さて、今回はtwitterで色んな人が投稿している、ライトノベル・オールタイム・ベスト100を私も書いてみることにしました。一応、twitterにもベスト50で挙げたのですが、それに対して一言コメントをつけ、今回の選に漏れたものまで書いておこうと思います。
基本的にライトノベル・オールタイム・ベスト50なのですが、検索されやすいようにライトノベル・オールタイム・ベスト100-50という表記にしています。
今回におけるライトノベルの定義を最初に宣言しておきますと、77年のクラッシャージョウ以降のソノラマ文庫、88年以降の少年向けレーベルであるスニーカー文庫やファンタジア文庫など、一般的にラノベレーベルと認識されている文庫レーベルからの作品です。
単巻もの30選
熱しやすく冷めやすい、もしくは飽きっぽい私は、長編シリーズものが苦手です。なのでラノベも単巻ものを中心に読んでいます。それらの中から選んだ作品で、年代順に並べています。
1.風の名はアムネジア/菊地秀行/ソノラマ文庫/1983
人類が記憶を失ってしまって3年後の世界を描く、青春SFロードノベル。ロサンゼルスのとあるシーンが、天野喜孝氏のイラストと相まってすごく好き。後述する「旅をしよう、滅びゆく世界の果てまで。」と比較して読むのも面白いと思います。
2.イース 失われた王国/飛火野耀/スニーカー文庫/1988
一応、ゲームノベライズになるのですが、原作ゲームとは別物で、原作が好きな方たちからは黒歴史扱いされている作品。RPG風ファンタジーの形を借りた青春物語。途中、魔女の誘惑に引っかかって、2日間ほど愛と快楽の行為に没入してしまい、あげくに背中を刺されてしまうというくだりが好きです。
3.コミケ中止命令!/南田操/富士見ファンタジア文庫/1989
某国の王太子が日本来訪時に公務を抜け出し、アニメ関連のお店やスタジオを楽しみ、最後はコミケでひと悶着という、「ローマの休日」の男女を入れ替えたロマンティックコメディ。当時のヲタクへの応援歌的な小説として好きです。
4.時の果てのフェブラリー -赤方偏移世界-/山本弘/スニーカー文庫/1990
ライトノベルがライトSF・ライトファンタジーを志向していた時代の中で、ひときわ輝くハードSF的作品。幼女SFとしても後述の「戦略拠点32098 楽園」と共に評価したいです。
5.黒衣の武器商人/井上雅彦/富士見ファンタジア文庫/1992
雑誌に掲載された3編の連作短編を、作中に挟み込む形で書かれた長編作。短編自体バラエティに富んでいて面白いのですが、単純に短編集にしないで、ジュブナイル冒険長編ものに仕立てたところに面白さがあると思ってます。
6.装甲戦闘猟兵の哀歌 鋼鉄の虹/水無神知宏/富士見ファンタジア文庫/1994
ライトノベルでは珍しいとされるロボットものの名作として挙げたい。スーパーロボット系ではなくて、リアルロボット系。主人公とその先輩の関係性が、アニメ「超時空要塞マクロス」の輝とフォッカー的で、さらに一捻りあるのが好きです。
7.食前絶後!!/ろくごまるに/富士見ファンタジア文庫/1994
タイトルとあらすじから90年代ギャグ作品かと思っていたのですが、設定がぶっ飛んでいるわりに内容は少年ジャンプのバトル漫画的な王道ストーリーの正統派、文章的に多数の実験が散りばめられた異色作。『「さっぱりとしたアスファルト」味の肉ソボロ』とか「なまたさう」とか色々と秀逸。
8.風の白猿神/滝川羊/富士見ファンタジア文庫/1995
ラノベ史における単巻ものの名作としてよく名が挙がる本作。作者いわく、基本路線はガンダム+ラピュタとのことですが、私としてはザブングル感もあります。様々な神話の英雄や怪物の姿形を取り込める、神格筐体の設定が素晴らしい。続きがないことだけが、唯一の不満な作品です。
9.熱死戦線ビットウォーズ/葛西伸哉/富士見ファンタジア文庫/1995
平成仮面ライダーシリーズ的異能力者のバトルロイヤル作品。変身シーンがカッコいいのです! また、作中での宇宙の範囲は地球から約39万kmで、それより外は「ホワイトノイズの海」という設定。こういった設定ひとつとってもカッコよく感じます。
10.恐竜鉄道/吉岡平/ソノラマ文庫/1996
失礼な言い方かもしれませんが、ある種のバカラノベ。ジュラシック・パーク的な現代を舞台にした恐竜もので、作者の恐竜や鉄道・兵器に対する愛情が爆発している作品です。蒸気機関車と恐竜が正面からガチンコでぶつかるバトルは、バカバカしくも楽しいです。
11.俺の足には鰓がある/富永浩史/富士見ファンタジア文庫/1996
特撮ヒーローもの(仮面ライダー)を悪の組織側から描いた特撮オマージュコメディであり、改造人間ラブコメ。悪の組織の描き方が特に面白くて、大佐派と将軍派の派閥争いはあるし、目的が世界征服だけど具体性がなかったりと、このあたりはいにしえの特撮好きにはたまりません。
12.タイム・リープ あしたはきのう/高畑京一郎/電撃文庫/1997
文庫では上下巻に分かれていますが、単行本では1冊でしたので単巻ものとして扱っています。ライトノベルの中にジュブナイルSFの系譜というのがあると思っていて、90年代中盤における重要な作品として評価しています。時間軸の隙間を埋めていくパズル感覚的面白さがあり、かつ高校生の青春も味わえる名作です。
13.ドラゴンズ・ウィル/榊一郎/富士見ファンタジア文庫/1998
ラノベ史におけるファンタジーブーム終焉の頃に登場した作品。主人公と菜食主義で平和主義者のドラゴンとの交流を描くハートフルな物語でありつつも、与えられた価値観をぶち壊すべくあがく人たちの物語でもあります。ドラゴンや選ばれし勇者など、ヒロイック・ファンタジーの従来のイメージを裏切るような、アンチヒロイックファンタジー作品として評価しています。
14.高天原なリアル/霜越かほる/スーパーファンタジー文庫/1999
ひょんなことで声優をすることになった女子高生が人気となり、どんどんと祭り上げられていく中での戸惑いやゲーム業界・広告業界の内実を描いた作品。ライトノベルが多様化してきた時代の作品で、青春もの・ギョーカイものとして楽しいです。
15.戦略拠点32098 楽園/長谷敏司/スニーカー文庫/2001
現在ではSF作家として著名な長谷敏司氏のデビュー作で、初めて読んだ時の感想はガッツリとしたSF。描かれる夏の風景のさわやかさとは裏腹に、最後まで非常にセンチメンタルな物語。幼女SFとしても前述の「時の果てのフェブラリー -赤方偏移世界-」と共に評価したいです。
16.アクアリウムの夜/稲生平太郎/スニーカー文庫ミステリ倶楽部/2002
まずライトノベルなのかということになると思いますが、スニーカー文庫から出版されているのでライトノベル扱いです。あることをキッカケに狂気に囚われていく、2人の少年と1人の少女を描く青春怪奇幻想ジュブナイル小説。青春モノな前半、伝奇小説的な中盤、幻想小説的なラストと3種類の味わいが楽しめます。狂気を感じさせてくれる物語が好きです。
17.アザゼルの鎖/梅津裕一/スニーカー文庫ミステリ倶楽部/2002
聖書の偽典エノク書の記述を模倣した猟奇殺人事件を追う刑事モノ。非常に重い内容で、虐待と猟奇殺人の連鎖が描かれた作品。偽典エノク書を扱うのが厨二病っぽいといえるかもしれないですが、全然ライトノベルらしくない作品で非常にマイナーですが好きなのです。
18.All You Need Is Kill/桜坂洋/スーパーダッシュ文庫/2004
日本での映像化をすっ飛ばして、アメリカでしかもトム・クルーズ主演で映画化されたという名作。内容はいわゆるタイムループもののミリタリーSFなんですが、私としてはSFというよりも、ループする特殊な日常での青春成長小説、ボーイ・ミーツ・ガールの物語ではないかと思っています。
19.砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない/桜庭一樹/富士見ミステリー文庫/2004
私にとって単巻ライトノベル・オールタイム・ベスト1は、この作品だと思っています。親による虐待を扱ったヘビィーな内容で、初出の富士見ミステリー文庫では青春暗黒ミステリーと書かれていました。読んだ後になんとも言えぬ感情を叩きつけてくるような作品だと思っています。また”砂糖菓子の弾丸”というフレーズも秀逸です。
20.ある日、爆弾がおちてきて/古橋秀之/電撃文庫/2005
基本的に長編小説よりも、手軽に読める短編小説が好きなんですが、世の中の多くの人はそうでないみたいで、ライトノベルでは超長編というか超々長編が多いようです。そんな中、こちらの作品は短編集ながら、一般のラノベ好きにも評価が高い作品。表題作の「ある日、爆弾がおちてきて」で描かれている、爆弾の少女の絶望感に共感を覚えました。
21.クレイジーカンガルーの夏/誼阿古/GA文庫/2006
1979年の兵庫県T市を舞台にした、中学生たちのひと夏の物語。爽やかな青春モノかと思っていたら、地方によくある本家が~分家が~跡継が~長男が~といった話の絡む、ちょっと苦い物語で、YA(ヤングアダルト)的な作品。ちょいちょいガンダムの話がでてくるので、ファーストガンダムをリアルタイムで見ている世代向けかも。誼阿古(よしみあこ)という、詳細不明の謎作家ですが、有名作家の別名義じゃないかと思ってます。
22.バニラ A aweet partner/アサウラ/スーパーダッシュ文庫/2007
アサウラ氏といえば大ヒット作「ベン・トー」や最近の「リコリス・リコイル」が有名ですが、こちらの単巻作品も百合作品ということで有名のようです。とあるキッカケで銃・ライフルを手に入れた女子高生2人が、連続狙撃殺人を起こし逃亡、最終的に学園に立てこもり籠城戦を行うという、アメリカン・ニューシネマを思い出させるような作品。ハードなガンアクション小説なのに、読後感は恋愛小説なのが良いです。
23.旅をしよう、滅びゆく世界の果てまで。/萬屋直人/電撃文庫/2008
終末的な世界観の中で旅する、青春SFロードノベル。前述の「風の名はアムネジア」と比較して読んでみると面白いのではないかと思っています。アムネジアの方はSF的な部分に力点が、こちらは青春に置かれているように思えます。両作品には25年の間隔があるのですが、これがライトノベルの変化だなと思うのです。この作品はSF的な部分ではなく、好きなあの子との二人旅的な部分が面白いと思ってます。
24.ロミオの災難/来楽零/電撃文庫/2008
ライトノベルではわりと珍しい演劇部もので、サスペンスフルな作品。部室で見つけた「ロミオとジュリエット」の台本には亡くなったの先輩たちの残留思念があり、怨念にも似た思いが現在の部員たちの心に入り込みむという、ホラー風味の青春恋愛もの。1人の人間に2つの感情がありつつ、役柄を持って劇を演ずるという、感情の3層構造が面白いと思うのです。
25.とある飛空士への追憶/犬村小六/ガガガ文庫/2008
とある飛空士シリーズとされるのですが、追憶だけで単独作品と受け取れるので、単巻ものとして扱ってます。混血の流民でカースト最下層のパイロットと次期王妃の令嬢との身分違いの叶わぬ恋の物語に空戦アクションを絡めた作品。読み終えてまずアニメで見たいと思いました。空戦の描写がリアルです。
26.ペンギン・サマー/六塚光/一迅社文庫/2009
街に古くから伝わる伝説「クビナシ様物語」をめぐる話で、SF的ガジェットを効果的に使った物語。ドラマチックに盛り上がっていく話では無くて、章ごとに視点や記述方式を変えて進み、あれはこういうことだったのかとか、これとこれがつながっていたのかとか、パズルのピースが埋まっていくのを楽しむような構成で楽しめます。
27.紫色のクオリア/うえお久光/電撃文庫/2009
SF作品として評価の高い1冊。短編「毬井についてのエトセトラ」、描き下ろし中編「1/1,000,000,000のキス」、エピローグ的短編「If」の3編で構成される連作短編集。「毬井についてのエトセトラ」は少し不思議系の物語で楽しませてくれるのですが、そこから「1/1,000,000,000のキス」への展開がすごいです。
28.パニッシュメント/江波光則/ガガガ文庫/2011
『ストレンジボイス』、『パニッシュメント』、『ペイルライダー』の3作で「学園三部作」と呼ばれているようですが、それぞれ単独作品なので単巻扱いです。どの作品も苦い味わいの作品なのですが、宗教2世を扱い、ただの青春モノで終わらない結末が好きです。これは色々な読み取り方のできる作品だと思うので、他者の読み方・感じ方を知ることで更に面白くなる作品だと思います。
29.エデンズ・エンド・エクスプローラー/神尾丈治/一迅社文庫/2014
多分あまり知られていない作品で、一迅社文庫をあさっているときにみつけた1冊。地球とそっくりの惑星エデン、その探査用に開発された個人用多目的補助システム(パワードスーツ)E3ギア。それを駆使できる開拓者を養成する学校の生徒たちを描く、ラブコメ風味なSF学園競技バトル物語。パワードスーツの設定などが凝っていて、物語が続けばもっと面白くなっていきそうな作品。
30.彼女が捕手になった理由/明日崎幸/一迅社文庫/2015
ライトノベルでは数少ない野球モノ。しかも、魔球も秘打もハーレムもない、いたって真面目な青春野球小説です。物語はリトルシニアを舞台に、名門チームを去った選手が弱小チームを立て直すという王道的なストーリー。その立て直すのが、試合展開の鍵を握るポジションのキャッチャーを務める少女。青春ものとなると競技以外に色々と絡めたくなるところ、チームでの練習・試合・試合後のやり取りが中心で、私生活にはあまり触れずに野球のみの話で物語が進みます。そのあたりの思いっきりの良さも好きです。作者はこの作品以外には検索しても見当たりませんが、自己紹介で小説家を名乗っているので、既に活躍している作家の別名義ではないかと思っています。
シリーズもの13選
飽きっぽい性格なので、長いシリーズものは苦手で基本避けています。第1巻だけ読んで、これは面白そうと思った作品もあるのですが、その後の長さを考えるとなかなかすべてを読もうと思わず。他者のライトノベル・オールタイム・ベスト100ではシリーズ物がたくさん含まれておりますが、私の場合は少なくなっています。単巻ものは1作家1作品で選びましたが、シリーズものに関してはその限りではありません。
1.クラッシャージョウ/高千穂遙/ソノラマ文庫/1977
私にとってライトノベルを語る時に外せない作品です。中学生の時に読んでハマった作品で、これをライトノベルとするかどうかは置いておき、ライトノベル的な作品の始まりはここからだと思っています。ただ現在、ハヤカワ文庫に移りシリーズは続いているようですが、ソノラマ版の映画ノベライズと第7巻までしか読んでいません。
2.宇宙史シリーズ/清水義範/ソノラマ文庫/1979
清水義範氏のジュブナイル作品は眉村卓氏のそれと並び、大好きなのであります。ライトノベルの括りにいれるかどうかは微妙なのですが、今回はソノラマ文庫から出版されている事を理由にいれることにしました。宇宙史シリーズは全5巻で、5巻でひとつの物語でなく、それぞれ単巻で完結しているシリーズ。第1巻の『禁断星域の伝説』と第4作『絶滅星群の伝説』が大好きで、ジュブナイルSF好きな人にはオススメしたい作品です。
3.魔獣学園/清水義範/ソノラマ文庫/1984
宇宙史シリーズに比べて、グッとライトノベルらしい作品で全2巻。表紙を天野喜孝氏が担当していますし。大学出たての新人教師が担当することとなったクラスには、奇妙な生徒が集まっていた。超能力者、異星人や未来人に加えて、狼男にミュータントはてはスーパーウーマンまで入り乱れて登場するドタバタユーモア作品。清水義範氏のパロディ的ユーモア作品の原点はこれなのかもしれないと思ったりもしています。
4.幻想探偵社シリーズ/清水義範/ソノラマ文庫/1984
作者いわく似非SFミステリーとのこと。主人公が友人と立ち上げた探偵社に依頼される事件は超常現象的なものばかり。それを主人公が助けた、とある星のプリンセスといっしょに不思議な道具を使いつつ解決していく、ミステリとしてはやや反則気味の作品。こちらも清水義範氏的ユーモアでもって描かれており、楽しい作品であります。
5.機動警察パトレイバー/伊藤和典、横手美智子/富士見ファンタジア文庫/1990
TV・マンガ・OVAとマルチメディア展開されたパトレイバーの小説版。伊藤和典氏が手がけた第1巻は映画版のノベライズ、第2巻からは横手美智子氏によるオリジナル作品。押井守氏の色が強いアニメよりも、マンガや小説版の方が好きです。押井守氏が書いた小説版、「TOKYO WAR」以降は読んでいませんので、第5巻までが大好きな作品です。
6.ギャラクシートリッパー美葉/山本弘/スニーカー文庫/1992
自称美少女中学生・美葉と喋るミサイル・ルーくんが、宇宙を巡るコメディスペオペ。全3巻で最後まで笑っちゃう展開でありつつ、道中出会う宇宙人たちの性格や思考に風刺を効かせて、ただのコメディで終わっていないところが素晴らしい。「キノの旅」が好きな人は読んでみるのもいいんじゃないかと思います。なお、エルメスが喋るのはこの作品の影響とのことです。
7.ロケットガール/野尻抱介/富士見ファンタジア文庫/1995
現在ではSF作家として著名な野尻抱介の作品。ライトノベルらしいノリとSFらしい説得力を合わせ持った作品で楽しい。第3巻の地球を見渡せる月のクレーターの外輪山の頂で、主人公たち二人がならんで座りヘルメットを接しながら会話するシーンが特に好きです。
8.フルメタル・パニック!/賀東招二/富士見ファンタジア文庫/1998
私のライトノベル・オールタイム・ベスト3に入る作品のひとつ。ライトノベルにハマったのは後述の「涼宮ハルヒの憂鬱」とこの作品の影響です。ロボットものラノベとしても、学園コメディとしても、ミリタリーアクションとしても、どれをとっても面白く、かつきっちりと完結しているところが素晴らしいです。ちなみに好きなキャラはテッサです。
9.御手洗学園高等部実践ミステリ倶楽部シリーズ/舞阪洸/富士見ミステリー文庫/2000
ライトノベルでミステリは難しいとか成功しないとか言われるようになったのは、スニーカー文庫ミステリ倶楽部の短期での終了と富士見ミステリー文庫の路線変更によるものかと思われます(現在はミステリも多くなっているので、この限りではありません)。特に富士見ミステリー文庫はミステリーとつけたことで、その界隈の人達の期待を背負ってしまい落胆させることになったようです。たぶん、講談社ノベルス的、メフィスト的なものを期待されたのかもしれません。
そんな中この作品はライトノベルらしいキャラクターを使って本格ミステリに挑んだ作品です。謎解き自体はミステリに目が肥えた人からすると、大した事がないのかもしれませんが、ミステリ初心者には充分楽しめると思います。ミステリ界隈の人たちは自分たちを満足させるものがないということで、富士見ミステリー文庫を悪く言い、ミステリ入門向けのレーベルを失ってしまったんじゃないかと思います。
10.涼宮ハルヒの憂鬱/谷川流/スニーカー文庫/2003
私のライトノベル・オールタイム・ベスト3に入る作品のひとつ。2006年くらいに、この作品のアニメを見てアニメ化されていない続きが読みたいと、ライトノベルを読むようになりました。それまでは80年代のソノラマ文庫を別として、「パトレイバー」と「キノの旅」くらいしかラノベレーベルの作品は読んだことがありませんでした。読んでみて思ったのが、ジュブナイルSFの良いところを集めて、現代的な物語に仕上げているなぁ、と。こういったキャラクターたちの活躍を中心とした物語の面白さを改めて感じたのでした。20代以降はライトミステリで、そういった系統の物語は読んでいたのですが、もうすこしマンガ的なキャラ、個性的なキャラの物語に注目させてくれた作品です。
11.先輩とぼく/沖田雅/電撃文庫/2004
ハルヒにハマってから、ブックオフなどで古本を漁り始めた中で見つけたシリーズ。男女入れ替わりもので、その原因が宇宙人によるものという、ちょっとSF風味もありつつ、ラブコメ要素や特撮パロディもありつつで、非常に楽しく読めました。先輩の性格が好きです。
12.ラノベ部/平坂読/MF文庫J/2008
とある公立高校の軽小説部を舞台にした日常系部活小説で、ラノベ愛溢れる作品。ライトノベル・アニメのパロディ・あるあるネタがふんだんに登場し、ラノベ好きを楽しませてくれます。平坂読氏はこのあと「僕は友達が少ない」で大ブレイクを果たすわけですが、その前兆を感じさせるシリーズ。全3巻でコンパクトに纏まっているので、読みやすくておすすめです。
13.神明解ろーどぐらす/比嘉智康/MF文庫J/2010
ハルヒ以降のライトノベルでは、変な部活もの(謎部活ともいう)が流行りました。前記の平坂読「僕は友達が少ない」を始め、「学校の階段」とか「ベン・トー」とか。この「神明解ろーどぐらす」も部活を名乗っていませんが、学校の帰りに寄り道する部活的な集まりを舞台にしたハーレム系日常もの、なんですが。これが第3巻辺りから怪しくなってきて、第4巻での急展開、ありふれたラブコメからサスペンスへの変貌に驚かされます。ラブコメを求める人には進められませんが、全5巻を通して楽しめる作品です。
ジュブナイルSF7選
ライトノベル100選→無理、50選→難しい、ということで、ライトノベルの枠からはみ出してジュブナイルSFを入れることにしました。私としては、ライトノベル以前のジュブナイル作品もライトノベル同等の感覚で読んでいます。好きな純然たるライトノベルが100作挙げられるようになれば、これらは外れることになります。
1.時間エージェント/小松左京/新潮文庫/1975
小松作品というと『日本沈没』や『さよならジュピター』のようなSF大作のイメージでなかなか手が出ませんでしたが、たまたま古書店でこの本を見つけて購入したのがきっかけで短編集を読むようになりました。こちらは連作8編の「時間エージェント」と短編6編で構成されています。表題作は青年誌に連載された作品で、タイムパトロールを主人公にしたドタバタSF。思っていたより軽やかで、お色気あり、コメディありでライトノベルに近しい感じで楽しめます。
2.ねらわれた学園/眉村卓/角川文庫/1977
「なぞの転校生」とならぶ、眉村卓氏のジュブナイルSFの代表作。80年代に薬師丸ひろ子主演で映画化、原田知世主演でTVドラマ化されていて、私と同じ世代の方なら一度はタイトルを聞いたことがあるはずの作品。私は原田知世版ドラマが非常に印象に残っていて、この作品が好きなのはその影響があると思います。本田恭章演じる京極少年が印象的でした。
物語としては、学園を支配するという、ファシズムを意識した生徒会の行動と、それに対抗する主人公たちを描いています。眉村ジュブナイルの中では、一番メッセージ性が強い作品かも知れません。個人的には学園を支配しようとする少女、高見沢みちるが好きです。
3.閉ざされた時間割/眉村卓/角川文庫/1977
眉村ジュブナイルSFの中で一番好きな作品です。「なぞの転校生」「ねらわれた学園」と並んでもっと評価されても良い作品だと思っています。前半のスリリングな展開で引き込まれ、主人公の機転による反撃、余韻を残すラストと今読んでも面白いです。なお、角川文庫版のあらすじはネタバレが書いてあるので、読んではいけません。
4.ミラーマンの時間/筒井康隆/角川文庫/1977
筒井康隆氏のジュブナイルSFといえば、「時をかける少女」が有名ですが、意外とあっさりとした作品で、実はそれほど好きではありません。筒井康隆氏らしいジュブナイルSFということで、「ミラーマンの時間」を選びました。高校生向けの雑誌に書かれたものが多くて、ちょっとブラックな味わいのある作品が多く収録されています。
5.青いテレパシー/豊田有恒/コバルトシリーズ/1978
コバルトシリーズをラノベレーベルにいれるかどうか、というのは難しいところで、80年代中盤以降少女向けの性格が強くなったので、ここではラノベレーベルとせず、ジュブナイルSFの系統にいれることにしました。豊田有恒氏もジュブナイルSFをたくさん書いている作家です。こちらの作品集は表紙や本文のカットをマンガ家の寺沢武一氏が手掛けているのが特徴。収録されている「めぐりあい」という短編が大好き。70年代のスーパーカーブームや「サーキットの狼」世代に響く公道バトルものです。ラストが切ない。
6.あたしの中の……/新井素子/コバルトシリーズ/1981
新井素子氏はライトノベルの源流として重要な作家であるとは思っているのですが、SF方面への流れ(「グリーン・レクイエム」「……絶句」など)や少女小説への流れ(「星へ行く船」「ブラックキャット」)に比べ、ライトノベルへの直接的な影響は少ないと最近は考えています。とはいえ、そういったことは置いておき、デビュー作である「あたしの中の……」はその語り口を含め斬新ですし、面白いのです。
7.狼の紋章/平井和正/角川文庫/1982
もともと「狼の紋章」は70年代にマンガの原作と書かれたものをベースに、小説として出版されたとのこと。80年代なかばにリバイバルブームがあって、その頃に初めて読んだと思います(角川文庫で文庫化されたことがきっかけなのかも知れません)。基本的に学園モノで、強力な力をもった狼男というキャラクター性の強い、ライトノベルに近しい内容です。「狼のレクイエム」以降はほとんど覚えていなくて、シリーズとしてよりも「狼の紋章」単独で好きです。
今回選に漏れたもの28作
もとから100選は無理だろうと思い、50選を目標にタイトルを挙げていったのですが50を超えてしまい、きり良く50選にするために今回選に入れなかったものを記しておきます。ジュブナイルSF7選を削って、これらの中から7作を選ぶことも考えたのですが、7作に絞ることができなかったというのも選外となった理由のひとつです。100選になったら入るかも知れませんし、新たなる作品が登場することによって、選外になる可能性もある作品です。
1.妖神グルメ/菊地秀行/ソノラマ文庫/1984
単巻ものは1作家1作品を基本としたので「風の名はアムネジア」を選び、こちらは選外としました。初期菊池単巻作品は「風の名はアムネジア」「インベーダー・サマー」「妖神グルメ」と3つあるのですが、「インベーダー・サマー」がセンチメンタルすぎてちょっと好みでなく、「妖神グルメ」のほうが、ちょっとバカラノベっぽくて好きです。一応、クトゥルフでグルメもの!という斬新な作品です。たしかにクトゥルフの神々は、どちらかというと海鮮っぽいですものね。
2.限外特捜シャッフル 1 かぐわしきかな「皇帝」/庄司卓/富士見ファンタジア文庫/1995
ナンバリングされているのですが、1巻で終わってしまった作品。ナチスドイツによって開発されていた、それをつけるだけで大衆を魅了する香水を巡る物語。敵役となる若き天才調香師の野心や狂気が描かれていて、こういう物語は好きです。ラストも予想外で良い。私立探偵ものですが、主役コンビの活躍が少ないところが難点なのかも知れません。
3.機械どもの荒野〈メタルダム〉/森岡浩之/ソノラマ文庫/1997
荒野をかける機械に銃を持もったハンター、西部劇+ロボットものの乾いた世界感は、アニメ『ザブングル』やRPG『メタルマックス』に近いものを感じます。 物語は、ある日捕らえた機械が話し出した「機械どもの反乱」のきっかけとなった謎を解くというもの。世界の中心に迫っていき、その先に待っていたものは?!という展開がなかなかスリリングです。
4.若葉色の訪問者/麻生俊平/スニーカー文庫/1999
こちらはジュブナイルSFの流れをくんだ作品として評価しています。どこか懐かしい感じのする、侵略モノSFです。派手さはなく、少年の心の動きを丁寧に描いた物語でちょっと地味ながらも良作だと思ってます。
5.キノの旅/時雨沢恵一/電撃文庫/2000
図書館などでも置かれることの多い、誰にでもおすすめできる「安心のライトノベル」の代表作といえるかも知れません。面白いのは間違いないのですが、5巻ぐらいで飽きてしまって、その後読んでいません。大好きか?と問われるとハイとは言いづらく、ライトノベルの客観的なベストに挙げることはできるのですが、個人的なベストにはどうなんだろう、最新刊まで全部読んでいないので、わからないという評価です。
6.アース・リバース/三雲岳斗/スニーカー文庫/2000
タイトルが既にネタバレ的な作品なので、驚きという意味ではマイナスなのですが、こういったロボットの登場するSFファンタジーは好きです。ガンダム以降の80年代ロボットアニメをたくさん見てきた影響でしょう。また、2000年前後のスニーカー文庫の単巻SFものはわりと当たりが多いような気がします。電撃文庫のSF作品とはまた違った魅力があるような気もします。
7.天知未来がいる街シリーズ/田村純一/富士見ミステリー文庫/2000
富士見ミステリー文庫の創刊ラインナップの一つで、アルカナという、占い以上超能力未満の能力を持つ少女が事件に巻き込まれていく物語です。初期富士ミスの中で好きな作品のひとつ。物語自体に残酷な展開が多く、今で言うイヤミスに近い雰囲気で、苦味を持った物語自体はもっと評価されてもいいのにとも思います。
8.若草野球部狂想曲/一色銀河/電撃文庫/2000
ライトノベルにおける野球もののパイオニア。物語は能力のある選手が強豪高校から弱小高校に移り、強豪高校を倒すという王道的ストーリー。高校野球において、女子部員がいるというのが現実的にはありえないのですが、いかに女子部員を活躍させるかをきちんと考えていて、それがライトノベルらしい面白さにつながっているような気がします。キャラ立ちというラノベらしさと、スポーツモノが上手くブレンドされていると感じる全4巻の作品。
9.古典部シリーズ/米澤穂信/角川文庫/2001
読んだのはスニーカー文庫ミステリ倶楽部版ではなくて、すでに角川文庫に移ってからで、日常の謎系作品のひとつとして手に取りました。北村薫氏の「円紫さんと私シリーズ」から広まった「日常の謎」を、学園モノに持ち込んだところが素晴らしいと思います。それまでの学園ミステリというと、「人が死んで少年探偵が謎を解く」パターンが多かったような気がします。ただ、主人公の省エネ主義的な言動があまり好きではないんですよね。
10.Missing/甲田学人/電撃文庫/2001
これはベスト50にいれるかどうか最後まで迷った作品。ライトノベルでホラーは珍しく、民俗学やオカルトなどを絡めた物語はちょっと残酷なシーンもありましたが、全13巻最後まで面白かった記憶があります。メディアワークス文庫から新装版が近年出版されたので、もう一度改めて読み直して見たいと思っています。多分、今読んでも面白いはずです。
11.クリスタル・コミュニケーション/あかつきゆきや/電撃文庫/2003
これもジュブナイルSFの系譜ということで評価したい作品。超能力者の悲哀を描いた青春恋愛ストーリー。派手さはないけど、心にしみる作品です。
12.乃木坂春香の秘密/五十嵐雄策/電撃文庫/2004
これもベスト50にいれるかどうか最後まで迷った作品。不思議要素のないラブコメはあまり好きではないのですが、完結まで読んでしまいました。それだけ魅力的な作品だったということかと思うのですが、今となっては何がそんなに惹かれたのか、自分自身ではわかりません。オタクを隠さなければならないもの、として扱うのが、オタク側の人間としては逆に面白かったのかも。アニメも好きでしたし、そこから派生した声優ユニットN’sも好きでしたし、植田佳奈さんと清水香里さんのラジオ「まるなげ」も好きでした。
13.まい・いまじね~しょん/電撃コラボレーション/電撃文庫/2008
電撃コラボレーションというのは、雑誌『電撃hp』『電撃文庫MAGAZINE』誌上にて行われた企画で、「電撃作家陣が同じテーマ&同じシチュレーションのもと、コラボレーション作品を描く」がメインコンセプトです。同じテーマをもとにしたアンソロジーと考えていただければ。電撃コラボレーションとして文庫化されたのは3冊で、その中で一番好きなのがこの作品。お題であるイラストをもとにした、豪華作家陣の競作集です。
14.俺の妹がこんなに可愛いわけがない/伏見つかさ/電撃文庫/2008
こちらもひとつの時代を築いたといって過言ではない作品ですが、途中までしか読んでいません。面白かったのですが、やはり途中で飽きてしまって、リアルタイムで追うのをやめてしまいました。ライトノベルの客観的なベストには間違いなく入る作品だと思います。黒猫派です。
15.ベン・トー/アサウラ/スーパーダッシュ文庫/2008
これも最初の方しか読んでいないので、評価が難しいのですが、読んだところまでは面白かった記憶がありますし、半額弁当の争奪戦というコンセプト自体が面白くてよいですね。アサウラ氏の作品はハズレ無しの印象があります。
16.4月、それは──☓☓☓☓/電撃コラボレーション/電撃文庫MAGAZINE文庫/2009
こちらも電撃文庫のアンソロジーですが、文庫としては発売されておらず雑誌付録なのでやや反則気味のセレクト。ただ電子書籍として販売されています。お題は『「4月、それは──」に続く言葉を考えてタイトルとし、そこから湧き上がったイメージを作品にすべし』とのこと。縛りが厳しくないので、バラエティあふれるアンソロジーになっています。
17.僕は友達が少ない/平坂読/MF文庫J/2009
これはリアルタイムで大好きだった作品ですが、最後の方で心が離れてしまった作品でもあります。「俺妹」とおなじく、00年代後半を代表するラブコメだと思っています。が、個人的ベストにいれるべきかどうか迷うところです。
18.ぷりるん。~特殊相対性幸福論序説~/十文字青/一迅社文庫/2009
「第9」シリーズなんてまとめ方がされてはいますが、それぞれ単独で楽しめる作品で、こちらはその第1巻にあたります。青春ものではありますが、万人向けではない作品で、「俺妹」や「はがない」が表のラブコメ代表作なら、こちらは裏のラブコメ代表作じゃないかと考えます。
19.スキュラ・ダークリー/六塚光/一迅社文庫/2010
単巻ものは1作家1作品としたので、選に漏れた作品。ジャンルでいえばSFミステリーになるのかも知れません。地軸転倒後の日本地域を舞台に、海獣と吸血鬼の戦いを、とある殺人事件をきっかけとしてミステリ風に描いてます。最終的なバトルは熾烈なもので、なかなかに楽しい。ミステリとしては反則かもしれないですが、物語としては面白くて。地軸転倒後の日本地域や吸血鬼の設定がすでに面白いので評価しています。
20.ストレンジボイス/江波光則/ガガガ文庫/2010
こちらも単巻ものは1作家1作品としたので、選に漏れた作品。江波光則の「学園三部作」は『パニッシュメント』>『ストレンジボイス』>『ペイルライダー』の順番で好きです。この小説は『パニッシュメント』に比べるとエンタメ性が低く(それが悪いわけではない)て、読むと心がザワつくし心地よく楽しめない気がします。エンタメ小説じゃなくて純文学的なものとして面白いと感じます。
21.こうして彼は屋上を燃やすことにした/カミツキレイニー/ガガガ文庫/2011
「オズの魔法使い」のキャラや物語に重ね合わせて、教室に居場所のない少年少女を描いた青春小説。YA(ヤングアダルト)小説的な評価です。詳しく書くとネタバレ的なことになるので、ここでは控えておきます。
22.パンツブレイカー/神尾丈治/一迅社文庫/2011
「半径2m以内に近づくものの下着を消し去る」能力を持った少年を主人公とした、異能学園ラブコメなのですが、意外とマジメに超能力者の悲哀が描かれます。一見バカラノベっぽく見えますが、内容はいたって真面目です。エロ路線に走ってしまった一迅社文庫ですが、意外と面白いのがあったりします。全2巻なのですが、第2巻がイマイチで、読むなら1巻だけでも良いかも。
23.終わらない夏を終わらせる五つの方法/電撃コラボレーション/電撃文庫MAGAZINE文庫/2013
こちらも電撃文庫のアンソロジー。雑誌付録のみで、文庫も電子書籍も発売されていないので完全に反則のセレクトかもしれません。中古では手に入ると思います。野球、陸上、ロッククライミングとスポーツを題材にした物が多いのが特徴の一冊で、ロッククライミングを題材にした、宇野朴人「アトラスの夢」が好きです。
24.男子高校生で売れっ子ライトノベル作家をしているけれど、年下のクラスメイトで声優の女の子に首を絞められている。/時雨沢恵一/電撃文庫/2014
ライトノベル業界を扱った作品といえばよいのでしょうか。この時期もしくはこの後、作家ギョーカイものがいくつかあったような気がするのですが、この作品が嚆矢となったのでしょうか? 作家あるあるから、サスペンスな展開を経て、最後はラブコメに着地という、楽しい作品です。
25.下読み男子と投稿女子/野村美月/ファミ通文庫/2015
青春ものとしても、ライトノベル作家入門としても楽しめる作品。何事も批判的にみてしまう私としては、これを読んで色々と反省しないといけないと思いました。作品の良いところを掬い上げる能力ってあると思います。私にはあまりないのでしょう。それにしても作中作『ぼっちの俺が、異世界で、勇者で魔王でハーレム王』を全文読んでみたいと思いました。
26.SE-Xふぁいる/五十嵐雄策/電撃文庫/2015
攻めたタイトル同様、内容もラノベとしてはなかなか過激な作品。基本的に五十嵐作品が好きなので、好意的に捉えています。一応、90年代後半にヒットした海外ドラマのパロディで、超常現象を求めて行動するとそこはエロ現場、でも実は… といったドタバタエロコメ。第1巻がエロ成分が多くて、第2巻になってエロ成分が減って、わりとフツーの作品になってしまったのが残念。
27.ステージ・オブ・ザ・グラウンド/蒼山サグ/電撃文庫/2016
野球ラノベの名作のひとつ。小学生の時の野球仲間が高校生になり再び集まって、また野球を始める物語。萌えもハーレムもなくて、直球勝負の野球もの。YA(ヤングアダルト)的な少年たちの成長を描いた青春モノでなく、「努力・友情・勝利」をテーマにした少年漫画的な展開で面白いです。
28.こぐちさんと僕のビブリアファイト部活動日誌/峰守ひろかず/電撃文庫/2017
一応、「ビブリア古書堂の事件手帳」のスピンオフで、栞子もちょこっと登場するけど全くの別物。本家の古書に関するミステリと違い、少年少女のコンビが「ビブリアファイト」という架空の書評競技で名作をオススメする話です。普段ラノベしか読まない層に、過去の名作児童文学(以外もある)を知ってもらうために書かれた本ではないか?と考えています。美少女だらけのハーレム構造に、横暴な生徒会長、書評バトルを中心とした展開などラノベのテンプレを使いつつ、過去の名作に新たな解釈を与え、興味を持ってもらえるようにしています。これも第2巻がちょっとイマイチかなと。
まとめ
というわけで、個人的なライトノベル・オールタイム・ベスト50+28でした。SF系の作品と青春ものが多くて、異世界ファンタジー、純然な恋愛もの・ラブコメが少ないのが特徴でしょうか。異世界転生ものは全くありませんね。
やはり2010年以降、特に20年代の作品の読書量が足りないですね。これはお金があまりなくて新刊を買えないというのもありますし、新刊を買うのと同じ金額で中古で古い作品を買うほうが楽しめるだろうという考えからです。
50代のおじさんが10~30代の人向けに書かれた最近の本にはやはり共感しにくいのかも知れませんし。そのあたり90~00年代の作品のほうが性にあうというか、共感を覚えやすいというか、自分にあっているような気がします。故にこのようなチョイスになっています。