さて、今回もアンソロジーですが、短命に終わったスニーカー文庫ミステリ倶楽部のラインナップのひとつ、ホラーアンソロジー『悪夢制御装置』を読んだ感想です。
悪夢制御装置
著者:篠田 真由美、岡本 賢一、瀬川 ことび、乙一
イラスト:藤田 新策
文庫:角川スニーカー文庫(スニーカー・ミステリ倶楽部)
出版社:角川書店
発売日:2002/11
せつなく、可笑しく、おぞましく──それぞれ異なる輝きを放つ4つの恐怖! ジェルソミーナ女王が暮らす森の中のお城で起きた惨劇『ふたり遊び』。消えた友人を捜すナオトとアカネが廃工場で遭遇する戦慄『闇の羽音』。高校生3人が夏の高原で出会った美少女の正体は?『ラベンダー・サマー』、「おうちの階段だけが、落ちて死ぬような気がするの…」姉妹にとって一階は死の国『階段』。鬼才たちによる書き下ろしホラー・アンソロジー。
読んだ感想
ふたり遊び / 篠田真由美
女王ジェルソミーナと騎士ローエングリン、お城を舞台とした姉弟の物語。さまよう父母の幽霊といなくなった弟、この作品こそがイメージしていたホラーでした。
闇の羽音 / 岡本賢一
ちょっとSF的なホラー。表紙とタイトルから、正体は蜂なんだろうなと思っていたら、予想斜め上でした。体に卵を産み付けられるなんて、想像しただけでも身震いしてしまいます。羽音とか虫の蠢きとか昆虫嫌いな私にとっては、これほどの恐怖はなかったです。
ラベンダー・サマー / 瀬川ことび
高校の映研メンバーのひと夏の物語。予定していた女優役に逃げられ、代わりに見つけた美少女がじつは……
ちょっとコミカルというかリリカルというか、ホラーというより、どちらかというと青春小説といってよいのかもしれません。で、この作品は怖くなかったです。そういう意味でいうとホラー失格なのかもしれません。でも、面白かったです。この作者の別の作品を読んでみたいと思いました。
階段 / 乙一
今となってはホラーというより、DV・児童虐待の話です。この作品が発表された当時、そういう言葉があったのかどうかわからないですが。
内容的にはとても怖く、こういう暴力男に憤りを感じます。最後、救いがあってよかったと思うのですが、その救いも犠牲の上で成り立っていると思うと、とても悲しい物語です。
まとめ
まず読み終えたあとに、ホラーの定義を改めて調べてしまいました。何となくイメージしていたホラー小説と違うものが多かったので、これらをホラーと読んでいいのか? というのが、読み終えてすぐの感想でした。
ホラー=恐怖、怪奇とのことで、定義としては結構広い。イメージしていたのは、ゾンビとか貞子とか呪いとか悪霊とかのイメージだったので、考えがずいぶんと狭かったんだなと。
改めて4篇を見渡すと、三者三様の恐怖が描かれていて、面白いアンソロジーでした。