【90年代単巻ラノベを読む23】山本弘『時の果てのフェブラリー―赤方偏移世界』を読んで

さて、今回も山本弘作品を読んだ感想です。ハードSFの傑作という評判も聞こえてくる『時の果てのフェブラリー―赤方偏移世界』を読んでみました。

時の果てのフェブラリー―赤方偏移世界

著者:山本 弘
イラスト:結城 信輝
文庫:角川スニーカー文庫
出版社:角川書店
発売日:1989/12

1988年、アメリカのオクラホマを始めとして、地球の6ヶ所に時間重力異常地帯が出現した。直径10マイルの地帯に電磁誘導現象が起こり、重力異常が生む低気圧が全地球的な気候変動を作り出し、地球に危機が迫る。〈スポット〉は幾科学的に並び、自然現象とは思えなかった。あらゆる科学調査が失敗し、超感覚知覚のオムニパシー能力を持つ11歳の少女フェブラリーだけがある仮説で謎を解明した。現地調査隊と共に彼女は〈スポット〉へと出発する。〈スポット〉の中では、時間が加速され、円盤が飛び、驚くべき世界が。新鋭山本弘が放つハードSF長編。

読んだ感想

感想の前にまず、ハードSFについて。私は4~5年くらい前まで、間違った認識をしていました。ハードSFって壮絶な感じであったり、重い内容だったりと、ライトSF(軽い読み口、コメディタッチ)に相対するものだと思っていたのです。ハードボイルド的な印象と言ったら良いのでしょうか。

で、Wikipediaなどで調べてみると、私の思っていたのと違って「科学的知識に基づいたもの」を指すみたいです。現象に対して”ただそういうもの”とするのではなくて、科学的な裏付けを必要とするといったことでしょうか。いろいろ他にも定義があるようですけど、複数のサイトで確認すると内容の重さ軽さではないのは確かです。

で、この今回読んだ『時の果てのフェブラリー』はハードSFでした。読んでいて最初は、かなり理屈っぽいなぁと思いました。タイトルにでてくる赤方偏移とかよくわからないし。また父と娘のやり取りがまどろっこしいとも。だから前半はかなり読んでいて、これはちょっと…… なんて思っていたのですが、〈スポット〉に突入してから、俄然面白くなってきました。

しっかりとした理屈付けがあった上で、それを解明していく面白さといえばよいのでしょう。風の向きや重力などなど、最初は読んでいて疲れましたが、それらにはすべて意味があり、物語の展開にも関わってきます。あぁ、これがSFだったんだな、と改めて思い出した次第です。

途中、11歳の少女になんてことするんだというシーンも有りましたが、父と娘の関係もしっかりと意味がありました。まどろっこしく感じた前半のやり取りも、最後にきちんと回収されていて、ちょっと感動しました。

これがスニーカー文庫で出版されたのが、今となっては驚きです。ハヤカワ文庫JAなんかから出ていてもおかしくないSFだなぁと。ただ、少女を主人公にして、親子の関係をしっかりと描いているということから、ジュブナイルSFという考えもできるでしょう。それなら若者向けのスニーカー文庫から出版された意味もわかります。

これはおすすめです。

なお、この作品は2001年に徳間デュアル文庫から新装版が出版され、その際に全面改稿されているようです。現在は電子書籍でも読むことができますが、スニーカー文庫版なのか、デュアル文庫版なのかは不明です。

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