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電撃コラボレーション『まい・いまじね~しょん』を読んで【ラノベ・アンソロジー】

ライトノベルのアンソロジーに興味を持って、早速入手した電撃コラボレーションの『まい・いまじね~しょん』読んでみました。

電撃コラボレーション

もともとは雑誌『電撃hp』『電撃文庫MAGAZINE』誌上にて行われた企画で、「電撃作家陣が同じテーマ&同じシチュレーションのもと、コラボレーション作品を描く」がメインコンセプトです。wikipediaによると、かなりの企画が開催されているようです。

その中で電撃文庫創刊15周年記念企画として、2008年に『まい・いまじね~しょん』『MW号の悲劇』『最後の鐘が鳴るとき』の3企画が文庫化されました。その後『電撃文庫MAGAZINE』では「まるごと1冊“電撃文庫”」として、アンソロジー企画がそのまま付録になることもあったようです。

まい・いまじね~しょん

発売日:2008/08

はじまりは、一枚のイラストだった…。手紙を手にして背中あわせで佇む少年と少女。この、西E田の描いた一枚のイラストからすべてがはじまった。電撃作家11人と、イラストレーター6人に依頼されたのは、「このイラストから想起された物語を、文章・イラストで紡ぎ出す」というかつてないもの。果たして、いかなる物語が紡ぎ出されるのか…?「電撃hp」で好評を博した人気企画「電撃コラボレーション」、待望の文庫化第一弾。

雑誌「電撃hp」Volume.38(2005 10月号)に掲載された企画。雑誌掲載時は、うえお久光/有川浩/有沢まみず/古橋秀之/成田良悟の5作品だったようです。文庫化にあたり5作品は加筆されて収録。それ以外の作品は描き下ろしのようです。

収録作品
お題イラスト / 西E田
カラーイラストコラボ1 / むにゅう
カラーイラストコラボ2 / 京極しん

ラブレターズ / うえお久光
先生かく語りき / 時雨沢恵一
恋のフレーズは紙一重!? / 上月司
イラストコラボ1 / 田上俊介

恋愛のカミサマ / 有川浩
代理戦争とその人選における諸問題 / 中村恵里加
僕とあなたの天体観測 / 五十嵐雄策
イラストコラボ2 / さそりがため

SMOKING CHAIN / 有沢まみず
イラストコラボ 3 / 三日月かける
タカチアカネの巧みなる小細工 / 柴村仁
守ってくれる? アダムスキー / 古橋秀之

シンデレラ / 岩田洋季
イラストコラボ4 / 山本ケイジ
クランクはいつもアップアップ / 成田良悟

正式なタイトルは「まい・いまじね~しょん」です。検索時に「まい・いまじねーしょん」とすると電子書籍などは検索に挙がりませんのでご注意を。※電子書籍化されていますが、前後編で分冊になっています。

読んだ感想

お題は表紙にもなっているイラスト。表紙ではトリミングされていますが、カラー口絵に正式なものが収録されています。「学校の靴箱の前に背中合わせで立つ男子と女子。その手には手紙らしきものが。その2人の周りには宇宙人が乗った宇宙船らしきものが2つ飛んでいる」といったイラストです。

それぞれの作品の簡単な感想と著者の略歴を。

ラブレターズ / うえお久光

幼なじみ同士のラブレターをめぐる物語。クラス全員にラブレターを渡すという男子、その真意は? UFO・宇宙人要素無しでストレートなラブコメになっています。トップバッターとして堅実な印象です。もうちょっとハチャメチャさや不思議要素があっても良いと思いますが、青春恋愛モノとして楽しく読めました。

うえお 久光 2002年2月『悪魔のミカタ 魔法カメラ』デビュー、同シリーズが人気に。2009年出版の『紫色のクオリア』は、今もなおSF作品として高い評価を受けています。2010年以降、作品の発表はありません。

先生かく語りき / 時雨沢恵一

男女2人の手紙のやり取りシーンを宇宙人側から描く、風刺の効いたコメディタッチのSF? お題のイラストから、ラブコメにしないところが素晴らしい。

時雨沢 恵一 2000年に『キノの旅』でデビュー。現在も続く『キノの旅』は電撃文庫のみならず、ライトノベルを代表するシリーズ作品と言え、アニメ化もされています。それ以外にも「学園キノ」「アリソン」など人気作多数。現在は電撃文庫「ソードアート・オンライン」のスピンオフ作品「ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン」が人気です。

恋のフレーズは紙一重!? / 上月司

靴箱に入っていたラブレターをめぐる、オーソドックスな感じのラブコメ。宇宙人の使い方もわりとオーソドックスか。

上月 司 2004年『カレとカノジョと召喚魔法』でデビュー。代表作に「れでぃ×ばと!」シリーズ。現在も電撃文庫で「世界征服系妹」を執筆されています。

恋愛のカミサマ / 有川浩

姓が同じでクラスでの席が隣同士になった男女のラブコメで、さすがの有川浩作品。女子がメガネをかけていることも物語の展開にうまく利用しているし、宇宙人(宇宙船)の使い方もひねっていて、上手いなと。

有川 浩(現在の表記は有川ひろ) 2004年『塩の街 wish on my precious』でデビュー。説明不要の人気エンタメ小説作家と言っても良いでしょう。代表作に、「塩の街」を含む自衛隊三部作、『図書館戦争』シリーズ、映画化もされた「阪急電車」など。

代理戦争とその人選における諸問題 / 中村恵里加

タイトル通り、宇宙人が代理戦争のために男女の靴箱に封筒を入れて……という内容。ラブコメにせずにコメディタッチで物語が進みますが、好みの分かれる作品になっているかも。ゲームネタなのか、ちょっとわからないネタが複数あって、ちょっと楽しめませんでした。

中村 恵里加 1999年『ダブルブリッド』でデビュー。発表作品は少なく、デビュー作が代表作。2013年の『見る人』(電子書籍のみ)発売以後、目立った活動はありません。

僕とあなたの天体観測 / 五十嵐雄策

オーソドックスなラブコメに見せかけて、最後にしっかりとひっくり返してくれる作品。登場する女子キャラがわりとエキセントリックで、ライトノベルらしくって良い。収録されたラブコメテイストの作品の中では、有川浩作品と1・2を争うくらい好きです。

五十嵐 雄策 2004年『乃木坂春香の秘密』でデビュー。同作はアニメ化もされるヒット作品に。それ以降も、電撃文庫・メディアワークス文庫で多数の作品を発表。現在も電撃文庫で活躍中。

SMOKING CHAIN / 有沢まみず

オカルト好きな幼なじみの彼女、そこに忍び寄る新興宗教と謎の煙。明るいタッチが多い収録作品の中で、異彩を放つちょっと怖いホラーテイストの作品。「げげげげげげげげ」が怖い! 収録作の中で一番読み応えがあり、この作品がベストと思います。

有沢 まみず 2001年『インフィニティ・ゼロ 冬〜white snow』でデビュー。代表作はアニメ化もされた『いぬかみっ!』。現在はアニメの脚本などをメインにしています。

タカチアカネの巧みなる小細工 / 柴村仁

タカチアカネという生徒に、UFO型のマスコットの販売を持ちかけられる主人公。アルバイトが好きな主人公はそれを引き受け多数販売するのですが、ある日から商品の供給がされなくなって…… 商売モノと言ったら良いのだろうか、ラブコメではなくて、感動のあるちょっといい話といったところ。

柴村 仁 2004年『我が家のお稲荷さま。』でデビュー。2009年の『プシュケの涙』が評判となり、その後は一般文芸の分野に進出。メディアワークス文庫で作品を多数発表しています。

守ってくれる? アダムスキー / 古橋秀之

お題のイラストから、よくここまで展開させるなと感心してしまう、巨大ヒーロー物のパロディ。一見バカげた話っぽくも見えるけど、なかなかSFじゃないかと。

古橋 秀之 1995年『ブラックロッド』でデビュー。法政大学 金原瑞人創作文芸ゼミ出身で作家としての評価は高いのですが、代表作として知られている作品はあまりないような気がします。『ブラックロッド』『ブラッドジャケット』『ブライトライツ・ホーリーランド』の「ケイオス・ヘキサ」三部作が代表作。

シンデレラ / 岩田洋季

ラブコメではなくて青春恋愛モノ。2000年代前半の電撃文庫作品には珍しいテイストかもしれません。この時期だとファミ通文庫の森橋ビンゴなんかに近いのかも。図書館で出会った男子と女子の、ちょっと切ない物語。

岩田 洋季 2002年『灰色のアイリス』でデビュー。代表作はアニメ化もされた『護くんに女神の祝福を!』 現在も電撃文庫で活躍中。

クランクはいつもアップアップ / 成田良悟

wikipediaによると電撃コラボレーションでは、成田良悟がトリを務めるのが定例化しているとか。お題のイラストの世界を描くのではなくて、お題のイラストをめぐるアレコレを描くメタ的な作品となっています。収録作品までネタにして、面白い作品ではあるのですが、やや反則的かなとも思います。ただ、全体をまとめることができていて、やっぱり最後にはこういう作品が似合っているのかもと思いました。

成田 良悟 2003年『バッカーノ!』でデビュー。群像劇を得意としており『デュラララ!!』が代表作。最近では漫画の原作なども手掛けています。

まとめ

以上、各作品ごとの感想でした。

450pのボリュームながら、それぞれの作家の個性が楽しめ一気に読むことができました。手紙を持った男女のイラストから恋愛モノが多くなるのは想定内で、周囲にいる宇宙人の乗った宇宙船をどう絡めるかがポイントだろうなと読む前に思っていました。

作品によっては宇宙人(宇宙船)を直接的に出さなかったり、全く触れないでいるものもあったりと、それはそれで吹っ切れていてよかったのではないかと思います。またラブコメだけでなくて、コメディ・ホラー・パロディ・メタ的なモノなどバラエティに富んでいて楽しい作品でした。

もともと長編より短編が好きなのもあって、アンソロジーはやっぱり面白いと改めて思いました。

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最後にカバー裏に『お題イラスト』をめぐっての裏話が載っています。電子書籍ではどうなっているのかわかりませんが、紙版をお持ちの方は見落とさないようにご注意を。

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