さて、本日の【90年代単巻ラノベを読む】は、遅筆で未完作品の多い作家火浦功の「ウィークエンド・ひーろー―放課後の英雄」を読んだ感想です。
火浦功
1980年、早川書房「SFマガジン」主催のハヤカワ・SFコンテストに応募した「時を克えすぎて」が小松左京らの目に留まり、同誌より「瘤弁慶二〇〇一(こぶべんけいにいまるまるいち)-戦慄の人間アパート、タチバナ荘物語」でデビュー。「高飛びレイク」シリーズで人気に。ラノベ作家というよりは、SF作家。
80年代、ゆうきまさみやとり・みき、出渕裕、岬兄悟あたりと、時かけだの知世などと、わちゃわちゃしていた印象です。遅筆で未完作品の多い作家として有名です。
ウィークエンド・ひーろー―放課後の英雄
著者:火浦功
イラスト:山本貴嗣
文庫:ログアウト冒険文庫
出版社:アスペクト
発売日:1993/10
世界征服をたくらむ悪の組織から、地球を守りたいの、と同級生のとびきり可愛い娘ちゃんから、真顔で相談を持ちかけられた山田哲也(15歳。日の丸学園2年。サッカー部所属)に突如として降りかかるヒーローとしての日々。シリアスにやろうとするが、やっぱりヘロヘロになってしまう大活躍大冒険の物語。
読んだ感想
週刊少年サンデーに連載されたマンガ「奪戦元年」の原作を元に作られた作品。冒頭で「これは小説ではありません」と書かれているように、マンガ家に向けて書かれた原作を加筆改訂した上、注釈をつけたものです。原稿の7割が新たに書き直されたとのことで、それほど書き直すならもう少し小説として形を作れなかったのかと思いました。
物語としてはヒーローの資格を与えられた高校生の元に、敵がやってくるという特撮作品の定型。寒いギャグとか内輪受けのようなものが散りばめられていて、うんざりしてしまいます。また、注釈も物語の流れを遮っていて、意味がわかりません。
映画の台本を読んでいるような感じで、小説としては楽しめません。もちろん著者が小説では無いといっているように、マンガ家に向けて書かれた原作。最終的な仕上げをマンガ家ができるように、細かい描写がありません。これをどう楽しめば良いのか。
本来ならマンガの原作などを表に出るものではありませんが、これを敢えて出版する必要があったのか。そんな風に思ってしまうのですが、遅筆で有名な作家だったので、何でも良いから読みたいというファンも多かったのかもしれません。小説では無くて、マンガの台本にエッセイを付け足したようなもの。著者のファンに向けた身内受けの作品でした。残念。
「奪戦元年」が連載時わりと好きで、もう処分してしまいましたが、単行本も持っていました。少しはマンガのことを思い出すかなと思っていたのですが、全然思い出せず。「奪戦元年」を久しぶりに読んでみたくなりました。