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