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ライトノベルのアンソロジーを調べる その2【スニーカー・ミステリ倶楽部編】

さて、今回はライトノベルのアンソロジーを調べるシリーズ第2弾、スニーカー・ミステリ倶楽部編です。

キッカケは電撃文庫の「電撃コラボレーション」を手にしたこと。ライトノベルでアンソロジーは珍しいかもと思い調べ始めた企画です。

ライトノベルのアンソロジーを調べる その1【電撃文庫編】

今回は短命に終わったことでも有名な、角川スニーカー文庫のスニーカー・ミステリ倶楽部で出版された作品をまとめてみました。

スニーカー・ミステリ倶楽部のアンソロジー

スニーカー・ミステリ倶楽部についてくわしくは、↓を参考にしてください。

角川スニーカー文庫スニーカー・ミステリ倶楽部について
さて、今回は角川スニーカー文庫のスニーカー・ミステリ倶楽部についてです。 ライトノベルでミステ...

スニーカー・ミステリ倶楽部ではアンソロジーに力を入れていたようで、配本ごとにアンソロジーがありました。アンソロジーこそが中心だったともいえるでしょう。出版されたアンソロジーは6作品で、ミステリが5作、ホラーが1作です。

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ミステリ・アンソロジー I 名探偵は、ここにいる

本格ミステリといえば、なんといっても名探偵!中学生探偵・狩野俊介が怪奇な館の謎に挑む〈神影荘奇談〉。あたしの相棒、究極の安楽椅子探偵の推理が冴える〈Aは安楽椅子のA〉。謎めいた文庫本に導かれ、少女は6年前のあの日に辿りつく―〈時計じかけの小鳥〉。大の納豆嫌いだった男の胃に詰まっていたものとは!?幼い根津愛も登場する〈納豆殺人事件〉。ミステリ入門としても楽しめる、書き下ろしアンソロジー第1弾!

イラスト:藤田新策
発売日:2001年11月

収録作品
神影荘奇談 / 太田忠司
Aは安楽椅子のA / 鯨統一郎
時計じかけの小鳥 / 西澤保彦
納豆殺人事件 / 愛川晶

10代向けと意識して各作家は書いているのでしょう、どれも読みやすくて楽しい作品ばかりです。

「神影荘奇談」は怪奇幻想譚を真ん中に置き楽しませたうえで、現実的解決を見せてくれます。「Aは安楽椅子のA 」はまさかの安楽椅子探偵! で面白いというかふざけているというか。でも、面白いです。

「時計じかけの小鳥」は日常の謎に近い内容で、1番読み応えがあり。青春の苦味を感じさせてくれます。「納豆殺人事件」は納豆殺人と一見ふざけているように見えて、正統派な内容です。

スニーカー・ミステリ倶楽部『名探偵は、ここにいる』を読んで【ラノベ・アンソロジー】
さて、今回はスニーカー・ミステリ倶楽部のミステリ・アンソロジー第1弾、『名探偵は、ここにいる』を読ん...

ミステリ・アンソロジー II 殺人鬼の放課後

殺人鬼こそ本格ミステリの主役!? 湿原に建つ全寮制の学校。悪意のゲーム『笑いカワセミ』に挑むのは、美貌の少年ヨハン!〈水晶の夜、翡翠の朝〉。恵美が僕に語る、誘拐された少女3人の運命〈攫われて〉。新しい受講生は、死んだあの娘とあまりにも似ていた〈還って来た少女〉。コンクリートで固められた7つの立方体を支配する、恐るべき死の法則〈SEVEN ROOMS〉。恐怖とサスペンスに満ちた、書き下ろしアンソロジー第2弾!

イラスト:藤田新策
発売日:2002年02月

収録作品
水晶の夜、翡翠の朝 / 恩田陸
攫われて / 小林泰三
還って来た少女 / 新津きよみ
SEVEN ROOMS / 乙一

女性作家と男性作家で、くっきりと作風が分かれたアンソロジーです。

「水晶の夜、翡翠の朝」は『麦の海に沈む果実』の番外編後日譚。元の作品を知らなくても楽しめました。むしろそちらも読んでみたいなと。「還って来た少女」は幽霊話かと思いきや、見事騙されました。こういう作品こそがスニーカー文庫らしくて良いと思います。ただ、この本のテーマを「殺人鬼」とした場合、その部分がちょっと弱いかなとは思います。

小林泰三・乙一作品はミステリというよりホラー、もっといえば残酷小説のように感じます。理由なく痛めつけられる不条理とグロテスクな描写は、読んでいて楽しくありません。

ホラー・残酷小説が苦手な人間にとっては、手を出さないほうが良いでしょう。

スニーカー・ミステリ倶楽部『殺人鬼の放課後』を読んで【ラノベ・アンソロジー】
さて、今回はスニーカー・ミステリ倶楽部のミステリ・アンソロジー第2弾、『殺人鬼の放課後』を読んだ感想...

ミステリ・アンソロジー III 密室レシピ

「究極のミステリ」といえば、やはり密室殺人! そこで寝る者は必ず死ぬという部屋で発見された、死体と奇怪な棺〈トロイの密室〉。宙を飛び、撮影セットの東京タワーに突き刺さって死んだ男〈タワーに死す〉。あの猫探偵正太郎が観光用宇宙ステーションで遭遇した、真空の殺人〈正太郎と冷たい方程式〉。雪の夜、犯人は足跡すら残さずどうやってアトリエから消えたのか〈雪の絵画教室〉。超絶の奇想に満ちた、書き下ろしアンソロジー第3弾!

イラスト:藤田新策
発売日:2002年04月

収録作品
トロイの密室 / 折原一
タワーに死す / 霞流一
正太郎と冷たい方程式 / 柴田よしき
雪の絵画教室 / 泡坂妻夫

折原・泡坂作品は正統派、霞・柴田作品はユーモア寄りといったところです。

「トロイの密室」は黒星警部シリーズの番外編で、館で棺で呪いでといった如何にもな道具立てが楽しい作品。「タワーに死す」は作者がバカミスの第1人者と言われるだけあって、こんなのあり得るのか?と笑ってしまった。

「正太郎と冷たい方程式」は猫探偵シリーズの番外編で、SF設定だけで楽しいかも。未来の宇宙ステーションが舞台で状況が分かりづらいですが、猫の正太郎が可愛いからすべてOK。最後の「雪の絵画教室」は作品どうこうよりも、泡坂妻夫のような超ベテランがなぜ、このアンソロジーに描き下ろしで参加してくれたのかが1番のミステリかもしれません。

スニーカー・ミステリ倶楽部『密室レシピ』を読んで【ラノベ・アンソロジー】
さて、今回はスニーカー・ミステリ倶楽部のミステリ・アンソロジー第3弾、『密室レシピ』を読んだ感想です...

ミステリ・アンソロジー IV 殺意の時間割

魔法のように「時」を操る、5つの不可能犯罪! 娘を助けた男の、奇妙な頼みごと〈命の恩人〉。究極の安楽椅子探偵がテロリストと対決〈Bは爆弾のB〉。お人好しカメラマンが巻き込まれた、せつない事件〈水仙の季節〉。完全なアリバイのある少女が殺人を認めたのはなぜ?〈アリバイ・ジ・アンビバレンス〉。肝だめしに挑んだ少年は誰に襲われたか〈天狗と宿題、幼なじみ〉。名手たちによる書き下ろしアリバイ・アンソロジー!

イラスト:藤田新策
発売日:2002年08月

収録作品
命の恩人 / 赤川次郎
Bは爆弾のB / 鯨統一郎
水仙の季節 / 近藤史恵
アリバイ・ジ・アンビバレンス / 西澤保彦
天狗と宿題、幼なじみ / はやみねかおる

前作に続き豪華メンバーなのに、ちょっとアタリハズレを感じた作品集でした。

大ベテラン赤川次郎の「命の恩人」は、夫に不満を持っていた主婦が最終的に前向きな決意を持つといった、わりと大人な内容で、良い作品なんだけどスニーカー向け? って感じです。「Bは爆弾のB」は安楽椅子探偵・堀アンナシリーズの第2弾。耳が聴こえないという設定が第1弾は機能していましたが、今回は足を引っ張っています。

「水仙の季節」は双子のアリバイモノなので、オチは想像できますがちょっとひねりを加えています。アリバイモノ入門としては良いのではないでしょうか。「アリバイ・ジ・アンビバレンス」はアリバイトリックを使っただけの物語ではなく、アリバイをめぐる物語になっていて読み応えもあり面白いです。

「天狗と宿題、幼なじみ」はトリックに説明されていない部分があり、推理小説として欠陥品ではないかと思います。

スニーカー・ミステリ倶楽部『殺意の時間割』を読んで【ラノベ・アンソロジー】
さて、今回はスニーカー・ミステリ倶楽部のミステリ・アンソロジー第4弾、『殺意の時間割』を読んだ感想で...

ホラー・アンソロジー 悪夢制御装置

せつなく、可笑しく、おぞましく──それぞれ異なる輝きを放つ4つの恐怖!! ジェルソミーナ女王が暮らす森の中のお城で起きた惨劇〈ふたり遊び〉。消えた友人を捜すナオトとアカネが廃工場で遭遇する戦慄〈闇の羽音〉。高校生3人が夏の高原で出会った美少女の正体は?〈ラベンダー・サマー〉、「おうちの階段だけが、落ちて死ぬような気がするの…」姉妹にとって一階は死の国〈階段〉。鬼才たちによる書き下ろしホラー・アンソロジー!

イラスト:藤田新策
発売日:2002年11月

収録作品
ふたり遊び / 篠田真由美
闇の羽音 / 岡本賢一
ラベンダー・サマー / 瀬川ことび
階段 / 乙一

4作品が収録されていますが、三者三様の恐怖があって面白いアンソロジー。

恐怖とか呪いとか、なんとなくイメージするホラーとしては「ふたり遊び」が1番それらしい。理不尽な恐怖というのでしょうか、正体の分からない者への恐怖ですね。「闇の羽音」はちょっとSF的な1作。昆虫嫌いな私にとっては、これほどの恐怖はありません。

瀬川ことび「ラベンダー・サマー」はちょっとコミカルな青春モノで、あまり怖くありません。逆に怖くないホラーということで、すごく新鮮でした。「階段」は収録作の中で1番の恐怖。今となってはホラーというよりDV・児童虐待を扱った作品ですが、読んでいて怖くて切ない物語です。

スニーカー・ミステリ倶楽部『ホラー・アンソロジー 悪夢制御装置』を読んで【ラノベ・アンソロジー】
さて、今回もアンソロジーですが、短命に終わったスニーカー文庫ミステリ倶楽部のラインナップのひとつ、ホ...

ミステリ・アンソロジー V 血文字パズル

死者が遺した、奇妙な手がかりを読み解け! あの名コンビ火村と有栖が「叫び」人形の謎に挑む〈砕けた叫び〉。安楽椅子探偵・デュパン鮎子とその孫・奈緒が“風の町”の秘密を解く〈八神翁の遺産〉。希代の銘探偵・メルカトル鮎が“5秒で解決できる事件”に仕掛けたとっておきの趣向―〈氷山の一角〉。渚が誕生日に出会った青年と過ごす、キュートで残酷な夏休み〈みたびのサマータイム〉。あまりにも豪華な書き下ろしアンソロジー!!

発売日:2003年03月

収録作品
砕けた叫び / 有栖川有栖
八神翁の遺産 / 太田忠司
氷山の一角 / 麻耶雄嵩
みたびのサマータイム / 若竹七海

スニーカー・ミステリ倶楽部最後の作品となった今作、豪華メンバーは相変わらずでハズレ無しの満足の1冊だと思います。

「砕けた叫び」は作家アリスシリーズの1篇。ムンクの叫び人形が、アレに繋がるのがすごいです。正統派。「八神翁の遺産」は安楽椅子型探偵のデュパン鮎子とその孫の美少女女子高生・奈緒が謎を解く作品。デュパン鮎子のキャラが肝で設定が面白いです。ただ、奈緒がもっと活躍するところが見たいなと。

「氷山の一角」はメルカトル鮎シリーズの1篇。タキシード姿にシルクハットで尊大な態度をとる癖の強い銘探偵キャラクターが面白いです。探偵と助手の掛け合いが、良い意味でラノベっぽいと言えるかも知れません。「みたびのサマータイム」は『クール・キャンデー』に登場する渚の後日譚。ちょっと苦い青春小説って感じで、謎解き以外の部分でも楽しめます。

スニーカー・ミステリ倶楽部『血文字パズル』を読んで【ラノベ・アンソロジー】
さて、今回はスニーカー・ミステリ倶楽部のミステリ・アンソロジー第5弾、『血文字パズル』を読んだ感想で...

再編集されたスニーカー・ミステリ倶楽部アンソロジー

スニーカー・ミステリ倶楽部が短命で終わったためか、6作品を再編集し直したアンソロジーが角川書店から2005年に出版、2013年に文庫化されています。1作家1作品としているのか、複数あった乙一、太田忠司、西澤保彦、鯨統一郎の作品で未収録が発生しています。

青に捧げる悪夢

収録作品
水晶の夜、翡翠の朝 / 恩田陸
みたびのサマータイム / 若竹七海
水仙の季節 / 近藤史恵
攫われて / 小林泰三
階段 / 乙一
ふたり遊び / 篠田真由美
還って来た少女 / 新津きよみ
闇の羽音 / 岡本賢一
ラベンダー・サマー / 瀬川ことび
天狗と宿題、幼なじみ / はやみねかおる

『ミステリ・アンソロジー II 殺人鬼の放課後』と『ホラー・アンソロジー 悪夢制御装置』を中心に、ホラーテイストの作品で再編集されています。

赤に捧げる殺意

収録作品
砕けた叫び / 有栖川有栖
トロイの密室 / 折原一
神影荘奇談 / 太田忠司
命の恩人 / 赤川次郎
時計じかけの小鳥 / 西澤保彦
タワーに死す / 霞流一
Aは安楽椅子のA / 鯨統一郎
氷山の一角 / 麻耶雄嵩

ベテラン推理作家の作品でまとめています。テーマが別々のアンソロジーから集めたため、このアンソロジーとしてはミステリ作品を集めただけでテーマが無いとも受け取れます。敢えて言うならば、スニーカー・ミステリ倶楽部傑作選ですね。

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