さて、今回は90年代に富士見ファンタジア文庫から出版された単巻ラノベをまとめたもの、第5弾です。90年代のラノベに興味を持って読んでみようと思っても、どれも複数巻の長いものばかり。サクッと90年代を味わえるラノベはないものか?と感じた私と同じような人のために、まとめておきます。
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なお、既読作品には星印でオススメ度を添えてあります。未読のものは未評価で、今後読み終わり次第、評価をつけていく予定。あくまでも個人的な好みです。
面白い。読んで損は無し。
面白い。楽しめます。
それなりに面白いかも。
時間があれば、読んでみるのも一興。
大雑把な評価ですが、もし読んだことがないものがあれば、参考にしてください。
神々の砂漠 風の白猿神 / 滝川 羊
著者:滝川 羊
イラスト:いのまた むつみ
発売日:1995/01
人類と〈機械知性〉とが死闘をくりひろげた〈聖戦〉から百年。地球の三分の一をおおう砂漠の中に、その少年はいた。古城宴。九年前、謎の壊滅をとげた東京シティの生き残り。現在は“大槻キャラバン”の一員として戦闘空母“箱舟”に乗り込んでいる。彼は今、仲間の少年たちとともに船を離れ、聖戦時の遺跡の発掘をしていた。作業用アームの先がなにか硬いものに当たる。丸いシルエット。“神格匡体”だ。人の想像力を現実の力にかえ、神話の神々を地上に顕現させる究極の兵器―。宴たちは期待と畏れに躍る胸を圧さえ、慎重にその白い匡体を掘り出していく。それが白猿神ハヌマーン、そして謎を秘めた少女シータとの出会いだった…。吹き抜ける風は熱く乾き、雷鳴は波乱を告げて轟く。少年よ、今こそ旅立ちだ。選考委員大絶賛のSF冒険ロマン。
第6回ファンタジア長編小説大賞受賞作。名作単巻ラノベの話をすると必ず登場するタイトルであり、いまだ続きが出ることを待っているとコメントがつく作品でもあります。
噂に違わぬ面白さで、続きがないことだけが唯一の不満な作品です。神話の神々・英雄・怪物が実体化した巨人としてバトルする、神格筐体の設定がまず素晴らしい。また、キャラも立っていて、主人公を含む三馬鹿トリオは楽しいですし、女性上官も敵役着物キャラも美しくて強くて。この二人の神格筐体でのバトルは、手に汗握るという表現がぴったり。
後書きによると、基本路線はガンダム+ラピュタとのことですが、ザブングル感もあります。しかし、100年眠っていた少女、東京を破壊したもの、様々な謎を残して終了はさすがにツラいです。
文章は軽すぎず、重すぎず、わかりやすくて読みやすいという、これほんとに新人?といった感じです。コレは本当にオススメ。
オススメ度:
天征伝 漆黒の守護天使 / 護矢 真
著者:護矢 真
イラスト:こばやし ひよこ
発売日:1995/01
趣味:マンガのネタを考えること、彼氏いない歴:17年、必殺技:なし、人生の好運度:いまひとつ―そんな平凡な女子高校生・水無月あずさが、修学旅行先で白馬の王子様と出会うことに…。しかし、聖なる輝きに包まれた大天使と共に現れたのは、破壊と暴力の予感に包まれた怪しい見習い天使、レン。“なんか、きっと、悪い夢よ…ね”神のみぞ知る…いや、神の仕組んだいたずらか。世界の平和と人類の幸福を護る使命だけでなく、核廃棄物より危険な男までも押し付けられてしまったあずさの運命やいかに。―第三回ファンタジア長編小説大賞佳作受賞者、護矢真が贈る、疾風怒濤の新感覚バイオレンス・ファンタジー。
オススメ度:未読
熱死戦線ビットウォーズ / 葛西 伸哉
著者:葛西 伸哉
イラスト:小野 敏洋
発売日:1995/01
私立誠鵠館高校の三年生上沢鏡一は、夕暮れの公園で一心にフルートを奏でる美しい少女、美環と出会った。その時、少女の前に黒いレザーの上下を着た男が現れ、二人は一瞬の閃光の後『変身』していた。鏡一は偶然にも、地球の存亡をかけた「ビット」たちの闘いに巻き込まれてしまったのだ。空間や物質のエネルギーを、精神の力で切り取り変換させる能力を持った者たち―彼ら「ビット」たちの闘いに巻き込まれた鏡一は、自らの「ビット」能力に目覚めた。彼は愛する者のため、自らも闘うことを決意する。
あらすじや口絵から、90年代によくあるタイプの変身ヒーローオマージュ的なものかと思いきや、アイテムによる変身能力を持った者たちが繰り広げるバトルロイヤルで、平成仮面ライダー的な内容を95年の時点でやっています。
SF的な設定も良いし、主人公たちの淡い恋心の描かれ方も良い。敵も含めてキャラたちが魅力的。
オススメ度:
鋼鉄の虹 彗星城に亡霊は哭く / 甲斐 甲賀
著者:甲斐 甲賀
イラスト:伊藤 明弘
発売日:1995/02
「鋼鉄の虹」シリーズ第2弾という位置づけなのですが、『鋼鉄の虹 装甲戦闘猟兵の哀歌』とは著者も違えば、作風も違うので単巻モノとして紹介します。
『鋼鉄の虹 装甲戦闘猟兵の哀歌』と大きく違うのは、ロボット物ではないということです。とある廃城の謎を巡る物語。
オススメ度:
限外特捜シャッフル 1 / 庄司 卓
著者:庄司 卓
イラスト:沢田 翔
発売日:1995/03
『シャッフル探偵事務所』は暮井稀人と甘津木士郎、さらに親父さんとで組織される町の探偵屋さんだ。だが、彼らが手がける事件の多くは警視庁でも解決不可能な摩訶不思議な事件がほとんどだ。今回もまた奇妙な事件が舞い込んだ。50年前、ある独裁者が不特定多数からの崇拝を得るために使用したという謎の香水『皇帝』を現代に蘇らせようと画策する者がいるという。香水が本当にそのような力を持ちえるのか。稀人と士郎は調査を開始した―。庄司卓の新境地、限りなく今日に近い明日の物語の第一弾。
ナンバリングされていますが、続刊はありません。著者のブログによると、雑誌連載時のアンケート結果が良くなくて、打ち切りとのことです。
ナチスドイツによって開発されていた、それをつけるだけで大衆を魅了する香水を巡る物語。若き天才調香師の野心や狂気が描かれている。受けなかったのは、多分、異世界ファンタジーやスペオペ全盛時に現代を舞台にした私立探偵ものだったことと、物語主体で主役キャラたちの活躍が少なかったことかと思う。
オススメ度:
そんな血を引く戦士たち / 川口 大介
著者:川口 大介
イラスト:戦部 遥
発売日:1995/05
突如コーヒーが人々を襲い始めた。死後の世界「二界」。その二界を武力により征服したメジャー帝国がその侵略の魔の手を地上界に伸ばし始めたのだ。先祖・由井正雪の霊よりその危機を知らされた正雪は、授けられた宝刀を手に、メジャー帝国の怪物どもに戦いを挑む。…がまったく歯が立たない。だが正雪には奥の手が残されていた。“困ったときにはこれを開くがよい”と刀と共に渡された秘伝書があったのだ。さっそく開けてみると、そこにはただひとことだけ書かれていた。―お好み焼きを焼け―…ご先祖さまは正雪に何をさせようというのか。そして地上界の運命は。第六回ファンタジア長編小説大賞特別賞受賞作。日本一の「お・馬・鹿・さ・ん」コメディ推参。
オススメ度:未読
海賊船ガルフストリーム / なつ みどり
著者:なつ みどり
イラスト:米田 仁士
発売日:1995/06
オススメ度:未読
幽幻怪社 / 渡辺 麻実
著者:渡辺 麻実
イラスト:うえだ ひとし、西田 亜沙子
発売日:1995/09
オススメ度:未読
黄金の鹿の闘騎士 / 南房 秀久
著者:南房 秀久
イラスト:沢田 一
発売日:1995/09
「まず、最初に言っておくことは、私の目標は優勝だということだ」新しく<黄金の鹿>騎士団のパトロンとなった青年貴族ハルの言葉に、女奴隷ビアトリスは絶句した――。ビアトリスが所属する<黄金の鹿>はメレ・ルージュ――女奴隷船視が、六人一組となって模擬戦闘を繰り広げる過激な見せ物――の騎士団である。とはいっても、<黄金の鹿>は連戦連敗の最弱騎士団であったのだ。ハルの優勝宣言を冗談としか受け取らなかった<黄金の鹿>のメンバーは、翌日から始まったもう特訓に悲鳴をあげる。はじめ、ビアトリスはその強引なやりかたに反発を感じていたのだが……。ファンタジア長編小説大賞出身の期待の新人が描くロマンティック・スポ根・ファンタジー!
スポーツ系部活物語をファンタジーに落とし込んだような物語。6人1チームでの模擬戦闘という設定ですが、実際は死者が出るので、スポーツというより奴隷を使った見世物的な競技。友情あり、仲間との軋轢あり、恋もありで面白いのですが、素直に楽しめないのは、奴隷という設定に私自身、嫌悪感があるからでしょう。
オススメ度:
太陽超神サンライザー 正義の巨人は大迷惑 / とまと あき・塚本 裕美子
著者:とまと あき・塚本 裕美子
イラスト:西川 秀明
発売日:1996/01
助けた天才科学者から巨大ロボを貰った主人公ですが、そのロボが起こすのは迷惑なことばかり、といった内容。びっくりするぐらい中身のない作品です。バカバカしいだけで面白さは全く無くて物語は盛り上がらず、キャラクターも魅力的でなくて、著者には申し訳ないですがつまらない作品。
オススメ度:
ソーサル・ブラスバンド やつらは大乱調! / 山下 定
著者:山下 定
イラスト:むっちりむうにい
発売日:1996/01
ハリーポッター以前の、魔法学園ものドタバタコメディ。音楽と魔法のかけあわせは面白いのですが、主役となる三馬鹿トリオに魅力がなくて共感ができませんでした。展開もちょっと都合よく進みすぎです。
オススメ度:
とりあえずまとめ
以上、95年1月から96年1月までに出版された単巻作品の紹介でした。
既読作品が少ないながら、今回紹介した中では、滝川羊『神々の砂漠 風の白猿神〈ハヌマーン〉』が圧倒的にオススメ。未完作品なので勧めるのはちょっと考えてしまうのですが、未完でも面白いので、やっぱり勧めておきたいです。
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