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ラノベとエロと長文タイトルと【ライトノベルを考える】

さて、今回はちょっとライトノベルとエロについての話です。

エロいタイトルの多い角川スニーカー文庫23年4月のラインナップ

きっかけは、とある学生さんのつぶやき。

「角川スニーカー文庫の23年4月のラインナップを見て、なんだかなぁって気分になりました」といった内容です。

件のつぶやきでは、タイトルだけでありイラストについては言及されていないのですが、ラインナップを画像で見ると、こんな感じです。

・浮気していた彼女を振った後、学園一の美少女にお持ち帰りされました
・冴えない僕が君の部屋でシている事をクラスメイトは誰も知らない3
・時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん6
・親友の妹が官能小説のモデルになってくれるらしい2
・隣の席のヤンキー清水さんが髪を黒く染めてきた
・女友達は頼めば意外とヤらせてくれる
・敵のおっぱいなら幾らでも揉めることに気づいた件について
・メルヘンザッパーデストロイヤー 英雄になり損ねた男、最底辺スラムで掃除する
・継母の連れ子が元カノだった10 手を伸ばせれば君がいる
・『おっぱい揉みたい』って叫んだら、妹の友達と付き合うことになりました。4

以上、タイトルを読んでいただくと分かる通り、直接的なエロ表現が多くて下品だなぁという印象です。若い子が辟易しているくらいですので、やりすぎじゃないかと私も思いました。それと同時にライトノベルの未来が悪い方に向かわないと良いけど、とちょっと心配に。

こんなふうに思う

ダラダラと書くと長いので、まずはコンパクトに今回思ったことをまとめると、

  • エロいライトノベルは昔からある。
  • 00年代からは表紙イラストにも、そこそこエロい(巨乳、パンチラ寸前の太もも)のが増えてきた。(口絵にエロは80年代からある)→見た目のエロ化
  • web小説のPV稼ぎに使われる、あらすじのような長文タイトルで露骨なエロフレーズが使われるようになり、それがそのまま書籍として刊行されるようになった。→タイトルのエロ化
  • 結果、ジュブナイルポルノに思えてしまう作品が増えてきた。

こんな感じでしょうか。今回のスニーカー文庫のラインナップはちょっと偏りすぎているように思いますが、ある程度の時代の流れに沿っているような気もします。ただ、あまりに露骨なものが目立つようになってくると、「有害図書・不健全図書」に指定されないか、ちょっと心配になります。あと、確実に学校図書館、公共図書館では入れてくれないですね。自分たちで首を絞めることにならないといいんですけど。

もうひとつ気になるのは、タイトルはエロいけど中身はエロくないという場合。エロタイトルでそういうのを求めない読者を遠ざけ、エロを求める読者を落胆させてしまうと、一体誰が得するのだろうと。

本が売れなくなってきた時代に、目先の売り上げだけを考えて今回のラインナップになったとしたら、ライトノベルに未来はないんじゃないかと思った次第。スニーカー文庫の編集者はどういう意図でこのラインナップにしたのか、他の出版社や編集者はこの状況をどう思っているのか知りたいですね。

エロいライトノベルの歴史

ここからは詳しく。

私はライトノベルのエロを否定する気は全くございません。ここで問題と思うのは”露骨すぎる”エロタイトルです。10代を対象としているので、読者の欲望を満たすためのエロ表現や、小説の中の人物が体験するエロ行為があるのは当然あって良いと思うのです(あまりに倫理観の狂ったようなのは除く)ただ、度が過ぎるとジュブナイルポルノになってしまいますが。

件のつぶやきに関して、最近のラノベは~とか、最近のスニーカー文庫は~とか、色々と言われていますが、ライトノベルという名前が誕生する以前から、10代向けエンタメ小説にはエロい小説はもちろんありました。

80年代だと、ソノラマ文庫の菊地秀行・夢枕獏作品が有名でしょう。ソノラマ文庫ではまだおとなしい方ですが、ノベルスになるとエロ全開のものもありました。ヴァンパイア・ハンター”D”が好きで、菊地秀行のノベルスに手を出してビックリ! なんて経験をした人はたくさんいそうです。

私がトラウマになったのは、富野由悠季『リーンの翼』です。最初はカドカワノベルズから出版されたのですが、「聖戦士ダンバイン パラレルストーリー」なんて表紙に書いてあり、ダンバイン的なヒロイックファンタジー的なものかと思いきや、今読んでもなかなかにハードなエロ行為が描かれています(後にスニーカー文庫の前身、角川文庫・青帯に収録)

もうひとつ角川文庫から出版された、永井豪原作「ゴッドマジンガー」全10巻。最初の頃はそれほどでもないのですが、中盤からエロ描写が増えてきて、口絵に登場する女性の裸が多くなってくるという……

第4巻あたりから、エロ描写が増えてきます。

スニーカー文庫誕生直前の角川文庫・青帯時代にも、越沼初美『由麻くん、松葉くずしはまだ早い』となかなかすごいタイトルの作品があります。なお、内容は全然エロくなくて、恋愛もの少女小説です。この場合は、タイトル詐欺的ですね。

88年から90年代にかけて人気を博したのが、秋津透『魔獣戦士ルナ・ヴァルガー』。私は未読ですが、これもエロいライトノベルという話題になれば、必ず挙がるタイトルです。

00年代だと、スニーカー文庫以外ですが、新井輝『ROOM NO.1301』や豪屋 大介『デビル17』などもあります。00年代後半から展開された一迅社文庫では、十文字青の『ぷりるん。〜特殊相対性幸福論序説〜』や『絶望同盟』、糸緒思惟『五年二組の吸血鬼』など。こちらはエロ路線全開といった表紙イラスト&口絵です。

内容はエロくないけど、イラストが煽情的。

完全にアウトなやつ。

10年代以降、私は詳しくないので調べてみたところ、↓こんなサイトがあったので、興味ある方は読んでみてください。

エッチな一般向けライトノベル30選! エロい描写が多いラノベをまとめてみた

10年代もスニーカー文庫に限らず、それなりにエロいライトノベルはあるようです。ただし、タイトルはそれほど露骨ではありません。このあたりが最近のものとは違うようです。

カバーイラストについて

80~90年代のライトノベルでは、それほど表紙イラストはエロくありません。ビキニアーマーのお姉さんはそれなりにいたけど、そこまでエロは押し出されていませんでした。00年代あたりから、エロを意識した表紙イラストが増えてきているように思えます。今回調べていて、ちょっと気になったのが、2018年の出来事。

ライトノベルとエロの関係 ─好きなら、言っちゃえ!! 告白しちゃえ!!

ライトノベルとエロ、そして表紙イラストについて。 ──WINDBIRD::ライトノベルブログ

「ラノベ表紙のゾーニング」の話をしてる人のうち何割が実際に本屋に行って現場見た上で意見を述べてますか? ──頭の上にミカンをのせる(&1年かけて整体する)

論争となった元のツイートがないので詳しくはわからないですが、ライトノベルの表紙イラストとゾーニングについて論争となったようです。ちなみにきっかけとなった『境界線上のホライゾン』の表紙イラストに関しては、私50代のおっさんですが、エロくは感じませんが気持ち悪いと以前から思ってました。誇張されすぎた巨乳や体のラインがでるぴっちりスーツは、拒否反応を起こす人がいるのはわかる気がします。

ここで注目したいのは、それなりにエロなライトノベルの表紙イラストを、エロく思う人とエロくないと思う人に分かれていること。これはエロに対する基準が人それぞれなので当然。そして、twitterのやり取りの中で「エロいものを見せたくないなら、ライトノベルコーナーに(子供を連れて)行くな」といった発言がされていること。

ライトノベルの表紙はエロく感じても当然という空気が、10年代には出来上がっているように感じます。

そして、露骨なタイトルに

「小説になろう!」や「カクヨム」など、小説投稿サイトからの書籍化が活発になりだしたのは、10年代にはいってからでしょうか。当初は異世界転生モノばかりだった印象ですが、最近ではラブコメが多くなってきている印象です。

この小説投稿サイト作品の特徴は、なんといっても長いタイトル。あらすじをわざわざクリックして読んでくれる人が少ないから、タイトルをあらすじのようにして作品の特徴をわかってもらうというのが、その意図のようです。

で、それが結局どの様になってきたかというと、「NTR」「セフレ」「メス」「奴隷」「おっぱい」など、PVを稼ぐためのエロを想像させるフレーズが躊躇なく使われるよう。これは私が以前「カクヨム」をよく読んでいた時に目にしたフレーズです。なお、「小説になろう!」は全年齢対象で、R-18作品は別サイトになりますので、こちらはそれほど過激ワードはありません。

多分にPVを稼ぎたい(ランキング上位に来るためにはとりあえずクリックしてもらわないといけない)ため、こんな事になってきたのでしょう。それがそのまま書籍化されたのが、今回問題になったスニーカー文庫のラインナップというわけで。

ちなみに「冴えない僕が君の部屋でシている事をクラスメイトは誰も知らない」のカクヨムでのタイトルは、「陰キャの僕にセフレがいる事をクラスの君達はまだ知らない」です。少しは配慮しているのでしょう。

もともとエロく感じて当然な表紙イラストが多いのに、これらのように露骨なタイトルが加わったことで、さらにジュブナイルポルノ化したように受け取られることになったわけですね。

こんなのを中学生あたりが読んでいたら、昔ならPTA案件になったんじゃないかと思う次第です。あまりやりすぎは良くなくて、編集側もそれなりの配慮をするべきだと個人的は思います。

最後に

最後にエロと関係ないんですが、今回のスニーカー文庫のラインナップ、10作品中9作品が小説投稿サイトからの書籍化です。それなりにPVを稼いでいるので、売上の目処が立ちやすいのだろうけど、はたしてそれで良いのかなと。

小説自体がネットで読めるなら、書籍化する意味はあるのかなとも思ったのですが、イラストがつくとなると作品ファンは手にとるのでしょう。でも、ほんとにそんなので良いのかなと。それにしても女の子のイラストは、巨乳にするか、太もも見せるかしないとダメという決まりがあるのでしょうか。まぁ、そうすれば手に取ってもらえるというデータがあるのかもしれませんが。

これから先、ライトノベルはどうなるのやらと思いつつ、私は最近のライトノベルにはあまり興味はなくて、過去の作品を漁るのみなので、どうなってもいいんですけどね。

最後の最後にちょっと過激な意見を。ジョニー・ロットンの”ロックは死んだ”よろしく、”ライトノベルは死んだ”と私は思ってます。2010年代以降のなろう系あたりからは、もうライトノベルだけどライトノベルではないと。

ライトノベルという言葉ができたのが、「こんなのSF・ファンタジーじゃない、俺らの好きなSF・ファンタジーと一緒にするな」というあたりにあったとするならば、「こんなのライトノベルじゃない、俺の好きなライトノベルと一緒にするな」ということで、新しく定義する言葉がほしいなと思ったりしています。

と書いてみたのですが、一度投稿したあとよく考えたら、今のライトノベルは今の10代に向けて書かれていると考えれば、50過ぎのおっさんが共感できなくて当然か。10年代あたりまでの作品はそれなりに歳を喰っていても楽しめたんだがなぁという思いもあり、難しいところです。

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