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【単巻ラノベを読む3】犬村小六 『とある飛空士への追憶』を読んで

さて、今回は90年代ラノベを離れて、名作の誉れ高い犬村小六「とある飛空士への追憶」を読むことにしました。

とある飛空士への追憶

著者:犬村小六
イラスト:森沢晴行
文庫:ガガガ文庫
出版社:小学館
発売日:2008/2

「美姫を守って単機敵中翔破、1万2千キロ。やれるかね?」レヴァーム皇国の傭兵飛空士シャルルは、そのあまりに荒唐無稽な指令に我が耳を疑う。次期皇妃ファナは「光芒五里に及ぶ」美しさの少女。そのファナと自分のごとき流れ者が、ふたりきりで海上翔破の旅に出る!?―圧倒的攻撃力の敵国戦闘機群がシャルルとファナのちいさな複座式水上偵察機サンタ・クルスに襲いかかる!蒼天に積乱雲がたちのぼる夏の洋上にきらめいた、恋と空戦の物語。

2011年8月に、イラストを廃し加筆訂正され単行本化されています。また、現在はkindle Unlimitedで読み放題の対象となっています。kindle版は文庫版を元にしているのか、単行本を元にしているのかは不明。

読んだ感想

読み終えてまず思ったのが、アニメで見たいなと。空戦シーンやカバーイラストにも描かれている最後のシーンは、ぜひアニメで見たいと思いました。(実際に2011年にアニメ化されているようですが、あまり評判は良くないようですね。想像を超える映像は難しいということか)

物語としては、混血の流民でカースト最下層のパイロット(飛空士)シャルルと、次期王妃である名家の令嬢ファナとの身分違いの叶わぬ恋の物語です。そこに空戦アクションを絡めて、物語を盛り上げています。この空戦アクション描写がリアルで、冗長に感じるところもありますが、迫力があります。

なお、空戦の描写についてはamazonのレビューに詳しく書かれたものがありました。レビュアーの推測でしょうが、旧日本海軍エースの坂井三郎氏の「大空のサムライ」、「坂井三郎空戦記録」の諸巻を参考にしていると、書かれています。何にしろ空戦の描写はリアルです。

ライトノベルとしては会話文が少なくって、カチッとした文章。文章が美しいといわれているレビューも多いのですが、むしろ、わざわざ難しい言葉を使ったりして、読みにくさを感じました。そもそもタイトルもずっと「とある”飛行士”の追憶」と思っていました。ファンタジー的な要素を持たせるために飛空士や飛空機にしているのでしょうが、”玻璃”など所々に出てくる漢字を使った表現とともに馴染めませんでした。もう少し軽いタッチの文章のほうが、読みやすいかなと思います。ちょっと戦記物っぽいというか。

著者がamazonに寄せたメッセージに、「ローマの休日と天空の城ラピュタを意識して、あのなんともいえない切なさと爽やかさを読後に得られるよう、いろいろと工夫しつつ書いてみた」とあります。アメリカが誇る名作映画と日本が誇る名作アニメの良いところを貪欲に取り込んだ作品といって良いでしょうね。もう少しラノベらしく突き抜けたところがあっても良いとも思いますが、うまくまとまっています。

読後感も良くって万人にオススメ出来る作品です。

とある飛空士シリーズ

単巻ラノベとして取り上げておりますが、とある飛空士シリーズとして続刊があります。

とある飛空士への恋歌 全5巻

とある飛空士への夜想曲 全2巻

とある飛空士への誓約 全9巻

主人公や登場人物を変えて書かれた作品で、直接的な続編というわけではありません。「とある飛空士への追憶」のみでも、充分に楽しめると思います。

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